小沢議員の諌早湾干拓質問主意書への政府答弁書です

  内閣衆質一五○第一三号    平成十二年十一月十四日
内閣総理大臣 森   喜  朗
                      衆議院議長 綿貫民輔 殿

 衆議院議員小沢和秋君提出諫早湾水門閉め切りによる沿岸漁業への被害対策に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。
 衆議院議員小沢和秋君提出諫早湾水門閉め切りによる沿岸漁業への被害対策に関する質問に対する答弁書

一について
  有明海における平成元年から平成十年までの十年間の主要魚介類の漁獲量の推移は、別表一のとおりであり、総じて平成九年四月の潮受堤防の締切りの前後でその漁獲量に著しい変化は見られない。

二について
  農林水産省九州農政局においては、農地の排水対策の効果を左右する干潟について、その発達予測のための基礎データを入手するために、平成十一年度から二年間の予定で、有明海の流況、底質等の調査(以下「本調査」という。)を実施しているところである。
  本調査の調査項目及び平成十一年度の調査結果の概要は別表二のとおりであるが、現在、九州農政局においては、引き続き平成十二年度の調査を実施中であり、その調査結果を待って、最終的な調査結果の取りまとめ及び分析を行っていくこととしている。

三について
  本調査は、二についてで述べたとおり、干潟の発達予測のための基礎データを入手するためのものであり、その実施に当たっては、有明海の海象について専門的知見を必要とすることから、当該知見を有する学識経験者から成る助言者会議の助言を踏まえて調査地点及び調査項目を設定しており、現在、それらについて追加することは考えていない。
  なお、平成十三年度以降の調査の実施については、本調査の最終的な取りまとめ及び分析を踏まえて検討してまいりたい。

四について
  有明海における主要魚介類の漁獲量の推移は、一についてで述べたとおり、総じて著しい変化は見られない。
  なお、有明海は全国有数の沿岸漁場であり、水産庁においてこれまでも沿岸漁場整備開発事業等により漁場の整備や養殖業の推進等に努めてきたところであり、引き続きこれらの施策を実施して漁業振興を図ってまいる考えである。

五について
  お尋ねの「諫早湾干拓地造成事業」は、国営諫早湾土地改良事業(以下「本事業」という。)を指すものと考えられるが、本事業を含めた国営土地改良事業については、事業の効率的な執行及び透明性を確保する観点から、「国営土地改良事業等再評価実施要領」(平成十年三月二十七日付け農林水産省構造改善局長、畜産局長通知)に基づき、事業実施主体である国が定期的に再評価を行うこととしており、その際、関係団体の意見を聴取すべきこととしている。ここで、関係団体の範囲については、土地改良法(昭和二十四年法律第百九十五号)において国営土地改良事業の土地改良事業計画の変更の際に農林水産大臣が直接的又は間接的に協議しなければならない相手方を勘案して運用することとしており、本事業について関係団体とは、同法に基づき本事業の事業計画の決定及び変更の際に協議を行った長崎県、諫早市、森山町、高来町、吾妻町及び愛野町であって、長崎県以外の有明海沿岸各県や漁業協同組合等は含まれておらず、これらの者から意見を聴取することは考えていない。

六について
  本事業は、平坦な農地が乏しい長崎県において、かんがい用水が確保された優良農地の造成を行うとともに、高潮、洪水、常時の排水不良等に対する防災機能の強化を図るものであり、地元から事業の促進を強く求められていることから、本事業を中止し、水門を開放することは考えていない。今後とも漁場を含めた周辺環境にも十分配慮しつつ、本事業の着実な推進に努めることとしている。