県立大学の自治に対する介入と「日の丸」掲示の強要に抗議し、その中止を求める申しいれ


 日本共産党長崎県委員会は今年の四月二十八日、貴職に対し「県立大学の自主的な判断を尊重して、今後一切、『日の丸』掲示の要求を行わないこと」を趣旨とする申し入れを行つた。これは、長崎県が長崎県立大学に対し再三にわたり、「日の丸」掲示を要求した事実をふまえて行ったものである。
 ところが、九月県議会で知事は、「県立大学で、なぜ国旗を掲揚しなかったのか」という議員の県政一般質問にたいして「国旗・国家法制定時の首相談話を踏まえ、大学側との協議の場でも特段の配慮をお願いしている。今後も設置者としての意向を伝えていきたい」とこたえ、大学の正規の機関で決めたことを無視し、くり返し、「日の丸」の掲示を強要する意向を示した。
 「日の丸」掲示については国会審議においても、「政府としては、今回の法制化に当たり、国旗の掲揚等に関し義務づけを行うことは考えておらず、したがって、国民の生活に何らの影響や変化が生ずることとはならない」(九九年六月二十九日、衆院本会議での小渕首相の答弁)、「(内心の自由を侵害するような指導について)一般的に申し上げれば、そういった指導が行われることはあってはならないと思っております」(文部省の御手洗康教育助成局長九九年八月二日の参院特委)、などの政府見解がくり返し示されている。
 また、別の議員の「(県立大学長に)国の状況と個人の自由について、『学長はなにをなすべきか』という質問をしたが、考えがあまりに違っていた。こうした学長のもとで、社会のためになりうる青年が育つだろうか。所感を聞きたい」という質問に、知事は「国家の状況と個人の自由についての議員の理解については私も同感。(中略)今後そうした点について、学長とも十分話し合っていきたい」と答弁した。
 ちなみにこの議員の見解は、「日本国家が一番抱えている問題は何かの問いにたいし、学長の答えは全然違う。一番が核で、二番が環境だというが、核の問題はアメリカ、ロシア以上の核を国が持って止めろといわんと止まりません。環境問題は日本の豊かさを半分に落さんかぎり根本的解決はできません。あなたが真っ先にハングリーをしたらいい。そういうなんの努力もしないで、座っといていろいろ教える。これが日本の青年をだめにしている」「(今の憲法は)ある意味では特攻隊のおかげだ。あれが怖かったからアメリカは憲法を日本に押しつけた。われわれに自由をくれたのは特攻隊だ。そういう流れがわからんからおかしい」というものである。
 これに対し、横田修一郎学事担当理事は「議員の指摘の点について、再度その辺の意味をふまえ端的に取り組みをどうするか引きつづき話し合いたい」と答弁した。特定の思想的立場から、県議会という公の場で、学長への非難攻撃がおこなわれ、県知事や理事が同調する発言をおこなったのは重大である。
 県立大学の日の丸問題に端を発して、学長個人にたいする非難攻撃まで行うにいたったことは、憲法二十三条がかかげる学問の自由と、それにもとづく大学の自治にたいする乱暴な侵犯であり、個人の思想信条の自由さえ犯すものである。
 戦前の日本では、美濃部達吉博士の天皇機関説や京大滝川事件など、学問と思想の自由が激しく弾圧され、国民の自由と民主主義を蹂躙して、侵略戦争に突き進んだ。この歴史の教訓から、現憲法に学問の自由が定められ、教育基本法には「教育は不当な支配に服することなく、国民全体に責任を負って行われるべきものである」と記されている。知事や県の幹部は、このことを厳重に尊重すべきである。
 以上をふまえて、貴職に対して次のことを求めるものである。

              記
 一、県立大学の自治に対するいっさいの介入をやめること。
 一、同大学に対する「日の丸」掲示の強要をただちにやめること。

  二〇〇〇年十月十六日
                 日本共産党長崎県委員会
     委員長 深町孝郎
長崎県知事 金子原二郎 様