2010年4月14日。日本共産党長崎県委員会は、堀江ひとみ県副委員長(県議)と、ふちせ栄子党県国会議員団事務所長が記者会見して、「諌早湾干拓事業による堤防締め切り13年に際しての声明」を発表しました。

 その全文は以下の通りです。

諌早湾干拓事業による堤防閉め切り
     13年に際しての声明

 
                         
                              2010年4月14日
                            日本共産党長崎県委員会


 4月14日、諌早湾干拓の潮受け堤防による閉め切りから13年目を迎えた。有明海の漁場環境はいよいよ悪化し、漁民の干拓堤防水門の開門要求はますます強まっている。

 県民世論も、2月の知事選時の朝日新聞の調査で「開門賛成」40%「反対」25%、長崎新聞の調査で「開門賛成」29.4%「反対」17.6%と、いずれも開門賛成が反対を大きく上回っている。

 裁判原告団などが取り組んだ「開門要求署名」は2万7442名集まり県に提出された。国と県がこれらの声に応えて、営農・防災と両立できる対策をとって堤防水門の開門を一日も早くおこない、事態の抜本的な改善をはかるようつよく求める。


■北部排水門から県が行った大量排水にたいし、小長井町漁協が「協定違反」として抗議する事態が昨年7月6日に起こった。

 その際県と漁協の間に「小潮の際に調整池の排水を行えば、赤潮発生の可能性が高くなる。小潮のときには排水はしない。排水する場合には漁協の同意を得ておこなう」という協定が結ばれていた事実が明らかになった。

 新宮隆喜組合長は「漁場環境の安定はまったくできていない。漁民は頻発する漁業被害に耐え忍んできたが怒りは頂点に達した。」と抗議した。この排水直後に諫早湾内で赤潮が発生したことが県水産部によって確認された。

 これまで県は干拓調整池の排水が赤潮の原因になることは公式には認めてこなかったにもかかわらず、漁協との間ではそれを前提に県民に公表しない協定を結んで対応してきたというのは重大である。

 排水直後の赤潮発生は繰り返し確認されており、事態の抜本的解決のためには、開門して調整池に潮水を入れ水の浄化を図ることが不可欠である。


■今年1月7日、有明海のノリ漁民300人が干拓堤防の水門前に漁船100隻をならべて海上抗議デモを行った。

 漁場全域でノリの生育に必要な栄養塩が低下し養殖網の張り込みができない状態になったのは、干拓調整池の排水が原因としての抗議である。漁民たちは「開門調査を実施せよ」「調整池の水質浄化を」と要求した。

 同日、佐賀県有明海漁協は、長崎県に対し「短時間大量排水の即刻中止」「調整池の水質浄化」「排出される水質データの公表」などの要望書を申し入れ、「生産者にとって死活問題であり、ほんとうに切羽詰まっている」と訴えた。調整池の水質を抜本的に浄化するには開門以外にない。


■干拓事業に協力し開門反対の立場に立ってきた瑞穂漁協(組合員68人)は、2月3日全員協議会を開き「開門調査で一時的に漁場が荒れても、実施すれば長期的に漁場改善につながる」などの意見によって、全員一致で「開門調査に賛成。

 今後国や県に開門を求めていく」方針を決めた。石田徳春組合長は「組合員の命と生活を守るためのやむをえない決断で行動を起こすことにした」と語った。

 室田和昭副組合長ら2名が上京して国会議員や農林水産省に対し「不漁の間もいつかはよくなると期待してやってきたが、もう限界。けっして自分たちだけがいい目にあおうというつもりはない。農業者の生活も守りながらの開門を求めたい」と訴えた。

 小長井漁協の組合員など41人が長崎地裁で取り組んできた漁場再生のための開門裁判に、新たに瑞穂漁協から18人、国見漁協6人、小長井漁協5人が加わった。これで諫早湾内3漁協すべての漁民が力を合わせて開門を求める裁判の足並みがそろった。


■こうした事態を受けて赤松農林水産大臣が2月23日、「諫早湾干拓の開門問題について検討する」と発言し、与党内に「諫早湾干拓事業検討委員会」が設置された。委員会には佐賀県知事、長崎県知事が出席して開門賛成、反対の意見を述べるなど検討が続いている。

 中村長崎県知事は、「潮受堤防排水門の開門による影響」という資料を提出して開門反対を主張した。

 資料は、いまだに諫早大水害の写真を掲げて、干拓とは無関係な「洪水の防止」を干拓の効果にあげ、開門による防災や営農への影響を強調している。一方、漁業被害の原因は「複合的なもので総合的な対策が必要」として、諫早湾干拓の大きな影響を免罪しつつ、すでに補償済みという立場をとっている。

この補償は「湾内で工事中の収入減は2割程度。工事が終われば元通りの漁業が続けられる」という想定によるものであった。それをはるかにこえる漁業被害の実態と、工事終了後も漁場が回復せず苦しみ続ける漁民の実態を無視した冷たい主張である。


■いま求められているのは、県が漁民の切実な声を真摯に聞き、漁業と農業、防災が両立できる道を真剣に探究することである。漁民は、開門についても「被害を出さない段階的な開門方法」「調整池農業用水の4方法の代替水源」「排水ポンプ・排水路の整備」など営農・防災に配慮し、漁民も農民も市民も共存できる提案を行ってきた。

 そのうえで漁場の回復には開門以外にない、と一日も早い実施を切望している。いまこそ、すべての関係者が参加する協議の場をもうけて民主的な協議をつくし、開門への合意形成を急ぐべきである。県と国の早急な取り組みをつよく要求する。
                               以上