「しんぶん赤旗」2008/3/26
地方政治 視点焦点
知事親族企業が、諫干農地に入植
「役員辞任ですまぬ」と県民


 金子原二郎長崎県知事と農水省政務官の谷川弥一衆院議員の親族が役員を務める企業が、諫早湾干拓農地の貸し付けを受けることが発覚。県民から批判の声が上がり、親族は企業の役員を辞任したことが、二十四日明らかとなりました。(長崎・原口一二美)

 問題の企業は、谷川議員の長男が代表取締役、その妻である金子知事の長女が取締役を務める農業生産法人です。貸し付けを受けるのは約32f、干拓農地672fの約5%に当たります。

 県農業振興公社は、昨年営農者を公募。六十二件の応募があり、審査の結果、四十二件が契約しました。
 選考は、学識経験者などでつくる選考委員会で、応募者から提出された営農計画などをもとに、匿名で行われたとされています。

 よみがえれ!有明海訴訟弁護団は二十日、声明を発表、莫大な公金支出の恩恵を、それを推進してきた自治体の首長と主務官庁の大臣政務官の親族企業が真っ先に受けることは言語道断と批判。この法人が設立されたのは昨年一月であり、干拓農地の貸し付けを受けることを目的に設立された疑いが濃厚であると指摘しています。

 諫早湾干拓事業は二千五百三十三億円という巨額の国費と県費がつぎ込まれてきました。

 長崎県は、干拓農地の取得などにさらに税金をつぎ込こもうとしており、来年度九十四億円の予算を計上しています。

 三月議会で日本共産党の堀江ひとみ県議は、県民の福祉や教育の予算は削りながら、諫早湾干拓には莫大な税金をつぎ込み、しかも、知事の親族が入植しようとしていることをきびしく批判しました。

 諫早湾干拓事業は、宝の海を壊し、深刻な漁業被害で漁民の生活を破壊しました。二十人を超える漁民が自殺に追い込まれました。

 このような漁民、県民の苦しみをよそに、干拓農地の貸し付けを知事と農水政務官の親族の企業が受けようとしていたこと自体が問題です。親族が役員を辞任したからと言って済む問題ではありません。

 諫早干拓農地公金支出差し止め訴訟の原告である大石久仁子さん(54)は次のように語りました。
 「県の補助金を執行する人の親族が入植することに憤りを感じる。最初から補助金の利益を見込んでいたのでは。農業も漁業も両立できるよう、一日も早く開門し、宝の海に戻してほしい」。