事業を根本から見直し、公金支出やめ、中長期の開門調査を

 諌早湾干拓事業の完工式にあたり、日本共産党長崎県委員会は次のような声明を発表しました。
 その全文を紹介します。


諫早湾干拓事業の完工式にあたっての声明 

                       2007年11月20日
                       日本共産党長崎県委員会


 国営諫早湾干拓事業は、本日完工式が行われる。しかし、本事業は数多くの未解決の問題を残しており、これをもって事業が完成したとはいえない。わが党は農林水産省と県がそれらの問題解決のために、事業推進最優先というこれまでの姿勢を改め、事業を根本から見直すことをつよく求める。

 本事業には総事業費2500億円を超える税金が投入された。これに対する事業効果は、過大に見積もった農林水産省の算定でも2200億円と費用をはるかに下回り、費用対効果は0.81である。本事業の費用対効果が1以上であることを求めている土地改良法に違反しており、税金のムダづかいは明らかである。

 事業費のうち県民負担が423億円にのぼり毎年30億円をこす県の予算が使われている。これは、毎年の県予算における最大の支出であり、県財政悪化の大きな要因になり、県民の暮らしのための支出の削減が繰り返されてきた。 
 そのため本県の福祉や教育の施策は他県に比べ大きく立ち遅れている。本県は、子育て支援の医療費助成で病院窓口払いをなくす現物給付を実施していない全国で12県のひとつであり、国保料を引き下げるための市町村国保への県の補助金がゼロ、県立高校授業料は32年連続値上げしながら県立高校6校を廃止しさらに4校の廃止を提案して、地域住民の怒りを呼んでいる。
 30億円をまわせば、こうした県民の暮らしのための施策はたちどころに実現できる。ムダづかい公共事業をやめて税金は県民の暮らしに優先的に使え、という声は県民の大きな世論になっている。これに応えて県が政策転換をはかるよう強く求める。

 県は干拓農地のリース制度をつくるため、県農業振興公社を身代わりに農林水産省から一括払い下げを受ける計画を立てた。これに県民の税金53億円が支出される計画は、公金の違法支出であり税金のムダづかいであるとして、県民76人による「公金支出差止めを求める住民訴訟」が長崎地裁に提訴された。
 裁判では、@干拓農地の公社への一括配分は土地改良法違反。A注ぎ込まれる県民の税金の返済は98年後というのは異常であり地方自治法・地方財政法違反。B過去の干拓に成功事例がなく干拓農地での営農計画が実現する見通しがない。などリース制度への公金支出の違法性が明らかになった。
 知事は「中期財政見通し」によって、5年後には県の基金が枯渇して財源不足になり「財政再建団体におちいる状況にある」と表明しており、このような巨額の支出はできないはずである。
 わが党は、リース制度への違法な税金投入を中止するよう要求する。

 干拓による有明海の環境破壊が一層深刻になっている。今年も諫早湾のタイラギが全滅し15年連続の休漁となった。干拓堤防の閉めきり後、赤潮と貧酸素水塊が多発し魚がとれなくなった。
 県下のノリ養殖も、昨年度の売上金額が1億4900万円とここ数年で最低に落ち込んでいる。大不作だった2000年度を5000万円も下回り、ノリの品質が年々悪化している。8月には諫早湾の養殖場でアサリが大量死する被害をだした。この被害では干拓堤防の排水門に近いほどアサリのへい死率が高く干拓事業が原因であることがいよいよ明らかになった。10月には養殖のカキが9割死滅する被害をうけた。
 日本一豊かな漁場であった有明海が今では魚の取れない海になり、堤防閉めきり以来、漁民の自殺者は20人を超えている。
 
 いまこそ、諫早湾干拓による有明海の環境破壊の実態を事実に即して解明し、必要な対策を急がなければならない。国や県が行っている諫早湾干拓との関係を無視した諸対策では、いくら予算を注ぎ込んでも海が再生するどころか、ますます悪化するばかりである。
 また、調整池の水質浄化にこれまでの10年間に400億円の税金が投入されたが、水質は改善されていない。岡山県の児島湖の例を見ても、今後ますます「水質浄化」に税金がつぎ込まれる恐れがある。

 2000年度のノリ大被害の際、その原因を解明して対策を立てるためにつくられた「有明海ノリ不作等対策調査検討委員会」は「諫早湾干拓事業が有明海全体の環境に影響を与えていると想定される」として、その影響を検証するために短期・中期・長期の開門調査をおこなうよう提言した。
 農林水産省は短期の開門調査しか実施せず科学的な原因究明に背を向けている。沿岸漁民はもとより佐賀、福岡、熊本の各県議会や本県の島原市議会がこぞって求めている中期・長期の開門調査をおこない、科学的な対策を確立し、それを早急に実施するよう強く求める。
                                     以上