アスベスト対策についての緊急申し入れ

長崎県知事 金子原二郎様
                            2005年 9月 28日
                        日本共産党長崎県委員会 委員長   山下 満昭


  石綿(アスベスト)を取り扱った労働者が、がんやじん肺で350人以上も死亡していたことが明らかとなり、大きな社会問題になっています。
 石綿は非常に細かい繊維で1本の繊維の太さは、毛髪の5000分の1くらいです。花粉より細かい石綿の粉じんを吸入すると悪性中皮腫や肺がんなどを発病し、中皮腫は平均で40年前後も潜伏期間があり「静かな時限爆弾」とも呼ばれています。中皮腫による死亡者は今後40年間で10万人にのぼるという予測もあります。
 石綿を原因とする労災補償は、2003年に中皮腫83人、肺がん38人で、10年前の6倍に急増しています。石綿との関連が強い中皮腫による死亡は、95年以降6千人を超えていますが、労働災害の認定は284人で5%にしかすぎません。犠牲者がこれだけ広がったこと自体、企業と行政の責任による安全対策の遅れと不備を示しています。これからとくに懸念されるのは、石綿を使用した建物の改修・解体による被害の拡大です。石綿の飛散で、建設労働者や業者が危険にさらされ、住民への影響も心配されています。石綿を使用した建物解体のピ−クは2020年から40年頃になるとみられています。2005年7月から建物の解体時の被害防止策を定めた予防規則が施行されました。対策を事業主に徹底し、防護策など緊急な対策が求められています。
 石綿の健康被害は、この間の被害実態の公表や国会質問などから、安全対策も不十分なまま大量の石綿の製造と使用を続けてきた企業と、危険性を認識しながら長期にわたって使用を容認してきた政府の責任がますます明確になっています。
 県庁に寄せられた県民からの相談は、延べ件数569件−健康相談112件、環境相談70件、建築物等387件−にものぼり、しかも、三菱重工長崎造船所では3人の労働者がアスベスト被害で死亡し、旧西彼杵郡三和町にある石綿含有鉱石地帯の住民の健康被害は深刻で、県民の不安と怒りが広がっています。
  日本共産党は、政府と関係企業の責任と費用負担で、すべての健康被害等の保護・救済、早急な石綿の全面禁止、今後の健康被害拡大の防止対策をとるよう政府、企業などに求めるものです。 
  貴職も以下の内容を政府、企業に責任ある対策をとることを働きかけること、同時に県民の健康と福祉の増進のためにも、県独自の施策と予算措置を講じ万全の対策をとられるよう緊急に申し入れをおこなうものです。


                    記

一、長崎県への要求
◆県内の市町村や企業に対して、石綿使用箇所の徹底した調査と報告を求めること。結果を県民に報告し情報を公開すること。
◆県有施設をはじめ公立学校の石綿使用実態の調査をおこない、調査・分析の結果を速やかに公表すること。
◆民間建築物の実態調査をおこない、調査・分析の結果を厳正に公表すること。
◆健康被害者に万全の救済をおこなうこと。
◆「相談窓口」を設置し、必要な情報を公開すること。
◆実態に応じた予算措置を講ずること。

二、国に要請すること
◆石綿の全面使用禁止、健康被害拡大の防止対策などを抜本的に包含した「石綿対策特別措置法」を制定すること。
◆石綿によるすべての健康被害者等の保護、救済の抜本的対策をとること。
@石綿の製造・輸入・販売・使用などに伴って生じたすべての健康被害者などに対する補償並びに被害者の健康管理の対策をとること。
A石綿除去などに伴う健康被害を予防するための必要な事業については、国及び原因企業の責任と費用負担で実施すること。
◆健康被害の療養など労災保険及び公害健康被害補償の水準にすること。
◆健康診断や治療体制の整備などの石綿健康福祉予防事業を実施すること。
@石綿の製造・輸入・販売・使用などがおこなわれた事業場及び工場の労働者及び家族、周辺住民の健康診断を実施すること。
A石綿による健康被害者に健康管理手帳を交付し、継続的な健康管理を確保すること。
B健康被害を予防するために必要な診断・治療体制の整備をおこなうこと。
◆早急な全面禁止、建築物解体への助成及び万全な曝露防止対策を実施すること。
@石綿含有製品及び在庫品を回収すること。
A廃鉱山、埋立地などの安全の確認と対策を講じること。
B石綿含有建築物の解体事業に伴う健康被害の予防に関する計画の作成、健康相談、健康診断、予防器具などの整備の助成をおこなうこと。
C製造・使用者などに自ら製造量、使用箇所などの公表を義務づけること。
◆健康被害者救済は製造・使用など原因企業及び国の責任と費用負担でおこなうこと。  
@石綿の製造・使用などをおこなった中小・零細企業、及び中小・零細な下請企業についは適切な支援措置をとること。
◆健康被害を生じている労働者(死亡者も含む)及び家族、周辺住民の健康被害の認定し救済すること。
◆立入調査及び情報公開など石綿曝露防止対策を徹底すること。
◆佐世保米軍基地の石綿使用の実態把握と被害防止・被害者対策を米国政府に求める   こと。

日本共産党長崎県委員会が2005年9月28日に行った、長崎県へのアスベスト対策についての緊急申し入れの全文は以下の通りです。