諫早湾閉め切りから八年
 国を有明海再生のテーブルに

 二百九十三枚の鋼板によって長崎県の諫早湾が閉め切られて十四日で八年がたちました。
 「よみがえれ!有明海訴訟」を支援する長崎の会の高村暎事務局長は、「裁判を通じ事業中止と有明海再生への道筋が見えてきた。『工事中止』決定を全マスコミが支持した背景には、そこに道理と国民の願いがあるからだ。高裁でも勝利して農水省を再生のテーブルにつけさせる展望をもってがんばりたい」と語ります。
 「ムダで環境破壊の公共事業の典型」といわれる国営諫早湾干拓事業は昨年八月、有明海の漁業被害を認めた佐賀地裁での「工事中止」仮処分決定で新たな局面を迎えました。決定は、「完了した工事、継続中の工事、今後予定している工事」の再検討と事業見直しを求め、工事は全面ストップしています。
 公害紛争の迅速な解決をはかる公害等調整委員会での審理も結審し、早ければ五月にも裁定が出ると見込まれています。「漁業被害の原因は諫早湾干拓」との漁民側の主張に対し、国側は公調委から「積極否認」(ほかの原因をあげること)を繰り返し求められているにもかかわらず、ついに示せませんでした。
 国は、二度の「工事中止」決定に反省もなく、「漁業被害は存在しない」と福岡高裁に抗告。有明海「再生策」と称し、海底を耕すなどさらに六十四億円(今年度)を注ぎ込む計画です。漁民や研究者からは、「再生に役立たないばかりか、有害だ」と批判が上がっています。再生事業の受注業者から自民党への政治献金も明らかになっています。
 漁民は、潮流を回復させるための潮受け堤防の開門を直ちにと求めています。
 二十五日には、福岡高裁で抗告審の第一回審理があります。
 「よみがえれ!有明海訴訟」を支援する会では、有明海沿岸各地で宣伝や集会にとりくみ、世論に訴えています。十三日には、長崎の会が同市内で、「福岡高裁でも工事中止決定を」と宣伝・署名を集めました。
 そこでは、ビラを読み「署名したい」と戻ってくる人、「旅行中だが署名してもいいか」と申し出る人、「なぜ漁民の苦しみを国は無視するのか」など、署名しながらの対話が続きました。
 長崎市内に住む元教師の太田靖彦さんは、「干拓事業は周辺の気候環境まで変えている、やめたがよい。(政治家は)中止する勇気をもってほしい。諫早の人はもっと声をあげていい」といって署名しました。高校生の二人づれは、「もっと自然を大事にしてほしい」と口をそろえました。
 漁業被害が深刻さを増すなか、諫早湾干拓事業の見直し・有明海再生のたたかいはいま大きな山場を迎えています。