長崎市に編入合併された旧香焼町、伊王島町で六日投開票された市会議員増員選挙で、定数一の激戦を制し日本共産党の津村国弘、内田隆英の両氏が当選。新定数五十の同市議会で日本共産党は五人の議員団となり、議会運営委員会への正式参加と議案提案権を手にしました。
 合併からひと月余り、二つの町に何があったのか、選挙戦の特徴と町の声を追いました。

                                田中康記者
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 旧香焼町では一昨年来、住民投票条例請求や町長リコール選挙、出直し町長選と、合併の是非を問う全有権者規模の討論・対話が繰り返されてきました。今回の選挙戦は、津村前町議団長と自公民連合候補の一騎打ち。「二人出れば共産党に勝てない」と、創価学会員で、再選後の任期中一般質問ゼロの前町議に一本化した候補とのたたかいでした。
 津村氏は、日本共産党の昨年参院比例票を二・九倍化する千二百三票を獲得。自公民連合候補は千百票で、参院比例の三党合計票の66%しか取れませんでした。
 旧伊王島町では、合併とともに「町民の足」交通船への町の補助がなくなり値上げされました。対立候補の二人は、合併協で補助金削減を認めたり、共産党が提出した「交通船への補助継続を求める決議」に反対した人物。「島の良さを守って発言できるのは内田さんだけ」と、クリスチャンの元議長や宗教者、無所属の前議員らが立場を超えて支持を表明。内田氏は参院比例票の三・七倍となる二百五十五票を獲得しました。
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 長崎市への編入合併は、それまでの合併への不安を現実のものとし、長寿祝い金制度の改善など、様々な要求が出てきました。住民は、「これまで通り、落矢ダムのおいしい水を飲みたい」(香焼)、「交通船への助成を続けて」(伊王島)などと次々に声をあげました。
 「何でも長崎市に合わせるのでなく、町の良さを生かし広げよう」との日本共産党の訴えは大きな共感を呼び、「住民の声をまっすぐ市政に届け、ズバリ発言できるのは共産党しかない」との理解が広がりました。
 「合併で不安ばかり」という、香焼町の小波津紀代美さん(33歳)は二児の母。「町の就学援助はずっと続けてほしい。給食費や教材費など、子どもを心配なく学校に通わせることができるのは幸せなこと、親の声を市議会に届けて」と、思いを津村さんに託しました。
 伊王島では、「内田さんが勝ってくれ本当によかった」との声が多く聞かれました。「『民報』でずっと町のことを知らせてくれた。住民の声を議会に届けられる信頼できる人」と、合併への不安を共産党に託し、自主的に支持を広げる人も少なくありませんでした。
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 「福祉や教育の良い制度は守ってほしい」「町の伝統を生かして」の声は、住民みんなの一致した思いです。しかし、「住民サービスは低い方に、負担は高い方に」が合併の実態。選挙戦で、有権者にカベをつくらず対話する努力は特別に重要なことでした。
 香焼では、「合併に反対した人も、賛成した人も手を取り合い、協力してこれからの町づくりを」と積極的に訴え、共同を呼びかけました。
 伊王島では、「党派や宗派の違いを超え、より良い島をつくろう」と、カトリック信者の人たちが多く住む地域にも入り対話をすすめました。「これまではどういう共同をすればよいか迷っていた」という、川瀬満さん(65歳)は、「信仰を持つ人も島を愛する気持ちは同じ。その思いを大事にして、共通点でかつてない対話ができた。この経験を今後に生かした」と、今回の新鮮な体験を語りました。
 今回の選挙結果には、合併の犠牲に甘んじるのでなく、「住民の暮らし、町の良さ、町の伝統は守ろう」との決意がはっきり示されています。

特集
一人区で勝利した2つの町に何があったのか
 「住民に役立つ人を」と立場を越えて 

旧香焼町のみずがめ落矢ダム