長崎県知事
 金子原二郎 様                         
                                   2004年11月25日
                                 日本共産党長崎県委員会
                                    委員長 山下 満昭

 2005年度長崎県の施策と予算編成に対する要望書

 小泉内閣は、景気回復のきざしが見えてきたといっていますが、それはごく一部の大企業のみで多くの国民には「生活が良くなった」という実感はまったくありません。県下でも若年層を中心に就職難が続き、労働条件の悪化は深刻です。
 追いうちをかけるように十月から始まった年金の負担増をはじめとする福祉や医療の改悪が、県民のくらしを圧迫し景気をさらに冷え込ませています。くわえて、消費税の大増税に向けたレールづくりが急ピッチで進められ、このままでは県民生活はいよいよ危機的な状況に追い込まれます。
 地方自治体が、住民のくらしと福祉の向上をはかるという自治体本来の使命を発揮することが、今ほど求められている時はありません。
 国に対して、国民生活優先の政治への転換を求めるとともに、県においても、諫早湾干拓や本明川ダムなど巨額の税金を注ぎ込む大型開発を見直し、県民のくらしを守る立場での予算編成を行われるようつよく求めます。
 以下、県として政府に要望するとともに、来年度の県予算編成で必ず実現されるよう要望いたします。

                      記

【国に対して要望することを求める事項】
1.年金改悪を白紙に戻し、国民的議論をやり直すこと。
 国庫負担による「最低保障年金制度」をつくること。
2.介護保険の国庫負担を引き上げ、保険料・利用料の軽減、特別養護老人ホームの増設、介護職員の労働条件の改善などを行うこと。
3.国の制度として就学前の子どもを対象とした「乳幼児医療費無料化の制度」をつくること。
4.定率減税を続けること。消費税増税をしないこと。
5.「三位一体改革」による地方交付税や国庫補助金の削減を中止する。
 義務教育に関する国庫負担を堅持すること。
6.郵政の民営化を中止すること。
7.コメの安定供給責任を放棄するコメ「改革」を中止し、コメの輸入を削減する。
 価格・所得保障を農業予算の主役にすること。
8.諫早湾干拓事業を中止し、有明海再生事業に転換すること。
 仮処分決定に対する異議申し立てを撤回すること。
9.企業・団体献金を禁止すること。う回献金の実態を明らかにし規制すること。
 政党が税金を山分けする政党助成金を廃止すること。
10.アメリカのイラク戦争支持をやめ、ただちにイラクから自衛隊を撤退すること。
11.来年の被爆60周年に、核兵器の廃絶に全力を挙げて取り組むこと。
  被爆体験者の医療費受給の居住要件を撤廃すること。
12.憲法改悪をやめ第九条を守ること。教育基本法の改悪を中止すること。

【県に対する要求】 
[福祉・医療]
1.乳幼児医療費助成の対象を、入院・通院とも就学前まで拡大する。
 窓口払いのいらない現物給付に改める。
2.国民健康保険税を引き下げる。市町村国保に対する県の助成を大幅に増額する。積立金や基金のある市町村には、国保税の引き下げを指導する。被保険者全員に保険証を交付する。
3.介護保険は、高齢者や低所得者への保険料・利用料の減免制度を全市町村がつくるよう指導する。
 特別養護老人ホ−ムを増設し、早急に待機者の解消をはかる。
4.公立保育所の民営化を中止する。定員超過のすし詰め保育や待機児童を解消するため、公立保育所を増設する。
 乳児・障害児・病児・長時間・夜間の保育を拡充する。
5.公立の学童保育を拡充する。小・中学校の空き教室の活用をすすめる。父母による共同保育に、県と市町村の大幅な助成をおこなう。指導員の身分保障と労働条件向上のため援助をつよめる。
6.生活保護の申請は、本人の意思を尊重し無条件で受理する。
 人権侵害的な調査や保護打ち切りをやめ、県民の立場に立って運用する。
7.高齢者の高額医療費の未償還を解消する。老人医療受給者で身体障害者三級および知的障害者B1の人に、福祉医療費助成を適用し、医療費負担の軽減をはかる。
8.失業・生活困窮など特別な理由で国保医療の負担金が支払い困難な人には、減免制度の適用をすすめる。
9.保健医療圏域の計画は、医療機関の偏在を解消する観点から見直す。
10.郡部の診療所に、眼科・耳鼻咽喉科・皮膚科などの専門医の派遣をすすめる。

[公正で県民本位の県政を]
11.大企業や誘致企業奉仕の開発優先でなく、県民生活本位の予算編成に切り換える。県予算の中で、年々構成比が低下してきた生活福祉費・環境保健費・教育費を増額する。
12.諫早湾干拓事業を中止し、有明海再生事業に転換する。堤防の水門を開けて海水を入れ、諫早湾の干潟を再生する。
13.本明川ダムの建設を中止する。洪水対策は、余裕高を考慮に入れながら河川拡幅・川床掘削を中心とした総合的治水対策で対応する。利水対策は過大な水需要を見直す。
14.西彼杵地域高規格道路は、全線をとおしての経済効果を算定し、根本的に見直す。高校生の通学やお年寄りの通院など、関係住民の利便のために、長崎−佐世保直通バス路線を復活する。
15.公共事業の重点を、住宅・教育・福祉施設・下水道など生活密着型に改め、中小企業にも仕事がまわるようにする。県の事業や物品購入は県内企業・中小企業に優先的に発注する。
16.国道202号線の、長崎市大浜から福田本町間の通学路の安全を確保するため、拡幅整備をおこなう。
17.対馬市比田勝港の外防波堤を、現在の200米から、さらに250米延長する計画は、出入港する船舶に危険であり見直す。
18.南高国見町の、神代から土黒海岸の埋め立て工事を促進する。
19.下水道事業を見直し、住民負担の少ない合併浄化槽による「特定地域生活排水処理事業」の導入を促進する。
20.県道長崎−多良見線の拡幅整備を促進する。
21.長与町の高田川の河川道路の完成を急ぐ。
22.西彼大瀬戸町の松島・西泊地区のボタの除却と流出対策をとる。
23.指名競争入札を、県内企業を優先した一般競争入札に改める。
24.住宅供給公社問題は、設置者としての県の責任と、長年利子収入を得てきた金融機関の貸付責任を明らかにして再建をはかる。県民に大きな負担を強いる危険がある債務保証には応じない。歴代理事長らの経営責任を明きらかにし退職金返還を求める。
25.市町村合併の押しつけをやめる。住民の意志を尊重し合併しない市町村へも自立を支援する。
26.県有施設の運営は県が責任を負う体制を堅持し、安易に指定管理者に委譲しない。
27.知事や議員は、どんな形でも企業・団体からの献金を受けとらない。県職員の退職後の受注企業への天下りを禁止する。官官接待、議員接待、宴会政治は一切中止する。

[景気・雇用]
28.不況に苦しむ県民や中小業者のための施策を実施する。制度融資の金利を引き下げ、貸付条件を緩和する。無担保・無保証人融資の限度額を引き上げ、借りやすいように改善する。
29.金融機関に対し「不良債権処理」を理由に「融資打ち切り」や「貸しはがし」をしないよう要請する。
30.若者や高齢者の雇用を促進する。三十人学級づくり、保育所や特別養護老人ホ−ムの増設、介護サ−ビスの拡充などで、教職員、保育士、介護士、ホームヘルパ−、消防士などを大幅に増員する。
31.サ−ビス残業を根絶し雇用を増やす。厚生労働省が示している「賃金不払い残業をなくすための要綱・指針・基準」を使用者と労働者が守るよう指導する。まず、県庁内からサ−ビス残業、長時間労働を なくし業務に見合う人員を増員する。
32.生活保護基準より低い地域最低賃金を大幅に引き上げる。
33.パート、嘱託、派遣労働者の労働条件を改善し、正規職員との賃金・労働条件の格差を是正し雇用 の安定をはかる。
34.雇用の機会均等、職場での男女平等を実現する。
35.大型店の進出を規制し、県内中小商工業者と商店街を守る。大型店の進出計画には、周辺商店街への影響予測を調査公表し、県が先頭に立って規制する。大型店の元日営業や24時間営業など地域の慣習を無視したやりかたをやめるよう指導する。
36.農産物の輸入を抑え日本の食料自給率の向上をめざすとともに、安全な食料流通を確立する。主な農産物に価格補償制度をつくる。米飯や地元農産物を学校給食に使うなど、「地産地消」を推進する。
37.沿岸漁業の経営安定をはかるため助成をつよめる。

[自然・環境]
38.ゴミの減量化をめざし分別収集をすすめる。再資源化を推進する。ゴミ焼却の大型化、広域化を見直す。
39.産業廃棄物処理の事業者責任を明確にし、不法投棄の防止対策を強化する。水源地上流で大量不法投棄をおこなった三方山処分場は操業を停止し、全面的に撤去させる。神浦ダムでくりかえされる赤潮発生の原因を調査し、防止対策を講じる。
40.大村湾の浄化対策をつよめる。周辺の下水道建設を促進する。
41.離島の物価を抑えるため航路、空路に助成をおこない運賃の軽減をはかる。割高な石油類の離島価格を引下げる。出荷する農水産物の輸送費に助成する。
42.九州郵船の対馬・厳原、比田勝と博多間の全航路を補助航路にする。

[教育]
43.長崎と佐世保で起こった事件を繰り返さないために、どの子にもよく教師の目が届くよう少人数学級づくりを早急にすすめる。再発防止策は全県一律でなく、各学校の自主的な対策をたて地域と共同してすすめる。
 子どもの健全な成長をゆがめる過度な競争を強いる教育を改める。
44.毎年つづく県立高校授業料の値上げを中止する。不況で経済的に困難な家庭には授業料減免の措置をとる。
45.私学助成を大幅に増額し、公私の格差をなくす。
46.県立学校の統廃合をやめる。学校給食の民間委託を中止する。
47.すべての学校に資格を持った図書館司書、養護教師を配置する。相談員を配置し県の助成を拡充する。
48.県立学校と高等技術専門校の施設を、無料で地域の人々に開放する。
49.日の丸・君が代の強制はしない。

[反核・平和]
50.被爆地である長崎港への米艦船の入港に反対する。知事は入港許可を与えない。
51.佐世保の基地強化に反対し、基地撤去を要求する。原子力空母や原潜など戦争に参加する戦闘部隊の寄港に反対する。
52.米兵犯罪の犯人逮捕、謝罪と完全補償がなされるよう日米地位協定の見直しを要求する。
53.西海町に計画中のLCAC基地の建設に反対し、中止するよう要求する。
54.長崎空港への米軍機の着陸を中止するよう要求する。
55.被爆県として、被爆の実相の普及につとめ、あらゆる機会に核兵器の廃絶を世界に訴える。アメリカ、ロシアの未臨界核実験に抗議し、あらゆる核実験の中止を要求する。

党長崎県委員会が
切実な県民要求67項目を予算に反映させるよう長崎県に要望書

 2005年11月25日、日本共産党長崎県委員会は、「2005年年度長崎県の施策と予算編成に対する要望書」を長崎県に届けました。
 対応したのは、高原剛県総務部長と田中桂之助財政課長です。
 党県委員会の山下満昭県委員長が要望の大筋について説明し、中田晋介県議、堀江ひとみ長崎市議、渕瀬栄子大瀬戸町議らが、個別の要求について説明しました。
 高原総務部長は、知事にきちんと伝え、文書で回答することを約束しました。