ここまでわかった 長崎違法献金疑惑

金子知事と自民党の責任重大に

税金還流の流れ断ち切れ

2002年12月27日(金)「しんぶん赤旗」

 ことし二月の長崎県知事選をめぐる違法献金疑惑で、長崎地検は二十六日、自民党県連などを家宅捜索しました。捜査はゼネコンから政治家の側に広がり、知事の責任もますます重大になっています。事件の底深い腐敗構造をみてみると――。

公共事業受注企業が3つのルートから

 違法献金疑惑では、現在、三つのルートが浮上しています。(図参照)

図

ゼネコン

 第一は、ゼネコン・ルート。長崎県発注の公共工事を請け負っていた大手・中堅建設会社四社の東京、大阪本社や九州支店などが、公職選挙法違反(特定寄付の禁止)の疑いで長崎地検の家宅捜索を受けたのは、今月三日のことでした。

 捜索を受けたのは、五洋建設(本社東京)、不動建設(本社大阪)、鴻池組(同)、東亜建設工業(本社東京)の四社。

 政治資金収支報告書によると、知事選直前の昨年十二月十九日から二十七日にかけて、五洋建設、不動建設が各三百万円、鴻池組が二百万円、東亜建設工業が百万円の計九百万円を自民党長崎県連に献金しています。

 公選法は、国政選挙では国が、地方自治体の首長や議員の選挙ではその自治体が発注する公共事業を請け負った企業は、選挙にかかわる寄付をしてはいけないと定めています(一九九条)。政治家の側にたいしてもこれらの企業から寄付を受けること、要求することを禁じています。(二〇〇条)

 四社はいずれも県発注の工事を受注しており、長崎地検は四社の献金が、政治献金として届け出があるものの、「寄付は知事選の資金だった可能性が高い」と判断して、最高検の了承を得たうえで摘発したものです。

 ゼネコン・ルートはその後、鉄建建設(本社東京)、大豊建設(同)、白石(同)の三社がことし初めに計一千万円を献金していたとして、拡大しています。

地元建設会社

 第二は、地元建設会社ルート。長崎県建設業協会の上滝勝会長は、金子知事の後援会事務所から支援を頼まれ、同協会長崎支部の加盟社に協力を要請したことを認めています。このうち、二十社が各五十万円を昨年十月から十二月にかけて協会と一体の自民党建設支部に献金しています。

 当時、県工事の請負契約を結んでいた十四社分七百万円が違法献金の疑いがあるとして、事情聴取を受けました。これらの業者は、容疑を認める上申書を提出しているとされます。

党魚市場支部

 第三のルートは、金子知事とかかわりの深い自民党長崎県魚市場連合会支部をトンネルとしたもの。県発注の工事を受注している若築建設など中堅ゼネコン三社と地元建設会社十社が同支部に計四百四十八万円を献金。うち昨年十二月に九社がおこなった三百六万円に違法献金疑惑があるというもの。三百十万円が金子原二郎対馬後援会にわたっています。

 このほか、長崎県建設業協会など建設関連八団体が計三千万円、全日本漁港建設協会長崎県支部が五百万円を、それぞれ昨年十二月に自民党県連に献金したことも明らかになっています。

議会で言論封じ

 違法献金疑惑の発覚後、「知事選にからむ後援会への政党献金、企業献金は一切ない」と表明していた金子知事は二十五日、「対馬後援会」にかかわる疑惑が判明、「本当に残念であり、申し訳ない」と陳謝しました。

 ところが、日本共産党の中田晋介県議が十二月県議会で「みずからの選挙にかかわる重大な疑惑について、まともに向き合い解明しようとしない」と知事の姿勢を追及したとき、加藤寛治議長(自民党)は、「知事は答弁する必要はない」と前代未聞の言論封じを行い、公明、民主など他会派もこれに同調。知事も答弁しませんでした。

 ことは、税金にかかわる重大な疑惑。金子知事は真相を解明し、みずからの責任をはっきりさせるべきです。

違法献金に感覚マヒ 

 これまでの調べなどによると、自民党県連は昨年十一月、「来年は知事選もある。五千万円取りまとめてもらえないか」と、東京、大阪などに本社を置くゼネコン四十九社でつくる「県建設業協会長崎中央支部」に要請。ゼネコン側も公選法の規定を知りながらも受注実績リストを提出し、献金要請の便宜を図ったといいます。

 政治家もゼネコンも「違法献金」への感覚がマヒしていたのは、恒常的な腐敗構造にどっぷりつかっているからです。

 長崎県では、諌早湾干拓事業が世論の反対を押し切って進められていますが、この背景には、干拓関連工事を請け負うゼネコンがこの五年間だけでも自民党県連に一億七千万円、金子知事に二千二百万円もの献金をしていることがあります。

 公共工事受注→政治献金という税金還流の流れは切れ目なく続いています。その流れを断ち切るかどうかが、いま問われています。