「よみがえれ!有明海訴訟」が二十六日提訴されました。
 「漁民と市民が共同して原告となってたたかっているのがいちばんの特徴」。原告弁護団の河西龍太郎副団長はこう語っています。
 原告数は、有明海沿岸漁民八十五人、市民三百三十一人、総勢四百十六人におよびます。「諫早湾干拓中止・有明海再生を望む人はだれでも原告になれる」とのよびかけにこたえて加わった漁民、市民たちです。さらに、全国の市民にも呼びかけ、年内には八百人をめざすといいます。
 これだけの規模と広がりをもったのも、漁民の生活の場を守るとともに、有明海の豊かな自然環境を享受し、有明海が良好な環境のまま保たれることが「国民共通の課題」(馬奈木昭雄・原告弁護団長)だからであり、それが「次の世代への責任」だからです。
 いま、有明海全体の環境破壊はいっそう深刻になり、有明海の漁獲量は最盛期のわずか15%に落ち込み、漁民の生活はたちいかなくなるところまで追い込まれています。今季もすでにプランクトンが発生し、ノリ養殖に色落ち被害が生まれています。
 諫早湾干拓事業が有明海にとどめを刺すような悪影響を与え、さらに農水省が強行しようとしている前面堤防が完成すれば、干潟の再生と有明海再生は困難になります。
 「これ以上、有明海を痛めつけてはいけない」。馬奈木弁護団長の訴えは、原告だけでなく、四県地域住民の多くが感じていることです。
 同時に、原告らが地域に住み生活しているからこそ感じ取るのは、諫早湾干拓工事を止めるだけで、「宝の海」を取り戻せるわけではないことです。
 「山林の荒廃、ダムの建設、減反による水田の荒廃、産廃処分場の建設…。山から海まで地域全体が荒廃させられ、そのいちばん目に見える形のあらわれが有明海異変だ」。馬奈木弁護団長は訴えます。
 「この被害をいちばん痛切に直接に受けている漁民を先頭に、地域住民全体で、有明海を宝の海としてよみがえらせる。そして、山から海までこの四県の地域生活の場を本当に再生させる壮大なたたかいを総力をあげてたたかいぬこう」。
 この大型訴訟は、諫早湾干拓事業という、ムダであるだけでなく、有害な巨大公共事業を中止させるという点でも壮大ですが、さらに「宝の海」を取り戻し、地域全体の生活の場を再生させるという壮大なたたかいになっています。
4県地域全体の生活の場再生めざす壮大なたたかいの一歩踏み出す   工事中止を求める提訴についての解説記事
「しんぶん赤旗」11月28日 山本弘之記者