2002年8月17日(土)「しんぶん赤旗」

米空母リンカーン入港

対テロ戦の出撃基地化

イラク攻撃に参加も


 十六日の米原子力空母リンカーンと随伴艦二隻のいっせい寄港は、日本が米軍の無法な軍事戦略に組み込まれ、対テロ戦争の出撃拠点になっていることを示すものです。

 リンカーンと随伴艦は十九日に日本を出港した後、「『不朽の自由』作戦を支援するためアラビア海に向かう」(米海軍のホームページ)ことになっています。

 「不朽の自由」作戦は、米軍がアフガニスタンを中心に展開している対テロ報復戦争です。アフガンでの軍事攻撃では、昨年十月の空爆開始以来、爆撃機や戦闘機、攻撃ヘリなどを使い、徹底して敵をたたきつぶす、せん滅作戦が継続されています。空爆の過程では誤爆が相次ぎ、数千人ものアフガン住民の命が奪われています。

 アフガン空爆には多数の空母艦載機が参加しており、アフガンでの軍事作戦における空母の役割は決定的です。

 リンカーンは、従来の艦載機に比べて戦闘能力を大幅に増強させた最新鋭の戦闘機FA18Eスーパーホーネットを艦載しています。同機は今回が初めての実戦配備で、アフガン空爆で最も多く使用されているJDAM(統合直撃弾)など精密誘導爆弾も搭載することができます。

 リンカーンや随伴艦がアラビア海に展開するのには、もう一つの目的があります。

 米海軍のホームページは、横須賀基地に寄港した駆逐艦フレッチャーをはじめリンカーンの随伴艦が、「不朽の自由」作戦の支援とともに、同地域に「米軍プレゼンス(兵力)を提供し、イラクに対する国連制裁を実施する」任務をもっていることを明らかにしています。

 リンカーンと随伴艦の米本土への帰還は来年になるとされ、米政府が準備を進めているとされる対イラク攻撃に参加する可能性もあります。

 日本政府は、こうした任務をもつリンカーンや随伴艦の寄港を当然視しています。米側は今回の寄港を「米国と日本の相互防衛関係におけるパートナーシップの表れ」(在日米海軍司令部)と高く評価しました。

 核兵器の問題では、米軍は現在、「平時」には水上艦船や海軍航空機に核兵器を配備しないという一般的政策をとっています。一方で、個々の艦船や航空機が実際に核兵器を搭載しているかどうかについては否定も肯定もしない政策をとっており、非核の保障がない「グレーゾーン」(灰色地帯)です。

 (竹下岳記者)