「貴重な和風建築物保存」にのりだす県の調査に期待

  長崎県は洋風・和風を問わず近代建築物や遺構の宝庫、県内いたるところに先人の足あとが残されています。近代日本の歴史・文化を語るのに欠かせないこれらの文化財保存は、行政の重要な任務となっています。

 この夏から、県教育委員会は国の補助を受け、貴重な和風建築物を保存しようと実態調査に乗り出します。明治から終戦までの伝統的技法や趣向でつくられた住宅や公共建築物、宗教施設などが対象です。担当の学芸文化課では、「貴重な建築物を保存し、観光や地域振興に活かしたい」と話しています。

 長崎は一五七〇年、ポルトガル人の来航によって開かれ、鎖国時代の二百余年も含め全国唯一の貿易港として発展しました。国宝の大浦天主堂やグラバー邸など有名な洋館群が集中した東山手、南山手の両地区一帯は、当時の外国人居留地としてつくられた所です。

 海岸に近い上等地には商館や倉庫、その奥にはホテルや銀行が建てられ、山手の丘陵地には港を向いた住宅群が並び、石だたみの道とともに当時をしのばせます。この二つの地区は、一九九〇年に長崎市伝統的建造物群保存地区に指定され、市民の共有財産として守られながら美術館やカフェとして活かされ、小さな音楽会なども開かれています。

 しかし同じ歴史的建造物でも、長崎の旧市街地の貴重な和風建築物や町並みは、多くが商業地域であることから取り壊しが続いています。それでもまだ、いきな造りや格子が連続する町家、独特の塗壁、石だたみ、陶器製鳥居など、貴重な町並みや遺構があちこちに残されています。

 寺町通りの周辺を注意深く散策すると、たくさんの寺院や中島川石橋群とともに、尾垂(おだれ)・連子(れんじ)・持送りなどの技法を残す貴重な和風建築物も発見できます。

 長崎市の担当者は、「保存したい気持ちだが、いまの社会経済情勢のもとでは困難もあり、記録保存やデザインへの協力をお願いしている。取り壊されるのは悲しい」と複雑な思いを語り、今回の調査に期待を寄せています。
価値ある遺産
 近代建築 後世に
「しんぶん赤旗」5月26日より