四月十六日、小泉内閣は、「武力攻撃事態法案」「自衛隊改正案」「安全保障会議設置法改正案」の有事法制三法案を閣議決定し、十七日に、国会に提出しました。
 政府与党は、二十六日の衆議院本会議で趣旨説明と質疑を行なった後、五月七日から、衆議院特別委員会で審議をはじめ、今国会で強行成立させ、その後二年間ですべての関連法案をつくるとしています。
 日本共産党は、十六日、「アメリカの戦争に国民を強制動員する『戦争国家法案』を断固阻止しょう」のよびかけを発表しました。
 有事法制は、戦後、アメリカと自民党政府が一貫してめざしてきた野望であり、アメリカがアジアに介入戦争をおこない、自衛隊を従えた共同作戦を遂行しょうとするとき、この作戦を全面的に支える国家体制、国民総動員の体制をつくろうとするところにそのねらいがあり、戦争を放棄した憲法をじゅうりんするものです。
 政府は、テロや不審船の問題を口実に、「備えあれば憂いなし」ともっともらしくいいますが、日本の戦前の歴史をみても、「備えあれば」として有事法制をつくったことが、他国への侵略と抑圧の原動力になりました。この歴史の再現をゆるしてはなりません。
 法案によれば、内閣が「有事」と判断すれば、首相に全権限を付与し、首相が国や地方自治体、指定公共機関を指揮し、また、国民に協力義務と罰則を設け、自衛隊や米軍のために、@国民や公共機関の土地、建物、物資や財産を自由に「使用」し、A医療、土木、運輸、などの労働者を戦争協力業務に従事させ、B国民生活でも、通信・報道、通行規制、強制的な避難、誘導など様々な統制を行なうものです。
 また、首相に地方自治体や指定公共機関への指示権、代執行権を与えることにより、乱暴に地方自治権が侵害されることになります。まさに有事法制は、戦争放棄や、基本的人権、議会制民主主義、国民主権、地方自治など、憲法の民主的諸原則をふみにじるものです。朝日新聞社の全国知事へのアンケートでも、長野県、高知県が「不必要」、半数近くが「どちらともいえない」など、過度な住民の権利制限に懸念を示し、審議を尽くせの意見が多くだされているのは当然のことです。
 こういう中で金子知事は、二十四日の定例記者会見で「相手が攻めてきた場合にどう対応するか、専守防衛の立場からも法整備は必要」「地方自治体への指示権も理解」と「有事法制」の必要性をのべています。
 米軍基地と自衛隊基地のある佐世保では、「有事即応部隊」が異様な迷彩服で市街をパレードし、戦時派遣の艦船の出・帰港が日常化するなど、県・市民の不安が高まっています。
 今回の発言は、県民の平和と安全、くらしや福祉を保持する固有の責任を負う知事としては、法案の無理解と多くの県民への責任のなさを示すもので見過ごすことはできません。
 長崎県は、広島県とともに被爆県として世界や全国に向かって平和を発信すべき崇高な任務をもっています。 
 以上の立場で左記の内容を強く要請します。

                     記

一、被爆県の知事として、平和を望む長崎県民の立場で、日本国憲法と県民の安全とくらし、福祉を守る立場にたつこと。

一、二十四日の発言を撤回し、有事三法案反対の立場を表明するとともに、政府と与党に対して有事三法案の撤回を申し入れること。


二○○二年 四月三十日
                       日本共産党長崎県委員会
                          委員長  深町 孝郎
                      日本共産党長崎県議会議員団
                                中田 晋介
                                 西村貴恵子
長崎県知事
  金子 原二郎   様
小泉内閣の「有事法制三法案」に反対の立場をとることの申し入れ
  日本共産党長崎県委員会は2002年4月30日、県知事に標記の申し入れを行いました。
 県委員会から原田睦男副委員長、中田晋介県議、西村貴恵子県議が申し入れを行い、県からは総務部理事の松田元生氏が対応しました。
 申し入れの全文は以下の通りです。