税金のムダづかいと環境破壊の諫早湾干拓はただちに中止を
        ー干拓堤防閉め切り五周年にあたってー
      二〇〇二年四月十四日   日本共産党長崎県委員会
 諫早湾干拓の堤防が閉め切られて丸五年が経ちました。
 この間に、有明海の環境はますます悪化し、昨年の養殖ノリの大凶作をはじめ、タイラギやアサリの死滅、漁獲量全体の激減など大きな漁業被害を出しています。 農水省の有明海ノリ不作等対策調査委員会の調査によっても、諫早湾干拓がこれらの環境悪化の原因になっていることがいよいよ明らかになり、漁民をはじめとする国民の干拓中止を求める世論が高まっています。
こうした中で、農水省が三月末に発表した「事業変更計画」では、効果が費用をしたまわり四百三十億円にのぼる損失をだすことが明らかになりました。 政府と県は、環境破壊にくわえて税金の無駄遣いが明かになった諫早湾干拓事業をただちに中止し、有明海再生のための対策に全力をあげてとりくむよう強く求めます。

 税金投入のムダがいよいよ鮮明に

 諫早湾干拓事業の事業再評価をおこなった第三者委員会は昨年八月「環境への配慮を条件に事業の見直し」を求める答申をだしました。
 農水省は、これにもとづく見直し案として「国営諫早湾土地改良事業変更計画書」を発表しました。中央干拓地の東工区の農地造成を中止し、造成される農地は西工区と小江干拓地だけにするものです。このため造成される農地が当初計画の千四百ヘクタールから七百ヘクタールに半減します。
 計画書によると、干拓事業の総投資額二千五百五十四億円にたいし、見込める効果は二千百二十五億円で、費用に対する効果が〇・八三しかなく四百二十九億円の損失になることが明らかになりました。土地改良法では、事業にかかる費用に対して効果がうわまわることが事業の要件とされています。変更計画で効果が費用をはるかに下回り大きな損失を出すことは、事業としての要件を失ったものであります。いま県下には、干拓でできる農地の八・五倍の遊休農地があり、干拓による農地造成の必要はまったくありません。ただちに事業を中止してこれ以上の税金のムダづかいをやめるべきです。

 水門を開放し有明海再生を

 農林水産省の有明海ノリ不作等対策調査検討委員会は昨年十二月、「諫早湾干拓地排水門の開門調査に関する見解」を発表しました。そのなかで「諫早湾干拓事業は重要な環境要因である流動及び負荷を変化させ、諫早湾のみならず有明海全体の環境に影響をあたえていると想定される」と指摘しました。干拓事業が有明海の環境に影響を与えていると公式に指摘されたのはこれがはじめてです。
 「見解」は「第一に、干拓地の干潟がもつ水質浄化機能が堤防閉め切りによって失われた。第二に、潮位差の減少、流速の減少が起こったのは堤防閉め切りが主な原因である。第三に、赤潮の発生が堤防閉め切り後、統計的に有意に増加している。第四に、堤防閉め切りで潮の流れが低下したことで、貧酸素水塊が生じた可能性がある。第五に、潮の流れが遅くなったため、調整池から排出される浮泥が沈下して海底の底質が変化した」と重要な指摘をおこなっています。
 そのうえで「干拓による貧酸素水塊や赤潮の発生、底質の変化が、タイラギやアサリ死滅の原因となった可能性が大きい」と、これまで不明とされてきたタイラギやアサリ死滅の原因にはじめて言及しています。「見解」は、干拓事業の有明海環境への影響を検証し、対策をたてるため堤防水門の開門調査が必要として「まず第一段階として二カ月程度、次の段階として半年程度、それらの結果をふまえて数年の開門調査がのぞまれる。開門はできるだけ長く、できるだけ大きいことがのぞましく、毎日の水位変動を大きくし、できる干潟面積を増やすことが望ましい」としています。
 県は、「防災」などを理由に開門調査に反対していますが、これは干拓事業の環境への影響を検証し対策をたて有明海を再生していく道を閉ざすものです。早急に必要な対策をとりながら第三者委員会の「見解」どおりの開門調査を実施するとともに、将来は常時開門して諫早湾干潟を再生し、有明海の環境の回復を図るべきです。

背景に受注企業から巨額の政治献金

 このように税金の無駄遣いと環境破壊の原因である干拓事業が、あくまでも進められる背景に、受注企業から知事や自民党へ多額の政治献金があることが明らかになりました。日本共産党の調査で判明しただけでも、金子知事に対して干拓事業の受注企業二十三社から五年間に二千二百三十七万円の企業献金がおこなわれています。知事就任直後から献金額がそれまでの四倍に急増し、癒着の深まりを示しています。
 自民党長崎県連は、干拓着工以来の十六年間に受注企業四十九社から七億一千七十万円の企業献金を受け取っています。これはこの間に同党が受け取った企業献金総額の四十八%を占めています。県選出の自民党国会議員である久間、松谷、虎島の議員にもあわせて六千五十一万円の企業献金が行われています。また、農林水産省の幹部で受注企業への天下りした人が、取締役以上で十八社に三十三人もいます。
 諌早湾干拓が環境破壊の有害で、無駄遣い事業であることが明白になっても、知事や県政与党が事業継続に執着するのは、企業献金と官僚の天下りによる政官業の癒着があるからに他なりません。
 政治と金をめぐる問題が重大問題になり、国民と県民の大きな批判を受けている時、政治家や政党は少なくとも、公共事業受注企業からの献金は受けとらないことを強く要求します。