水門開門調査に関する申し入れ

 長崎県など九州4県の党県委員会が、2002年3月28日に、農水相に申しいれた文書の全文です。
諫早湾潮受け堤防排水門開門調査に関する申し入れ

                 2002年3月28日
             日本共産党福岡県委員会 委員長 安広 和雄
                   同 佐賀県委員会 委員長 平林 正勝
                   同 長崎県委員会 委員長 深町 孝郎
                   同 熊本県委員会 委員長 久保山啓介

 貴省は去る3月7日、長崎県などに対し、諫早湾潮受け堤防排水門の「開門総合調査」を4月から2ケ月程度の期間実施する考えであることを明らかにした。昨年末、貴省の「有明海ノリ不作等対策関係調査検討委員会」(『第三者委員会』)は、有明海全体の環境変化と諫早湾干拓事業との関連を示唆し、数年の長期開門を含む三段階の調査が必要との見解をまとめた。それは失われた諫早干潟の浄化機能をより詳細に検証するためには、開門調査は短期間では不十分であり、できるだけ長く、しかも水位変動は大きいほど望ましいという論拠からである。
 しかるに今回の貴省の表明では、『第三者委員会』の「結論を尊重する」としてきた武部農水相自身の言明をも反古にして、肝心の関門調査の期間は「2ケ月程度」の短期間に限定。しかも開門による海水の導入については、調整池の水位をマイナス1.2メートル〜マイナス1メートルで管理するため、水位変動幅20センチ程度のごく僅かなものでしかない。中・長期の関門調査に関しては、「開門総合調査等を踏まえた総合的な検討をおこない、半年程度の開門調査の取り扱いを判断したい」としてはいるものの、数年間の調査には一切言及せず、事実上、その意思はないことを明確にした。
 これは、開門調査に関する『第三者委員会』の提言を全く無視したものであり、『第三者委員会』の存在自身をないがしろにした態度といわなければならない。
 もともと、有明海の漁業異変については、貴省が十分な裏付けのないままに「影響は軽微」などといって、諫早湾の閉め切りを強行した責任が厳しく問われているものである。しかも、政府は、97年の日本共産党の干拓事業中止の申し入れに対し、当時の橋本首相が約束した、生態系・自然環境などの「事実の検証」の努力さえ怠ってきた。諫早湾周辺のみならず有明海全体に広がった漁獲高の激減に象徴される有明海異変は、必要な調査を尽くさず、検証をサボタージュしてきた政府の無責任さの証左にほかならない。この根本には、何が何でも干拓事業の推進をはかるという貴省の頑迷な姿勢があることを厳しく指摘せざるをえない。今回の開門調査に関して、同じ愚を絶対に繰り返してはならない。
 われわれは、有明海を「宝の海」として再生させるためには、諫早湾干拓事業の中止、水門の常時開放、干潟の全面的な回復、が不可欠であり、このことを強く求めるものである。同時に、今回の開門調査にあたっては、有明海異変の原因を真摯に、科学的に解明する見地から、『第三者委員会』の提言にそって行われるよう強く要請するものである。

一、開門調査は、『第三者委員会』の提言通り、短期及び数年を含む中・長期の調査とすること。また、開門はできるだけ長く、大きくし、(調整池に)海水を大量に入れるようにすること。

一、再開している干拓工事は、少なくとも、これらの調査が終り、干拓事業と有明海汚染の因果関係が明らかになるまで中止すること。

一、水門開放により、調整池の汚濁水が有明海に流出し、新たな漁業被害が発生する可能性もありうる。万一、被害が発生した場合には、政府が責任をもって被害補償を行うこと。

一、調査期間中を含め、調査に関する情報は、その全てを、敏速に公開すること。
                                       以上

農林水産大臣 武部勤 殿