狂牛病発生の政府責任と安全対策を求め、長崎県の万全の対策を講ずることの申し入れ

 厚生労働省は十二日、東京都卸売場食肉市場で解体された狂牛病の疑陽性反応が出た牛について、確認検査で陰性となり、感染の疑いがなくなったことを明らかにしました。しかし、疑陽性と陰性の二つの結果がでたことは、消費者をはじめ関係者に衝撃を与える結果となりました。
 狂牛病の日本への侵入を許した日本政府の責任は重大です。狂牛病の感染ル−トは、母子感染を除けば、異状プリオンに汚染された肉骨粉を通じてしかありませんでした。狂牛病汚染国から輸入される肉骨粉を徹底的に管理・規制することは最低限の政府の義務にもかかわらず、対策を放置してきました。
 一九九六年四月にWHO(世界保健機関)は、WHO加盟国に対し「すべての国は反すう動物の飼料への反すう動物の組織の使用を禁止すべき」と勧告をしました。ところが農水省がとった措置は、肉骨粉に反すう動物に給与する飼料としないよう周知を図られたいとする、単なる通知の文書を関係団体、都道府県に送付しただけで、法的根拠もない、肉骨粉の混入措置にも言及しないものでした。しかし、狂牛病発生地域のEUからの肉骨粉の輸入は今年の一月まで続いてきました。今回の狂牛病感染牛は、五歳牛で、狂牛病は幼獣の時の餌が原因とされており、感染時期は、九六年と想定されています。それだけに、WHOの勧告を受けた時の対応が決定的でした。武部農水相も「こんなことが起こりうるはずがないという甘い認識が私は一番大きな問題」「政府の責任を再三問われましたが、そのことを甘んじて受けます」(九月二十六日、衆院農水委員会)と政府の責任を認めざるをえませんでした。
 世界的な科学雑誌『ネイチヤ−』の論説も、「感染源と疑われる肉骨粉飼料の規制を拘束力のない行政指導にとどめたことなどを問題」とし、「日本政府の政策的怠慢が、発生を防げなかった原因」と厳しく批判をしています。
 消費者の不安をなくすには、肉骨粉の輸入から消費までの量と使用実態の全容を解明することが決定的です。具体的には、原因となる肉骨粉の輸入の中止、肉骨粉の国内流通の中止、脳や脊髄などの危険部位を流通させないための焼却措置、脊髄液の肉への飛散の原因となる肉食処理時の背割りの中止など、汚染原因の可能性をなくすなどの措置をとることです。同時に、消費者が安全で健康な食生活ができるよう全面的な情報公開と科学的な情報の提供を機敏におこなう体制を政府の責任で実行することです。
 狂牛病発生で深刻な被害を受けているのは、畜産・酪農関係者です。政府の責任で万全の補償体制を確立する必要があります。また、販売店・飲食業者への対策も重要です。売り上げが減少するなど深刻な影響が広がっていています。政府がその責任で風評被害対策をとることは当然です。
 今こそ、牛の健康より効率性を優先する安全無視の農業・畜産政策を見直し、酪農・肉牛の特性と地域の条件にあった経営を基本にし、それが成り立つ価格政策と飼料の自給対策こそ急務です。 貴職が、政府に対し以下の内容を要求され、独自の施策をとられるよう申し入れをおこなうものです。
    記

一、感染経路を徹底解明すること。
二、消費者に対する情報公開を正確かつ迅速におこなうこと。
     県は、県民に情報公開を徹底すること。県内の関係市町村に相    談窓口を設置すること。
三、畜産・酪農家の被害者に万全の補償体制を確立すること。
     県は、県内の畜産・酪農家の実態調査をおこなうこと。無利子融     資制度をもうけ、被害者に独自の補償体制をおこなうこと。
四、卸売業者、販売店、飲食業者に対し、無利子融資制度をもうけ、必  要な対策をとること。
     県は、県内の実態調査をおこない、被害状況を把握し、必要な対    策をとること。
五、「背割り」中止に伴う、と畜場設備の変更に必要な支援をおこなうこ  と。検査員を大幅増員をすること。
六、肉骨粉の使用禁止によって打撃を受けるレンタリング業者に対し、国 の責任において支援措置をとること。

                                         以上
                           日本共産党長崎県委員会
                              委員長 深町  孝郎
 二OO一年十月二十三日
   長崎県知事 金子原二郎様
10月23日の申し入れ全文です