軍事報復と佐世保から自衛隊が出動することに反対する申し入れ
 二十四日の「長崎新聞」は、防衛庁が「海上自衛隊の最新鋭艦イージス艦を含む護衛艦三隻、補給艦一隻の計四隻を、二十七日にも佐世保基地(佐世保市)からインド洋に派遣する方針を固めた」、「ヘリは大村から派遣され、乗員は九百人以上になる見込み。インド洋などで長期間の艦隊行動を想定している」、「米軍の軍事行動に伴う自衛隊の海外派遣は初めて。違憲とされる集団的自衛権の行使に抵触する恐れがあり、米軍支援法案(仮称)が国会で審議される前の『見切り発車』との批判も出そうだ」と報道し、翌日には「朝日」、「毎日」などの各紙も同様の報道をおこないました。
 この報道は、佐世保市民をはじめ、多くの県民に、自衛隊が米軍の軍事報復に参加することになるのではないかと衝撃をあたえています。日本共産党長崎県委員会は、こうした報道に対して、県民の生活と安全に責任を負うべき県当局が座視することは許されないと考えます。
 アメリカでおこった同時多発テロ行為は、数千人のアメリカ国民の命とともに、日本国民の命を奪いました。このテロ行為は、いかなる理由があっても絶対に許されない、卑劣な犯罪行為であり、私たちはきびしく糾弾するものです。二十一世紀に人類が安全に生き抜くために、テロ行為は根絶しなければなりません。
 アメリカはテロ事件に軍事的な報復で対抗しようとしています。軍事的な報復は、テロ根絶にならないばかりか、新たな戦争とそれによる大規模な計り知れない惨害をもたらし、いっそうのテロ行為と武力報復の悪循環をもたらすものになります。
 アナン国連事務総長は、「暴力の道を拒否しよう」、「テロに訴えるものとそれとたたかうものとの違いが全世界の目に明白なものとできるよう、われわれの原則と規範を堅持しよう」と米国に対し、報復攻撃を拙速におこなうべきでないとの考えをしめしています。また、ロイター通信は、世論調査会社ギャラップの三十一カ国の調査結果は、欧州諸国の八〇%、南米諸国の九〇%が「軍事攻撃より、容疑者引き渡しと裁判」を支持していると報じています。いま大事なことは、軍事報復にうったえることではなく、国連を中心に、国際的な協力で、テロ事件の犯人、およびその支援者を特定してとらえ、国際法にもとづいて裁くために力を尽くすことであります。
 わが国の憲法九条は、国際紛争の解決の手段として、武力行使と武力による威嚇をきびしく禁止しています。テロ問題も、国際紛争の一つです。それとのたたかいに武力を行使することが、憲法が禁止している「国際紛争を解決する手段」としての「武力による威嚇又は武力の行使」にあたることはいうまでもありません。憲法のこの条項にてらせば、米軍の武力報復作戦への参加・協力が憲法に違反することは明白です。輸送・補給などの「後方支援」活動ー兵たん活動が、戦争の不可欠で不可分の構成部分であり、それへの参加が憲法に反することは、ガイドライン法のさいの審議を通じても、すでにあきらかにされていることです。報道が事実とするならば、今回の自衛隊派遣は、憲法違反であるとともに、ガイドライン法でさえ米軍支援を「周辺事態」に限っているものを、地球規模に広げるもので、この法律をも踏みにじるものです。さらに、こうした行動は、日本を米国の支援国にすることであり、日本国民と長崎県民をテロの標的にする危険を広げることにもなります。
 日本共産党長崎県委員会は、こうした見地から、以下のことを申し入れるものです。

一、こうした報道が事実であるかどうかをすみやかに調査し、事実であるなら中止要請を表明すること。

一憲法違反の軍事報復支援と、長崎からの自衛隊出動を中止し、テロ行為への対応は法に基づく解決に 努力するよう、政府に申し入れること


二〇〇一年九月二十六日
                                 日本共産党長崎県委員会
                                   委員長 深町孝郎
長崎県知事
金子原二郎 様
 9月26日、深町孝郎県委員長、山下満昭書記長、中田晋介県会議員、西村貴恵子県会議員が申しいれた文書です。