諫早湾干拓事業を中止し、水門開放・干潟の再生を求める申し入れ
諫早湾干拓事業を中止し、水門開放・干潟の再生を求める申し入れ


 諫早湾干拓事業の事業再評価(時のアセスメント)をおこなった第三者委員会は八月二十四日、農林水産省の「計画どおり事業継続」という諮問にたいし、「環境への真摯かつ一層の配慮を条件に事業を見直されたい」と答申しました。
 これを受けて、武部農林水産大臣は二十八日、「環境への一層の配慮等の視点に立って、多方面からの検証をおこない『自然と共生する環境創造型の農業農村事業』とするため総合的な検討をおこなう」という談話を発表し、規模を縮小した見直し案を検討すると表明しました。
 これは、「計画どおりの事業継続」に固執してきた農林水産省や長崎県の立場が破たんしたことを示しており、有明海再生と干拓工事中止を求める漁民をはじめとする広範な国民世論が生み出したものです。
 公表された議事録によれば、事業再評価第三者委員会では、「失われた干潟の浄化能力など外部不経済を考慮すれば、一・〇一という事業の費用対効果が崩れる可能性があり、新農業基本法に整合していない」、「多大な国家予算を使って農地を拡大するよりも、遊休農地や耕作放棄地の有効利用が先決」、「ばれいしょの収穫量予測が過大など、営農構想の実現性に疑問がある」、「有明海ノリ不作などの原因究明のため、水門を開放しての調査が行われるが、その結果を待たずに事業を推進してよいのか」、「防災対策は干拓方式が唯一の対策ではなく他の方法も可能である。洪水対策は河川堤防のカサあげ補強で置き換えうるし、排水不良の改善は排水ポンプの増設でできる」、など、事業の根幹にかかわる問題が提起され、中止・休止を求める意見があいつぎました。農林水産省側はくりかえし説明し反論していますが、ついに諮問された「計画どおりの継続」を認める意見はありませんでした。
 こうした事態にもかかわらず、長崎県知事および県議会議長は政府に対し「事業の計画どおりの推進」要請を繰り返し、日本共産党以外の県議会各会派も同調しています。これは、論議を通じていよいよ明らかになった事業の不当性に目をふさぎ、有明海再生への正しい対策に背を向ける態度であり、ただちに改めなければなりません。
 いま必要なことは、科学的な調査によって有明海再生の対策を明らかにしすべてに優先して実行することであり、目的が失われ費用対効果が崩れて事業の要件を欠いた干拓事業を公共事業削減の立場からきっぱりと中止することであります。これこそ有明海漁民と広範な世論の要求にそう道です。
 よって、諫早湾干拓事業の抜本的見直しについて、次のことをつよく要求し申し入れます。

           記

一、有明海をよみがえらせるため、堤防水門を常時開放し、干陸地すべての干潟再生に取り組む。
二、農地があまっているなかで、費用対効果も崩れた農地を造成する干拓事業は中止する。
三、干拓周辺の低平地の浸水対策は旧堤防の補強、排水ポンプの増設など佐賀県の方式ですすめる。本明川の氾濫   対策は国土交通省の河川改修ですすめる。高潮対策は潮受け堤防の水門の開閉で対処する。
四、干拓工事をすべて中断し、有明海漁業被害の原因解明の調査および対策をとる。
五、干拓事業による漁業補償を万全におこない、当面の就労と生活を保障する。
   二〇〇一年九月七日

長崎県知事 
 金子 原二郎 様 
                          日本共産党長崎県委員会
                               委員長 深町孝郎
 第三者委員会の答申や農林水産大臣の記者会見をふまえ、日本共産党長崎県委員会は9月7日、金子原二郎長崎県知事に申しいれました。