米海軍佐世保基地の米兵逃亡事件で福岡防衛施設局に申し入れた文書
米海軍佐世保基地の米兵逃亡事件についての申し入れ

 最近、沖縄での、米兵による凶悪事件が頻発し国民の怒りを呼んでいます。
 六月二十九日、沖縄県北谷町で、米兵による女性への暴行事件に関して、身柄引き渡し問題からあらためて日米安保条約・地位協定見直しが大問題に発展しました。
 長崎県佐世保市では、今年四月暴行傷害事件を引き起こした米海軍強襲揚陸艦「エセックス」の二等水兵乗組員が、米本国に逃げかえるという事件が発生しています。
 日本国内で暴行傷害という犯罪を引き起こしても、わが国の権力が刑事罰を及ぼすこともできないという、もはや法治国家とも、主権を確立した国家ともいえない現実が表面化しています。
 この異常な事態をつくりだしている根源に「現行の日米地位協定」があります。
 したがって、沖縄県民をはじめ全国の自治体からもその見直し要求が出ているのも当然です。今日では政府内からも見直し必要論が出されはじめました。
 先の衆議院外務委員会で「見直し決議」が採択されたことはご承知のとおりです。ところが日米外相会談(七月十七日)で田中真紀子外相は、「改定」ではなく、「運用改善」を提起し、合意するという政治的決着をつけました。「どこまで卑屈な日本外交か」と嘆かざるをえません。これには、マスコミからも「運用改善を米国からでなく、田中外相から妥協的に持ち出したことに、納得がいかない」(七月二十日付け毎日社説)と厳しく批判しているほどです。
 佐世保での暴行傷害事件は、さらに深刻です。「妥協的な運用改善」の対象にもなっておらず、問題解決の方途は全くたっていません。
 現状では、地位協定を楯にして、米軍基地に逃げこみ、さらに本国に逃げ帰り、罪状を不問にしてしまうという事態になりかねません。こうした無法な状況が放置されることが米兵による事件・犯罪を防止できない大きな要因にもなっています。これでは、沖縄県民や長崎県民をはじめ国民の苦痛はなくなりません。
 わが党は、日本の国家主権の確立と国民の被害防止の立場からもこの問題が正しく解決されることをあくまでも追求していく決意です。
 また、佐世保の事件では、「米軍の好意的判断に基づく運用改善」どころか、米軍自体が米兵逃亡を手助けしたのではないかという疑問が強まっています。
 政府は、米兵逃亡事件の真相と責任の所在を米国側に強く求めるべきです。
 以上の立場から左記の点について強く要請いたします。

               記

一、暴行傷害事件をひきおこした米海軍二等水兵乗組員の逃亡や、この間の経過など事件の真相解明と全容 を明らかにすること。
一、「運用改善」というのであれば、佐世保の事件でも身柄を少なくとも本国基地での拘束ではなく、佐世保基 地に連れ戻し日本側の捜査に全面協力させること。
一、主権国家としての体をなさない「地位協定第十七条、第九条」を改定すること。
                                              
二○○一年 七月二十四日
                   日本共産党長崎県委員会
                      委員長 深町孝郎
内閣総理大臣    小泉 純一郎  様
外務  大臣     田中 真紀子  様
防衛庁 長官    中谷   元  様