水門開放、干拓中止、有明海再生
漁連の3大要求を全面支持
 
 不破哲三議長が福岡、熊本の演説会で行った、諌早湾干拓と有明海問題での訴えです。「しんぶん赤旗」九州面 5月25日付けから紹介します。
 …前略…
 改革、改革というが小泉さん、公共事業を削るつもりはあるのか。一般論ではいろいろいうのですよ、「聖域なき財政再建」とか、「公共事業の見直し」とか、いろいろいいます。しかし、具体的なことを聞いていくと本音が出てくるんですね。
 いま、日本中にムダな公共事業として有名なもの多いんですけども、この九州には、ムダで有害な公共事業として、全国に名だたるものが二つあります。一つは諫早湾干拓と、もう一つはおとなり熊本の川辺川ダムの開発です。総論では公共事業なんとかしますといっている小泉さんが、九州のこの二つの大ムダな事業について国会で聞きますと、どれについても予定通りやりますといってるんです。
 この諫早湾干拓事業の問題で言いますと、今年がちょうど(潮受け堤防の)水門が閉まって4年目です。私は4年前の5月に諫早湾干拓の視察にいって、現地をくわしく調べたうえで、当時の長崎県知事の高田さんと新聞記者のみなさんがいる前で、公開の論戦を一時間やりました。これは知事が公開でやろうと言ったんでやったんですが、そのときに実態がはっきりしました。
 
●4年前の長崎県知事との論戦をふり返って
 知事は「これは農地造成と防災のために必要なんだ」といって、まず高いお金をかけて1400ヘクタールの農地をつくる計画を説明しました。しかし、農地の干拓といっても、長崎県ではお米の減反がそのとき7000ヘクタールを越えていました。「現にある農地を7000ヘクタールも遊ばして、新たにお金をかけて1400ヘクタールもつくるというのは意味がない」と言いますと、「米ではなく野菜つくるつもりだ」といいます(笑い)。調べてみると、知事が「これをつくります」という野菜の作付け面積は十年間で1900ヘクタールも減ってました。これも「おかしいじゃないか」といいますと、答えがないんですね。
 次が防災で、「諫早は水害で大変なんだ」といいます。ところが、この水害はどんな水害かっていうと、本明川(ほんみょうがわ)の氾濫(はんらん)、諫早市を通る川の氾濫がいちばん問題なんです。「川が氾濫するというのだったら、上流からの治水対策が問題のはず。それを川の出口の干拓工事が防災対策だというは、話しがち違うじゃないか」と指摘しますと、これも答えがないんです。(笑い)
 結局、農地も防災もあとからくっつけた理由付け、結局はゼネコンのためのムダな干拓事業だってことが非常にハッキリしました。

●「海が大変なことになる」−4年前の指摘が現実に
 私は水門の開放をただちにしろと要求すると同時に、「このまま進むと海が大変なことになる」といったんです。なにしろ、水門を閉めきって狭い湾を閉じこめるわけです。そこへ川から水がどんどん流れてくる。浄化施設もない。干潟というのは海の水を浄化する作用ががあったのですが、その干潟を殺してしまったうえ、閉めきって閉ざされた湾になったところへ、汚い水がどんどんたまっていったら、「水質が悪化して取り返しのつかないことになる」といって、この面からも水門の開放を要求しました。しかし、「(干拓が)県の方針ですから」と受け入れません。
 しかし、それから4年経ってことがもっと大規模にひどくなったんです。そのときみんなが心配したように、諫早湾にたまった汚い水が外に流れ出てきて有明海を汚す。これも大問題になりましたが、それに加えて諌早湾を閉めきったために、有明海の潮の流れがすっかり変わってまった。潮の流れそのものが少なくなり、今まで有明海を「宝の海」にしてきた海の条件ががらっと変わってしまった。調べてみると、水門を閉め切ってから海の条件が変わって悪くなっていることが、グラフにはっきりとでてきます。それが今の漁業災害にいたったわけです。
 四年前には、わたしは東京に帰ってすぐ橋本首相に会って、水門の開放を要求しましたが、政府も県も同じように、いろんな理屈をつけて反対しました。しかし、4年経ってこの諫早湾干拓、水門閉めきりが、私たちが警告したとおり、何十年、何百年にわたる害を残しこそすれ、なんの益もないものであることが、いよいよはっきりしました。
 私は、いまこそ、「水門開放、干拓中止」の声を、九州だけでなしに全国であげて、これを切り替えさせなきゃいけない、と考えています。

●「宝の海」の復活まで責任を果たすのが政府の務め
 今度、こちらにうかがう前に、福岡県の有明海漁連、佐賀県の有明海漁連、熊本県漁連の三漁連が5月13日におこなった「有明海再生漁民総決起大会」の決議文を拝見しました。「『宝の海有明海』、古くから漁業がいとなまれ、我々漁民はこの海で生活を営み、そして子々孫々にまで豊かな海を守り伝える責務をになっている」と書きだして、その有明海が諫早湾干拓による堤防閉めきりとともに、致命的な打撃を与えられたこと、有明海の漁業が「存亡の危機」に陥っていることを切々と訴えています。そして、有明海の再生を早急に実現し、漁民の生活を守るためとして、@諫早湾潮受け堤防排水門の開放、A諫早湾干拓事業の中止、B有明海再生のための抜本的振興策の実施−この三つの要求を高らかに掲げています。
 私はこれを全面的に支持し、その実現のために党としてがんばりたいとおもいます。(拍手)
 水門の開放と干拓の中止はあまりにも当然のことであります。ここまできたら、それをやっただけで政府の責任がすむわけではありません。こういうひどい状態にされた有明海に根本的な対策を講じて、海がよみがえるまで、「宝の海」が復活するところまで責任を果たす、これが政府の務めだということを、私は強調したいのであります。(拍手)

●「水門開放やむなし」が、小泉内閣に変わって逆戻り
 この点で、ひとつ皆さんにご報告したいことは、森内閣の末期に政府は、漁民のみなさんの要求、国民の正義の声におされて、「干拓中止はやむを得ない」「水門の開放やむを得ない」というところまで、実は追い込まれつつあったのです。ところが内閣変わりました。「改革」をとなえる小泉内閣は、この問題ですっかり、逆向きで前の態度にもどってしまいました。国会で追及されると、小泉首相自身が「地元の強い要望にもとづき、防災機能の強化と優良農地の造成を目的にやっている大事な事業だから続けてやります」とでいう答弁を平気でしています。
 この点に関していえば、小泉内閣の立場は、これまでどおりでもないんです。前の内閣がいったん追いつめられて、どうしようかと考えるところまでいったものが、小泉内閣とともに元へ戻ってしまった。とんでもない話じゃありませんか。
 小泉さんは「聖域なく」という言葉が好きです。神聖なものとし手をつけないものはない、といいます。しかし、実際には水門を「聖域」にしているじゃありませんか。
 こういうやりかたを、運動と世論で堂々と追い詰め、水門の開放と干拓の中止、そして有明海再生を実現させるまで、国民の正義の世論、海を守る世論を広げに広げて、勝利をかち取ろうではりませんか。(大きな拍手)