事実に反する諫早湾干拓推進宣伝を中止し、
    第三者委員会提言の尊重を求める申し入れ


 長崎県は、農林水産省の有明海ノリ不作等対策関係調査検討委員会の提言がまとめられる第三回会合の直前、三月二四日付長崎、西日本新聞 二六日付東京版日本経済新聞、夕刊フジ 二七日付佐賀新聞に、諫早湾干拓推進に理解を求める全面広告を掲載した。
 また、同時期にテレビ、ラジオでコマーシャル放送を行った。これは検討委員会の提言が干拓を推進するものとなるよう影響を与えるとともに、国民世論を事業推進の方向に導くことを意図したものである。ところが広告の内容には、明らかに事実に反する点があり、このような一方的な宣伝で検討委員会の提言を曲げ、世論をあざむくことは、地方公共団体として絶対に許されない行為である。
 つよく抗議するとともに、今後このような宣伝を一切中止するよう申し入れる。

一、事実に反する最大の点は、諫早湾干拓事業が必要な理由に「諫早大水害」をあげていることである。しかも、「死者・行方不明者七六〇人、家屋全壊二二四八戸」と一九五七年七月二五日水害の全県下の被害数をあげている。このなかには島原・南高地区の死者・行方不明者六十九人などもはいっている。諫早市内の死者・行方不明者五三九人を水増しして、干拓の「防災」効果の必要性を印象づけようとする誇大宣伝である。
 諫早大水害を繰り返さないための洪水対策は、本明川の河道改修として建設省(現国土交通省)によって行われてきた。大水害時の雨量、水量を参考に、それを流すのに必要な断面を確保するよう川幅を広げ堤防がつくられてきた。本明川の洪水対策としては十分な対策が建設省によって行われており、そのなかには干拓堤防や調整池の役割はまったくはいっていない。
 この点は、三月県議会の農林水産委員会で国弘参事監が「干拓の効果としては、中心部の対策とかの効果としては認めません。都市部の上の方の洪水対策への効果としては見ておりません」と確認したばかりである。
 それを広告では「たび重なる水害災害の歴史」として「昭和三二年洪水・諫早大水害」をあげ「住民の安全で安心な暮らしを守るために、干拓が進められた」とのべているのは全く事実関係をいつわるものである。

二、ガタ土の排除について堤防閉め切り前は、人力で掘削している姿が写真入りでのべられているが、佐賀県では、同じ地形で潮受け堤防がなくても機械力によるガタ土排除が行政によって定期的に行われている。本県でもそうすべきではないか。
 「背後地の既存堤防や排水ひ門が老朽化して災害の恐れがある」というが、干拓を進めるため、これらの対策を放置してきた責任は行政にある。早急に応急対策を講じるべきである。

三、広告は「いま水門を開けたら、ノリ不作の原因が究明できないおそれがある」としているが、有明海ノリ不作等対策関係調査検討委員会の提言は「諫早湾干拓の影響を明らかにするには、排水門を開門することにより調査することが必要である」として、周辺環境や漁業への影響予測と緩和策を検討したうえで水門の開門をのべている。農林水産省が委嘱した専門家によるこの提言を、長崎県としても尊重すべきである。

四、知事は「水門を開けない」という態度を変え、第三者委員会の提言を尊重し、有明海再生と防災の両立をはかる方向で対策を講じるべきである。

  二〇〇一年四月四日
                            日本共産党長崎県委員会
                                委員長 深町孝郎
長崎県知事 金子 原二郎 様
2001年4月4日、党県委員会が金子県知事に申しいれた文書の全文です。