社会福祉協議会への援助強め、福祉の町づくり・佐々町
    「しんぶん赤旗」2001年3月1日の九州版の記事から
 介護保険制度の実施で、地域の高齢者介護を担ってきた社会福祉協議会(社協)の活動を縮小した自治体が少なくありません。そうしたなかで、「介護保険の範囲だけでなく、全町民の健康づくりを」と、町が社協を積極的に援助し、草の根からのディサービスでがんばっている自治体もあります。長崎県北松浦郡佐々町はその一つです。

  佐々町は、佐世保市の北に位置する人口一万三千六百人の町。高齢者率は一八%、介護保険の認定者は三百八十人です。
 「家にこもりがちな高齢者が積極的に外に出て、趣味を持ち、楽しんでもらえれば」と、同町が生きがいづくりに力を入れたのは、介護保険の認定を受けた人はもちろん、そうでない高齢者も区別なく支援することが必要だったからです。
 ハード面でも、福祉センターの隣りに診療所や健康相談所を配置し、保健婦や民生委員、婦人会、老人会の部屋も確保して協力体制をつくりました。
 いま、介護保険対象のディサービスは三百六十五日、昨年十一月からは温泉を投入した入浴も楽しめるようになりました。配食サービスも、毎日約百人分の夕食が届けられ、四月から昼食宅配も始まります。
 これとは別に、「自立」判定の人や六十五歳以上の高齢者を対象にした〃生きがいディサービス〃を週一回、同じ福祉センターで行なっています。費用も介護保険実施前と同じ四百円(一人一回)で、健康チェックや簡単なリハビリ、入浴などが整っています。
 この町でユニークなのは、地域ディサービスを身近な公民館で実施していることです。このミニサービスは、すでに二十九町内会(九一%)の地域公民館に広がり、月一回や週一回(一ヵ所二十人程度)など実情に応じて行われます。
 社協から地域ヘルパーや福祉協力員が出向いて運営し地域の世話役が協力、昼食を食べ、軽い体操やゲーム、カラオケなどで一日を楽しく過ごします。食材を持ち寄ったりして自己負担はほとんどありません。
 ボランティアをしている仲村妙子さんは、「いつも『楽しみです、今度はいつですか』といわれ、逆に元気をもらっています」と笑います。町の担当者も、「町単独で介護保険がスタートし、町民自身の健康や福祉への理解が深まったようです」と話します。

 町は、在宅福祉事業に八百万円、在宅要介護老人の介護手当に二百万円、さらに針きゅう治療費や介護保険以外のヘルパー派遣、デイサービスなどを予算に計上。事業は社協に全面的に委託しています。また、来年度には、「介護保険料の低所得者減免を独自に実施したい」(町幹部)考えです。
 同町の松田政喜福祉保健課長は、「身近な公民館での地域ディサービスや、乳酸飲料を一本づつ届ける週三回の独居老人への一声訪問(安否の確認)は、介護保険では届かない老人福祉の大事な内容、独自の仕事」と胸を張ります。
 しかし台所は火の車、「介護保険の赤字が年間一千万円。財政面での負担増が深刻で、国庫負担の見直しを何としてもお願いしたい」(同氏)と訴えます。
 県内の自治体を回って懇談を重ねてきた県社会保障推進協議会の岩井三樹事務局長は、佐々町のこうした活動について、「町がイニシアティブをとって高齢者介護全体に目を向けており、高齢者を大事にしようという意気込みが伝わってくる」といいます。

 〃介護とは自立を支援する〃こと。国はこうした自
治体の苦労にこたえ、介護保険制度そのものの改善はもちろん、地域の高齢者全体の介護予防、生活支援を財政的にも支える責任があります。
(長崎県・田中 康記者)