五島・福江市に見る…
「離島に対する自民党政治の貧困」と商工会議所幹部ら 

 長崎県五島列島の中心都市・福江市の郊外に五年前から、二つの大型店が相次いで開店。同市から車で二、三十分の富江町の商店街では、「一、二年前から客足が遠のいて、町は火が消えたようですよ」という声があちこちで聞かれました。
 昨年四月には、同市へのフェリーや高速船発着ター
ミナルがある長崎市の大波止に、「売上の二割は離島がターゲット」という県外資本の都市型大型店「夢彩都(ゆめさいと)」がオープン。影響は、福江市の中心商店街にも及んでいます。

離島が本土大型店の草刈り場に
 「昨年の暮れはさんざんじゃった」と話すのは、福江商工会議所幹部です。
 「福江の商店街でも人通りが減り、売れたのは食料品ばっかり。耐久消費財や洋服など値段の高いものは全くダメ」と肩を落とします。
 県が実施した昨年秋の実態調査でも、同市にある七つの商店街のうち六つが、「(商店街は)衰退してい
る」とのべ、その原因は「大型店進出に伴う客数変化」と答えています。「夢彩都」出店による同市への影響調査でも、二割強の商店で「客数・売上とも減少」と回答、消費者の五割が「これからも船の待ち時間などに利用する」とのべています。
 昨年九月、ターミナルから徒歩で十分ほどの長崎駅に新たにオープンした別の大型店の影響とも絡んで、離島における商店街離れの傾向は、今後さらに拡大するとみられています。
 福江市商工観光課の担当者は、「郊外の大型店の影響も含めて、五島の商店街が〃本土〃の大型店によって一気に攻め込まれている感じですよ」と語ります。
 同市では、本土との足を確保し住民が利用しやすいようにと、福岡行きなどの飛行機便に助成金をだし、フェリーや高速船の会社も住民に便宜をはかり、本土は近くなりました。そのためか、若者を中心に福岡などに出かける機会が増え、皮肉にも地元商店街への客足減少に拍車をかけているのです。
 担当者は、「街の活性化と交通対策で、相反する結果になり頭が痛い」と苦悩を明かします。

住民参加の街づくりで活性化を
 こうした事態に直面し、行政でも商工関係者も、「何とかせんといかんと思っているんです」と、危機感を募らせ、努力を重ねています。
 「一番大事なことは、商店街と住民が一致団結すること」と話す関係者らはいま、豊かな観光資源を生かし、「マラソン大会やツアーの誘致で人を五島に呼び、衰退に歯止めを」という取り組みをすすめながら、商店街と住民の結束、意識改革に力を入れています。 一方で商工会議所幹部とある商店主は、「活力がないのは、離島に対する自民党政治の貧困ですよ」、「大型店野放しでなく、〃商店街がんばれ〃とどうして応援してくれないんですかね」と話しました。
 規制が緩和され、必要以上の大型店が進出することによって、離島が本土経済の草刈り場にされ、中心商店街が崩壊すれば、地域がさらに疲弊(ひへい)するのは明らかです。
 日本共産党の向原安男市会議員は、「街の活性化は住民が住み続けられる街づくりを住民参加ですすめることです。自治体と商工業者だけでなく、地域をよく知っている労働者や農漁民、青年や主婦も参加して知恵を集め、住民と連携した地域経済の振興をはかることが不可欠」と強調します。
 単なる再開発でなく、住民参加型の民主的な街づくり組織(TMO)の活動こそ、二十一世紀の地域づくりには必要なのではないでしょうか。

(長崎県・田中 康記者)
住民と力合わせ「がんばれ商店街」
 2001年2月4日付け「しんぶん赤旗」は、離島の商店街の現況と問題点、打開方向を示した特集記事を掲載しました。その記事を紹介します。