島原・天草・長島架橋構想について
総合交通・情報網整備促進特別委員会(2008年6月13日)

【堀江県議】
  もう一点お尋ねします。
 幹線交通網対策の中で、島原・天草・長島架橋構想について質問いたします。
 まず、この構想につきまして概略説明をいただきたいと思います。

【清田地域振興部長】
  委員から今お話がありましたように、お手元に「島原・天草・長島架橋の実現に向けて」というパンフレットをお配りしていると思いますが、この架橋構想は長崎市から島原半島、熊本県の天草市、鹿児島県長島・出水地域を経て鹿児島県に至る九州西岸地域を2つの長大橋を含む地域高規格道路で結ぶことによって地域内外との交流・連携を拡大し、地域の一体的な発展、活性化を目指そうとする構想でございます。

 政府施策要望で今回も要望しているところでございますけれども、今のところ長崎市から諫早市までは高速道路が整備されているわけですが、諫早市から島原半島を経て天草市、そして鹿児島県の阿久根市に到着をして出水市につなげるというこの路線の中で海峡が2つございます。口之津町から天草市の五和町、それから、天草市の方から鹿児島県の長島町に至る海峡、この2つの海峡がここで言う「島原・天草・長島架橋構想」と言われるものでございます。

 この架橋構想につきましては、パンフレットの後ろの方にございますように、昭和62年の8月に、九州・沖縄知事サミットでこの構想が発表されまして、同年の12月には3県の地元選出の国会議員の方々によりまして、推進議員連盟が結成されております。翌昭和63年の5月に3県並びに地元期成会で組織する「島原・天草・長島架橋建設促進協議会」が設立されまして、以来架橋の実現に向けて鋭意陳情活動、あるいは3県間の交流活動を進めてきたところでございます。

【堀江県議】
  県はこの構想について、例年、政府施策に関する提案・要望書に項目を挙げています。
 前回は「調査の促進」ですが、今回「調査の実施」となったのは、何か状況の変化なりがあったのでしょうか。

【清田地域振興部長】
委員ご存じのとおり、国におきまして「海峡横断プロジェクトに関しましては個別調査については今後行わない」という方針が示されております。ただし、「広く一般的な橋梁にも共通をする技術研究のための調査は実施する」ということでございますので、この島原・天草・長島架橋につきましても、そういった一般的な技術研究を進めていただくことによってこの架橋実現に資するようなものを進めていただきたいということをお願いしているところでございます。

【堀江県議】
 この島原・天草・長島架橋構想は、島原天草長島連絡道路とも呼ばれて、全国6カ所の海峡横断道路の一つです。
 委員長、私の質問が理事者と行き違いにならないために、私の方から資料を提出したいと思います。委員会資料としてお取り計らいくださいますようにお願いいたします。

【山口(初)委員長】
  資料はもう用意されているんですか。どうぞ。
〔資料配付〕

【堀江県議】
  この資料は、国土交通省の資料などをもとに、我が党の笠井 亮衆議院議員が作成したものです。
 全国6カ所の海峡横断道路は、調査を財団法人海洋架橋・橋梁調査会が請け負っていました。同調査会は、国交省OBと大手ゼネコン大成建設会長をはじめ、建設業界幹部も名前を連ねています。同調査会と随意契約をして調査を進め、これまでの調査費用は68億円と国会答弁があっています。

 「発注元の国交省OBと受注先の業界団体が一体となって、自分たちが将来請け負う仕事がうまくもうかるように税金で調査をしていると言われても仕方がない」、こうした論議も国会でありまして、冬柴国土交通大臣は次のように答弁しました。
 「財団法人 海洋架橋・橋梁調査会の調査につきましては、道路整備のあり方、委託調査の適正化についての論議を踏まえ、今後行わないという決断をいたしました。もう役割を終えたものとして解散をしてもらうという決断をしたわけです」と答弁をしました。

  2月21日の衆議院予算委員会、3月12日の衆議院国土交通委員会の論議内容を引用いたしましたが、先ほど地域振興部長が言われましたように、海洋架橋プロジェクトの調査は今後行わないという、このことを確認させていただきました。

 そこで質問ですが、長崎県が要望しています「調査の実施」ということは、具体的に何を求めているのか、改めて説明を求めます。

【清田地域振興部長】
  先ほどもお答えいたしましたけれども、国の方としては、「海峡横断プロジェクトに関する個別調査は今後行わない」という一方で、「広く一般的な橋梁にも共通する技術研究のための調査は実施する」ということで聞いておりますので、そういった調査について実施を要望しているところです。
 それがひいては、いずれこの島原・天草・長島架橋について有効なものとなるものと信じてお願いをしているところでございます。

【堀江県議】
  この「調査の実施」というのは来年度に対する要望ですよね。これはまた再来年度分についても要望されるんですか。「調査の実施」ということで要望されるんですか。「一般的な技術的研究」ということを要望されるんですか。

 私が疑問に思うのは、調査を行っていた調査会ももう解散をしたと、調査はしないと言っている。それなのに長崎県が調査を実施してくれと要望している、何を実施してくれと要望しているのかというのを今聞いているんです。

【清田地域振興部長】
  橋梁、架橋につきまして具体的にどういうふうな事業をするかということは土木部の方でお答えになると思いますけれども、そういった調査研究ということがいずれ島原・天草・長島架橋について役に立つと、そのための一般的な技術研究のための調査は実施すると国の方で言っているわけですから、そういった調査について、3県架橋に資するような調査の実施をしていただければありがたいということで要望いたしております。

【堀江県議】
  地域振興部長、この調査団体、海洋架橋・橋梁調査会の報告書というのは、長崎県は報告を受けているんですか。

【村岡道路建設課長】
  この3県架橋につきましては、国、それから関係ある長崎県、熊本県、鹿児島県で情報交換というのはやっております。しかし、その中身については、国の調査の中身全体についての細かい情報というのはいただいてはおりません。

【堀江県議】
  私の手元に、海洋架橋・橋梁調査会の報告書があります。これは見られるじゃないですか。しかも、この報告書を見ると、橋梁構造、事業方式、事業採算性、償還計画、公社方式であるか、旧公団方式であるか、PFI方式であるかということも含めていろいろ調査しているじゃないですか。
もうこれ以上調査は必要ないんじゃないかと、そういう声も聞いているんです。

 それなのに、私が疑問に思うのは、いろんな事情で調査をする団体ももう解散をした、そういう団体もない、それなのに長崎県があえて一般的な調査ということではなく、島原・天草・長島架橋構想の調査をやってくれと要望をしている、何を調査をしてくれと言っているのかということを私は疑問に思うわけです。そこを質問しているんですよ。

【清田地域振興部長】
島原・天草・長島架橋につきましての調査が終了したという話は聞いておりません。調査する団体について解散したというお話ですけれども、調査はこの団体にしてくれと言っているわけでもございませんで、将来にわたって長大橋をかける場合にどういった技術的なものが必要なのか、研究する余地があるからまだ続けてきていたわけですから、その分について一般論として研究は続けてほしい。これが今は逆風といいますか、長大橋の時期ではないという話で中止されていますけれども、将来にわたって今後一切つくらないという話ではないと思っておりますので、そういった意味で調査研究を続けてほしいという話をしております。

【堀江県議】
  その報告書の中身も説明を受けていないという中では、どういう調査をされているかということも把握されていないわけですから、単に一般的な調査を求めるというだけでは説得力がないと私は思います。
 私は離島の多い長崎県で橋をかけるという仕事は大きな意義があると思っています。病気がひどくても治療できる病院が島にはないとか、通勤・通学で困るとか、そういう意味では、私は橋は生活上不可欠な問題だというふうに思っているんです。

 しかし、この島原・天草・長島架橋というのは、住民の要求から出た構想なのかと疑問に思っているんです。国が調査を中止するという決断をした今、この島原・天草・長島架橋構想というのは見直すべきではないかと思っています。

 例えば、この6つの長大架橋の道路の中で、東京湾口道路という東京湾の入口にもう一つ橋をかけようという計画につきまして、今年2月の神奈川県議会では、建設常任委員会でこういう論議がされました。担当課長は、「特に国会の位置付け、社会情勢等を受けて変わることがあれば、今の位置付けについて検討する必要がある」と、見直すということを担当課は議会で答弁を行っているんですよ。

 だから、長崎県も毎年要望しているから調査の実施を要望すると、一般的な調査を今後も、どこがやろうとも続けてもらってこの構想に活かすんだと、そういうことではなくて、報告書もきちんと読んで、その上でどういうふうに必要なのかと。だって、毎年事業費をかけているじゃないですか。

 情勢が変わる、国の位置付けが変わった中では、私は見直すということも検討していいと思っているんですが、そういうお考えはありませんか。

【清田地域振興部長】
  当然国の方が長大橋のプロジェクトについて見直しをすると言った時点で、我々としましては、3県架橋についてどういう対応をしていくべきかということは検討したわけでございますけれども、やはり島原半島、特に南島原市の住民の皆さんにとっては、この3県架橋というのは一つの悲願だと思うんですね。

 知事が、各市町を視察して意見交換をしてきておりますけれども、その中でも「ぜひこの3県架橋、要するに天草、鹿児島へ抜ける架橋については手をおろさないでいただきたい」という強い要望があっております。

 どうしても私どもは離島・半島を振興している立場からすると、袋小路の半島というのはいろんな面で、観光振興のみならず、一たん災害があった時に抜け道がないという非常に厳しい状況の中で生活されているわけで、そういった住民の要望がある以上、厳しい中ではあってもこういった3県架橋の要望については私どもは続けていきたいと思っております。

 3県ですので、本県だけの判断ではなく、これは鹿児島県、熊本県ともお互い協議をしながら、これは必要な道路であると、あるいは必要な架橋であるという認識のもとに要望を続けているところでございます。

【堀江県議】
今の答弁は、構想そのものの必要性については変わりはないということを平たく言ったと思っているんですが、私としては、こういう政治的な国の判断もあり、調査団体も解散をされ、そういう調査も行わないと国が決断した今、こうした構想そのものについても再度見直すべきではないかということを本特別委員会の中であえて指摘をしておきたいと思っております。