福岡高裁の判決に従わず、「開門しない」ことを求める意見書への、反対討論

 12月6日、県議会の超党派40人は、福岡高裁の判決を受けて「開門するな」という決議案を上程しました。これに対して、日本共産党の堀江ひとみ県議が反対討論を行いました。
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 日本共産党の堀江ひとみです。意見書 については、以下の理由で反対いたします。
 12月6日福岡高裁は、次のとおり判断して、国に開門を命じました。
@排水門の締め切りにより、漁業被害が増大し、締め切ったことを「漁業権の侵害」と明確に断罪していること。A排水門の締め切りは、冠水などの災害防止については、部分的な効果しかなく必要なときに閉門するば、防災対策は可能であること。B干拓地の営農についても、排水門の締め切りが「不可欠」ではないこと。を明確に述べています。

 司法による開門命令を、真摯に受け止めなくてはなりません。忘れてはならないのは、裁判所が農水省に対して、中・長期開門調査の実施を求めたのは、今回4度目であるという事実です。

 2004年8月工事差し止めの仮処分決定。佐賀地裁は「国は、ノリ不作等検討委員会が中・長期開門調査を提言したにもかかわらず実施していない状況であり、調査が行われていないことで生じたより高度の証明が困難になる不利益を漁民らにのみ負担させるのは公平とはいいがたい。」と指摘しました。

 翌年5月工事差し止めを取り消した決定。福岡高裁も「九州農政局はノリ不作等検討委員会が提言した中・長期開門調査を含めた有明海の漁業環境の悪化に対する調査研究を今後とも実施すべき責務を有明海の漁民に対して一般的に負っている」と求めました。

 それぞれ決定や判決の内容は異なっていても「国は中・長期開門調査を行う責務を負っている」という司法の立場は一貫しています。
 それでもなお開門調査を実施しようとしない農水省にたいして、2008年6月27日、佐賀地裁判決が「もはや立証妨害と同視できるといっても過言ではなく、訴訟上の信義則に反するといわざるを得ない」というもっとも厳しい判決を行いました。

 そして今回の福岡高裁判決は、潮受け堤防の締め切りと、漁業被害の因果関係が認められると、指摘しました。今度こそ国と長崎県は、すみやかに司法の開門命令に応じるべきです。

 本意見書では、開門すれば「重大な事態が発生することを憂慮している」としています。
 これらの点は裁判のなかで、すでに解決方法が示された内容です。開門といっても、排水門をいきなり全開にするのではなく、「もぐり開門」にするのです。「もぐり開門」方式により、潮受堤防の現在の構造のままで、開門は可能です。
 「開門によって調整池に海水が流入すると、海水の塩分が地下水を通して農地に伝わり、塩害が発生するおそれがあるのではないか」との疑問に対し、地元住民のみなさんは「塩害は防止できる」と言います。農地の塩害については、海水と農地の間に、潮遊びと呼ばれる遊水池をつくればいいことではないか。森山干拓に見られるように、先人たちの知恵に学ぶことが必要だと言います。

 「農業用水に支障がでるのではないか。」との疑問に対しては、調整池の代替水源を確保する方法は数多く提案されており、何ら問題はありません。調整池の水質は、現状では改善の見通しはないと指摘されています。真の防災を実現するためには、干拓事業のためになおざりにされていた排水路や排水機場の増設など、有明海沿岸で一般に採用されている防災対策をきちんと採用することが不可欠です。

  開門による有明海漁業被害の救済は、いまや待ったなしの状況です。干拓農業者、地元住民、漁業者も見通しがもてる有明海の再生のために、福岡高裁の判決を真摯に受け止め、速やかに判決が実施されることを、求めます。

  以上、討論と致します。