2010年3月議会 文教厚生委員会
水産高校の3県合同実習船について
【堀江議員】 
 次、第35号議案について。
 
これは3県合同の実習船の契約です。この「海友丸」は、現在の実習船「長水丸」とどう違うのか説明をお願いします。

【吉田教育環境整備課長】
 3県で合同してつくります「海友丸」でございますが、安全性と居住性にすぐれております。そして、効果的な実習教育ができるような配慮や、あるいは維持管理費の軽減を考慮した設計でございます。

 具体的に申し上げますと、まず、「えひめ丸」の件を参考にいたしまして、生徒たちの部屋を喫水よりも上につくっているという安全面の配慮がございます。そのほかに扉、ハッチ類、それから部屋関係の大部分が防火構造でつくっております。それから、救命設備及び消防設備も大幅に増やしております。

 居住性につきましては、横揺れ防止のタンクを設置しております。これは現在の3県の実習船にはない設備でございます。

 維持管理費の軽減への配慮といたしましては、メンテナンスを考慮した塗装、あるいはハイガン類等腐蝕しやすい場所へ耐久性の高い材料を使ってつくっていると、こういった利点といいますか、すぐれた点があるというふうに考えております。
 
【堀江議員】
 これまで水産高校の実習船というのは各県1校だったんですが、この3県合同実習船というのは、長崎、福岡、山口、これが初めてですよね。

【吉田教育環境整備課長】
 複数でやるというケースは初めてです。

【堀江議員】
 私も今回の3県合同実習船に関係する県内の何人かの皆さんにお話を聞かせていただきました。

 その中で、今回の3県合同の実習船の一番すぐれたところは、愛媛県立宇和島水産高等学校の実習船「えひめ丸」の沈没事故を受けて、あれを教訓にして生徒の安全をどう守るかという立場でこれはつくられているんだと、それは堀江議員評価してほしいということを私も随分言われました。そういう意味では、今の教育環境整備課長の説明は納得しながら聞かせていただいたところです。

 そこでカリキュラムについて質問しますが、午前中、私が資料を要求しましたカリキュラムの中で、今回の「海友丸」とこれまでの長崎鶴洋高校の「長水丸」のカリキュラムを出していただきました。その中で、「長水丸」ですと、1年間のサイクルで航海に従事をするわけですが、当然「海友丸」ですと、1年間を3県で航海をするということになるわけで、これは私もこの委員会にかつて所属をしていた時に、これまでの授業ができるのかという疑問を申し上げました。

 その時は、そういうことも踏まえて十分に対応したいという答弁でしたが、実際にもう4月から3県合同のカリキュラムが始まるに当たって、これまでの1年間でやったことと変わらない効果になるんですか。


【宮崎高校教育課長】
 今のカリキュラムの件でありますけれども、水産の場合はいわゆる海技士の免許を取るということで、乗船履歴というのが非常に大きな問題となってきます。そういう意味で乗船履歴については、これまでが大体一般的に91日だったのが、今回は92日ということで、ここのところは担保できております。

【堀江議員】
 今、高校教育課長が言われた海技士免許、海技士免許は、長崎鶴洋高校は4級海技士免許が取得できます。山口と福岡は5級なんですよね。そういう意味では、山口と福岡というのは、これまでは長崎よりも緩やかなカリキュラムだったと聞きました。
 
 それから、長崎はイカ釣り、マグロの操業をやっていますが、福岡は、イカ釣り操業はこれまでやらなかった。山口は、マグロ操業はこれまでやっていなかった。つまり、3県それぞれカリキュラムが違うんですよ。イカ釣りだけしかやっていないところもあれば、マグロしかやっていないところもある。それなのに、今回、3県合同で、マグロもやり、イカ釣りもやる。そして、海技士の免許をどこまで取るのか。そういう意味では、私は無理があるんじゃないかという思いがあるんですが、その点はどうなんですか。

【宮崎高校教育課長】
 まず、この海技士免許につきましては、今の鶴洋高校では取れるようになっているんですけれども、それと同等なものが取れるということで、これはご安心いただければというふうに思います。

 あと、マグロ、イカの話でありますけれども、これは3県の合同で専門家の中でかなりこの辺は協議をされた結果、確かに山口はマグロの経験がなかったというご指摘ではあったんですけれども、今回はマグロをみんな入れると。そして、イカ釣りを入れるというようなことです。

 長崎にしても、イカ釣りは確かにやっておりませんでしたけれども、やはり3県がそれぞれ経験してないことを経験したものに学ぶというようなことで、資質の向上も図られるというようなことで、今、計画し、また研修も積みながら実践、実習に備えているところでございます。

【堀江議員】
 では、そのこととかかわって、第24号議案についても質問します。

 いわゆるこれは漁労手当の廃止ですね。実習船に乗り込む職員というのは、長崎単独でも、3県合同でも存在すると思うんですね。だから、漁労手当というのは必要だと私は思うんですが、なぜこの手当が廃止になるのか、その理由を教えてください。

【木下教職員課長】
 3県合同で運航する以上、そういう職員の処遇等も統一しなければいけないというようなことで、漁労手当についても検討がなされました。今回、本県は漁労手当を出して、そのかわりに通常の時間外勤務手当というのを出していなかったんですけれども、それはもう完全に廃止して、時間外勤務手当等で対応するという方向で統一したということでございます。

【堀江議員】
 職員としてはどういうふうになりますか。今までは県職員でしたね。この県職員という身分がどういう形になるんですか。そのままですか。派遣もするというふうに聞いたんですけれども。

【中川高校教育課人事管理監】
 身分につきましては、本県の身分を保有したまま、例えば長崎県の船員とか、船長とか、そういう身分を保有したまま、福岡県教育委員会へ派遣している形をとっております。

【堀江議員】
 そうすると、派遣となれば、長い人でどれくらい派遣されますか。

【中川高校教育課人事管理監】
 基本的には船の運航期間ということで、今のところ協定としては12年間をベースに考えております。

 ただし、毎年意向調書を取りまして、本人の健康も、それから状況も踏まえたお気持ちもあわせて、こちらで把握をしていくということになると思います。

【堀江議員】
 長い人で12年間派遣をされて、船の耐久年数もあるでしょうから、実際に12年と言わないまでも、例えば数年で長崎に戻ってきたいとなった時に、例えば私が素人で考える範囲、県警とか、科学技術振興局の調査船とか、船乗りでそのままやろうと思いましたら、戻ってくる職場はそれぐらいしか私は思い浮かばないんですが、そういう場合の対応というのはどういうふうになるんですか。そこまで含めて今回の派遣ということは決められているんですか。

【中川高校教育課人事管理監】
 鶴洋高校には、もう一つ「すいらん」という実習船がございまして、その「すいらん」には4名ほどおります。そこの人事関係とも交流ができるようなシステムにはなっております。しかし、基本的には、派遣された期間の中でやっていただくことがベースになっておりまして、毎年10月以降に本人の意向調書を取りますので、その人の状況も踏まえた上でどうするかということになろうかと思います。

【堀江議員】
 では、職員の身分保障の問題、そういうところまで含めて、これは職員の皆さんと十分な合意がされているのか、その点はどうなんですか。

【中川高校教育課人事管理監】
 これまでもう何度も船員の方々には説明をさせていただきましたし、個人面談も私自身がやりまして、それぞれの希望に応じた配置に努めたところでございます。

【堀江議員】
 高校教育課長に質問します。

 今言われたように、職員の皆さんもそれぞれ派遣されるわけですよね。私がなぜこのことを言うかというと、長崎県の生徒だけが乗る時もあるんですけれども、場合によっては他県の生徒が乗る時もある。それだけではなく、乗り込む職員の方が、これは合同といいますか、他県の皆さんと一緒ですよね。しかも、イカ釣りだけやってきた、マグロ操業だけやってきたということでカリキュラムも違ってくる。そういう中で、1県が所有して、職員も生徒も長崎県だけとなれば、いろいろ問題も、あるいは危惧するところもないかと思いますが、3県合同となった時、いろんな意味で、確かに身分保障も同じようにした、カリキュラムも同じようにしたけれども、3県一緒に同じ船に乗って長い航海をするわけですけれども、そういう意味での船の上でのさまざまな懸念といいますか、心配もあるというお話も現場の中では聞いたんですけれども、そこら辺は実際、現場で対応するしかないわけですが、そういう不安ということについては、どのような説明というか、県民に対する見解をお持ちですか。

【宮崎高校教育課長】
 船員さんたちの人間関係等につきましては、先ほどの人事管理監の話の中からも察することができますように、この辺の人間関係づくりにもかなり意を用いてやっているところであります。

 今、委員が言われた生徒の方ですけれども、実は、今までは「長水丸」の場合は、乗組員の中の指導教員というのは2名しかおりませんでした。これからはマグロの遠洋航海に出る時には5名つきます。そして、マグロじゃない時の航海には4名がつくことになります。

 そして、これまでは2名しか教員がつかなかったものですから、例えばそれぞれの役割を持たせるんですけれども、半分の班が食事の当番に当たるというような時にも必ず教員が付き添っていかなければならないというようなことがございました。これからは教員が倍いますので、実は学習面での充実、これが非常にきめ細かな指導ができるということ、そしてまた、学習時間が確保できます。船の上でも子どもたちはしっかりと学習をすることができる。それだけの人員がいるというようなことで、これは大きなメリットだというふうに考えております。

【堀江議員】
 3県合同になると、指導体制も十分とれるんだという高校教育課長の説明だったと思いますが、教育長、私はこれから生徒が少なくなる。それから、本当に水産県長崎で水産業の跡を継ごうと、水産業を学ぶ生徒というのが、本当に増になるのか危惧していますし、むしろ本当に増になってほしいというふうに思っています。

 この実習船が3県合同というのであれば、やはり水産県長崎の後継者を育てるということにもきちんと位置づけてやってほしいと思うんですが、この点について、改めて教育長の見解をお聞きしたいと思います。

【寺田教育長】
長崎県は水産県であります。

 水産学科を希望する生徒は非常に少なくなっておりますけれども、やはりこれは本県の基幹産業として、その後継者育成には十分力を入れる必要があると思っております。

 今回の新たな実習船建造、そして運航を契機として、さらに水産業及び水産高校の魅力を県民に伝えてまいりたいと思っております。