9月県議会 本会議 2008年10月3日
長崎県子育て条例反対討論

 ただいま議題となりました第92号議案 長崎県子育て条例につきましては、修正案・原案ともに、以下の理由で反対いたします。

 本条例は昨年、長崎県子ども条例(仮称)として提案されました。担当部は、県民や議会の指摘を受け止め、意見交換会やパブリックコメント等、広く子ども・県民の声を聴き、また市・町とも意見を深めながら、条例を検討してきました。 その経過については評価し、担当部局・課の職員のご尽力に、敬意を表します。

 反対する理由の一つは、子育てに対して、国・長崎県の責任を明確にしていない条例だからです。

 第3条 基本的な考え方で、「子どもを育てる最も重要な責任は保護者にある」と述べています。確かに、子どもを育てる第一義的責任は保護者にあります。保護者は、子どもの養育責任を持っていますが、保護者がその責任を果たせるよう援助するのは、国の責任であり長崎県の義務であります。

 例えば第4条 県の役割として、「安心して子どもを生み育てることのできる環境の整備を、総合的かつ計画的に進める」と述べています。

 子育てに関わる県民の強い要望として、「経済的負担の軽減」があります。子どもの医療費や保育料、教育費など、子育てに関わる経済的負担が家計を圧迫しています。長崎県は、乳幼児医療費について、窓口負担のない現物給付制度を、計画的に全県で実施する考えすらありません。さらに長崎市が、現物給付を実施すれば、県の補助率を削減するあり様です。

 同じように、第24条 家庭の日として、「県民は、毎月1回家庭の日を定め、家族のきずなを深めるように努めます。」と述べています。

 子育てに関わる県民の強い要望として、雇用・労働、働き方のルールの問題があります。正規雇用の拡充、正社員との均等待遇、最低賃金の抜本的引き上げ、若者を安上がりに使い捨てる働かせ方をやめさせる等、父母や保護者が、心身共にゆとりのある子育てができる社会的経済的な環境と条件を保障することが必要です。そのためには親の安定した雇用、長時間労働の規制は、不可欠です。

 家族のきずなを深める時間は、県民や一企業の努力だけで、できるものではありません。国の雇用・労働政策が問われる問題です。子育てに対する国・長崎県の責任を問わないと言うことは、子育ては「県民の自己責任」「家族の責任」と、強調していることでもあります。「子どもを持ちたい、子どもを育てたい。」という県民の、基本的な生活要求に応えるのが、国・長崎県の責任です。条例には、そうした考えが見えません。

 条例に反対する理由の二つ目は、子どもを保護・育成の対象とみていることです。
第21条 ココロねっこ運動として、「子どもの心の根っこを育てるために大人のあり方を見直し、子どもの健やかな成長を促すための活動や取り組み」と述べています。

 本条例は、主に大人の取り組みを定めたものと、理解していますが、本条例には、
大人の子どもに対する考え方として、「子どもは保護・育成の対象」という考え方が、読みとれます。

 子どもは一人の権利主体であり、大人のパートナーです。これは、ユニセフ子どもの権利条約で述べられているように、世界の共通認識です。

 大人のとりくみを定めた「子育て条例」より、子どもの権利条約を具体化した「子ども条例」を求める県民の声は、根強くあることを指摘いたします。

 以上、討論といたします。