9月県議会 文教委員会    2008年9月25日
指定管理者制度についてー質疑・討論

 
【堀江委員】 
 指定管理者制度の問題点の一つに労働条件悪化、雇用の不安化を招くということが指摘をされています。
 「平成18年度包括外部監査結果に係る措置に関する調書」この中で、長期的に見ると、人員削減によるサービス低下が危惧される、人員の削減や正職員から有期職員、パートへ雇用形態の変更が行われ、従業員の間で将来に対する不安が生じている。

 私は今回の議案の審査に当たりまして、長崎ミュージアム振興財団をやめられた方のお話を聞くことができました。20代の女性です。その方は美術館に入ってすぐのところのミュージアムショップに勤務をしておりました。商品の仕入れ、販売などを業務としているわけですが、時給750円、半年契約、交通費なし、ボーナスなし、保険と有給はありました。

 その方がなぜ退職したのか。「今後正規職員にはなれない、将来に希望が持てない」ということで退職をされたそうです。職場の人間関係は極めて良好で、退職を告げた時に、「職務に慣れているあなたにやめられると困るから残ってほしい」と慰留をされたそうです。

 働いていても将来に希望が持てない雇用形態は問題だと思います。その方は2年間働くことはできませんでした。短期で職員がやめるということは住民サービスの低下にもつながります。指定管理者制度の雇用の不安定化、このことについて、見解をまず求めたいと思います。

【深堀文化振興課長】
指定管理者制度の基本的な考え方というのは、公の施設の運営の効率化、それから、住民サービスの向上、それと、もともと公の施設というのは県民の方たちが平等にそこを利用することができるという条件を整えなければいけませんので、そういった3つの目的を達成するために指定管理者制度というのが導入されているわけでございます。

 そういった中で、職員の方の労働条件というお話をされたんですけれども、一般的に美術館等の公の施設を見た時に、その施設が政策の中で十分に位置付けられていない、その結果十分な予算も確保されていないというのが一般的な事例の中にはあるかと思うんですけれども、長崎県においては、美術館というものを県の中期計画の中でも明確に位置付けて、必要な負担金を毎年度議会のご承認を得て支出をしているところでございます。

 そういった中で、そういった負担金を受けて、今の指定管理者であるミュージアム振興財団の方もいろんな雇用の仕方を組み合わせながら効率的な経営をやっているということでございまして、結果的にそういう方も中におられるかもしれませんけれども、公の施設の目的そのものを遂行するというのが大前提としてありますので、そういった機能は十分に果たしているんではないかと、そういう状況は十分に達成されているのではないかというふうに考えております。

【堀江委員】
 一般の指定管理者とこの長崎ミュージアム振興財団は違うんだというふうなお話だったかと思うんですが、確かに長崎ミュージアム振興財団は県美術館の開館に合わせまして設立された団体ですね、財団です。

 今回は現在の指定管理者が再度指定されたケースになりましたけれども、これは6年ごとにきちんと審査をして指定するわけですから、今の長崎ミュージアム振興財団が未来永劫指定管理者であるという保証はないんですよね。しかも、さきの議会で対象団体を広げましたね。

 そうなれば、今回は発生しませんでしたけれども、この長崎ミュージアム振興財団が指定管理者の指定を受けなかったらここに勤務しておられる方はどうなるのかと、ここでまた雇用問題が発生すると思うんですよ。そうではないですか。

 そう考えていきますと、指定管理者の指定というのは、包括外部監査でも指摘をしているように、職員の雇用の問題、将来に希望が持てないという問題は、ついて回るのではないかと私は思うんですけれども、答弁を度お願いします。

【深堀文化振興課長】
  この指定管理者制度につきましては、県の立場としてはやはりその施設が効率的に運営されているかどうか。住民サービスが向上しているかどうか。そういった視点でいい、悪いという判断をすべきだと思います。

 ただし、現在の指定管理者の運営状況というのが非常によければ、結果的には次の指定管理者の公募を仮にやったとしてもそこがとることになるわけですから、そういった努力を引き出すという意味でもこういった指定管理者制度というのはやはり機能しているんではないかというふうに思います。

【堀江委員】
 全国に県立美術館やそれに類似する施設があるかと思うんですが、そうした施設の中で指定管理者制度を導入している施設はどれくらいなのか。さらに、導入していない施設の理由は何なのか。それがわかれば教えていただきたい。

【深堀文化振興課長】
 直近のデータとしましては、平成19年度のデータがございますけれども、全国で公立の美術館、博物館等が550ございますが、その中で指定管理者制度を導入してる館は93でございます。
 指定管理者制度をなぜ導入しないのか、これはそれぞれの県、市、町において事情が違うと思いますので、私の方では十分にはわかりません。

【堀江委員】
  16%しか全国の中で指定管理者制度を導入していないと。もちろん地方自治法の改正によって直営にするか、指定管理者にするか、これを選ばなきゃいけないという状況の中で、長崎県の場合は地方自治法改正後の施設でもあるということで指定管理者の導入をしたわけですが、全国では16%ということになりますと、私はその残りの部分というのはある意味様子を見ている部分もあるのではないかというふうに思うんですね。

 そういう意味では、このすべてが指定管理者制度か、それとも直営かという二者選択の中で、8割以上の施設がいまだ指定管理者制度ではなく直営を維持しているということも私は見なければいけないということをこの機会に指摘をしておきたいというふうに思っています。見解があれば教えてください。

【深堀文化振興課長】
  指定管理者制度というのは、制度がスタートしてまだ間もない制度でございます。そういった中で、各県が切磋琢磨して自分のところの公の施設の運営の仕方についてどういうやり方がいいのかというのを今、切磋琢磨しながらやっている状況です。

 私どもは指定管理者制度を導入しましたから、その中で全国にも誇れるような、そういう運営をしていきたいというふうに思っています。そういったモデルを我々が示して、よその県や市町においても指定管理者制度を導入してこういう成果が出るんだと、そういう姿を見せられるように努力をしていきたいというふうに思っております。

【押渕委員長】
再開します。

【堀江委員】
  ただいま議題となりました第101号議案「公の施設の指定管理者の指定について」は、以下の理由で反対いたします。

 地方自治法の一部改正により、これまでの管理委託制度が廃止をされ、公の施設は、指定管理者制度の導入か、直営かの二者選択の中で、長崎ミュージアム振興財団が、指定管理者制度の先進例であることは、一定理解をいたします。

 しかし、私が質疑で取り上げたように、20代の県民が将来に希望を持てない職場であること、指定管理者制度であることの雇用の不安定が現実起きていることも事実です。

 加えて、指定管理者制度が出てきた背景には、経済のグローバル化、市場化の中で公共投資のあり方を転換し、自己責任、自立・自助を基本とした社会システムに変えていくねらいがあります。そのために、住民の暮らしを支え、福祉を増進させていくという自治体本来の機能を徹底して民間化、外部委託化するねらいがあります。

 こうした原則的な立場からも、指定管理者の導入については反対であり、指定についても同意できません。