自民党提出の「開門するな」の決議案に対する堀江県議の反対討論

 2008年7月4日、7月定例県議会が始まりました。開会早々、先の開門を命じた佐賀地裁判決を受け、自民党などが「開門しないことを政府に求める決議案」を提出。これに対して、堀江県議が反対討論を行いました。その全文は以下の通りです。
 採決の結果、反対は共産党の堀江県議だけ。退席したのが民主の1人。他は自民、公明、民主、社民の各党はみなこの決議案に賛成しました。
 



 日本共産党の堀江ひとみです。

 ただいま議題となりました 国営諫早湾干拓事業の潮受堤防排水門の開門に対する意見書については、佐賀地裁判決を支持し開門を求める立場から、以下の理由で反対いたします。

 本意見書では、開門すれば「重大な事態が発生することを憂慮している」として、6点にわたり明記しています。

 これらの点は裁判のなかで、すでに解決方法が示された内容です。
 開門といっても、排水門をいきなり全開にするのではなく、経塚雄策九州大学大学院総合理工学研究院教授が裁判で提案した「もぐり開門」にするのです。「もぐり開門」方式により、潮受堤防の現在の構造のままで、開門は可能です。

 「開門によって調整池に海水が流入すると、海水の塩分が地下水を通して農地に伝わり、塩害が発生するおそれがあるのではないか」との疑問に対し、地元住民のみなさんは「塩害は防止できる」と言います。農地の塩害については、海水と農地の間に、潮遊びと呼ばれる遊水池をつくればいいことではないか。森山干拓に見られるように、先人たちの知恵に学ぶことが必要だと言います。

 「農業用水に支障がでるのではないか。」との疑問に対しては、調整池の代替水源を確保する方法は数多く提案されており、何ら問題はありません。調整池の水質は、現状では改善の見通しはないと指摘されています。干拓農家も調整池の水をこのまま使っていいのかと不安を漏らしていますし、消費者も安心できる農作物を願っています。

 訴訟弁護団は、判決をうけて声明を発表し、「わたしたちは、干拓農地において営農が開始された今、営農する41の農業経営体に対し、開門による漁民救済のための犠牲を強いることを、よしとするものではない。それどころか、開門を契機に、調整池に代わる農業用水の水源を確保することは、干拓農地の営農を真に成功させる途でもある。」と、明言しています。

 問題は、長崎県議会も農業者と漁業者の対立をつくる立場にたつのではなく、有明海漁業と干拓地農業が共に栄える道をすすめるべきだと思います。

 佐賀地裁の判決は、極めて重い意味をもっています。2004年に出された佐賀地裁の工事差し止めの仮処分決定はもちろん、その後の高裁、最高裁、公害等調整委員会においても、中長期開門調査が求められてきたにもかかわらず、「政治決断」としてこれを行わず事業をすすめてきた国に対し、「もはや立証妨害と同視できると言っても過言ではなく、訴訟上の信義則に反するものといわざるを得ない」と、断じたのです。

 かって「宝の海」と呼ばれた有明海の漁業被害は、事業が始まった1986年以降顕著になり、97年4月の潮受堤防閉め切りを契機に、有明海全域に広がりました。地域経済全体に、日々深刻な事態が広がっています。これ以上被害を広げてはなりません。

 地元漁民のみなさんも、開門を強く求めて新たな訴訟をおこしました。漁業者20数名を自殺に追い込み、漁業で生活が成り立たなくなった漁民のみなさんの、切実な願いに沿った判決ですから、まずは開門し調査を行うべきです。

 干拓農業者、地元住民、漁業者も見通しがもてる有明海の再生のために、佐賀地裁の判決を真摯に受け止め、速やかに判決が実施されるよう求めます。