少人数学級の早急な実施を強く要求
 文教委員会での中田県議の討論

〔質問 中田県議〕
 本県では、長崎の中学一年生による幼稚園児殺害事件から二年、佐世保大久保小学校の小学六年生による同級生殺害事件から一年、思い返して悲しみを新たにしている矢先、平戸市で中学一年生の兄が妹をバットで殴打して重傷をおわせるという事件がおきました。「殺すつもりだった」という恐るべき出来事でした。なぜ、これほど重大な事件が本県で繰り返すのでしょうか。県の再発防止の対策は十分だったのかと真剣に振り返ってみる必要があります。

 佐世保大久保小学校事件から一年たち、被害者の父御手洗恭二さんが手記を発表されました。「いまだに、前触れなしによみがえる娘の記憶に、言葉に表せないつらい感覚に自分も息子たちも苦しんでいる」という、ほんとうに心をうたれる手記です。この中に「先生、学校、教育委員会へ」という項があって、「先生が子どもときちんと関係を築くことができていたか」という疑問が出され、そのため、気になるキ−ワ−ドとして「少人数学級」「複数担任」などをあげ「それらに改善すべき点があるなら、現場の先生たちが発言・提言するしかありません」といわれています。これは、県教育委員会の調査報告書が対策のひとつとしてあげながら、いまだに手がついていないことへの指摘でもあります。

 お父さんの手記のこの指摘について、教育長はどう受け止めていますか。

〔答弁 立石教育長〕被害者のお父さんから、そういうご提言をいただいたことはしっかりと受け止めて承知しています。いま少人数学級についての研究をはじめ、その効果について様々な角度から検証検討をすすめているところでございます。そういう検証結果をふまえまして必要な対策は講じていきたいと思いますので、いま少しお時間をいただきたいと思います。

〔質問 中田県議〕
 
研究検証もいいですが急がねばなりません。こんなに次々と事件が起こるのでは有効と判った対策は緊急を要します。御手洗さんが「先生とこどもの関係をきちんときずくうえでのキ−ワ−ド」としてあげた「少人数学級」は、先日、教育長も一緒に私たち文教委員会が調査にいきました尾道市土堂小学校の陰山英男校長も強調しています。この学校では、独自の教育実践で生徒たちの学力が上がり非常に注目を集めています。当文教委員会も、そうした先進的な取り組みとして見に行ったと思いますが、陰山先生に対する全国的な評価はどうなんですか。

〔答弁 宮野義務教育課長〕独特の教育実践で私どもも感激して見ましたが、陰山先生は中央教育審議会の特別部会の委員になっておられます。

〔質問 中田県議〕
 そうですね。その部会の席でも少人数学級をやらなきゃいかんと主張しています。私も、あの学校の授業を見、子どもたちに接して、みんなが元気で明るく非常に活発で、しっかりと生きる力・学ぶ力を身につけているという印象を持ちました。さっそくかえってきて、この陰山先生の本を読んでみました。「本当の学力をつける本」という本です。30万部のベストセラ−になったそうですが、その第一章「学校でできること」の最初に「少人数学級が学力向上の第一歩」と書いて「一学級が20人から30人がいつでも全員に目が届く人数です。学級の人数というのは、学習指導にとって根本にかかわる問題です。私が新任で受け持った尼崎市内の小学校の学級の人数は45人、ノ−トを点検するだけでも大変でした。それが少人数になると、どの子がどの程度理解できているかを、たえず覚えておけるのです。これは学力作りにはたいへん重要なことです。それは子どもにとって苦手な部分が違い、それを十分に理解しておくことが、特に低学年の子どもを指導する時必要だからです。よく頭がいいとか悪いとかいいますが、子どもの学力はそんな単純なものではありません。例えば、算数などでも計算はよくできるが文章題はできないとか、図形だけ苦手としているとかいろいろなタイプがあるのです。そうした子どもの得手不得手を理解しておくことは、適切な指導のために不可欠です。ですからどの子にも確かな学力を保証するには、学級の人数を30人以下にすることがひとつの条件です」と、この本のまっさきに書いています。もちろんご一緒に見てきた土堂小学校も、私、数えながら確認しましたが、ひとクラス30人、27人、26人とみんな少人数学級でした。教育実践で大きな成果をあげている中央教育審議会の部会の委員をしている人が、ここまでいっていますから、少人数学級の教育効果は、もう明らかだとおもいますが、教育委員会としてはどう受け止められますか。

〔答弁 宮野義務教育課長〕学習面における少人数指導の効果は認めておりまして、すでに、小学校の59%、中学校の72%の学校で実施しております。学級の生徒数を減らす問題では、先日、文部科学省のタウンミ−テイングが五島でありまして、子どもたちとの懇談がありました。そのとき五島市立緑が丘小学校でも富江中学校でも「クラスの生徒数が減るのは、友だちが減るから嫌だ」という声が生徒の多数でした。それらについて研究指定校で研究していますので、いましばらく時間をいただきたい。

〔質問 中田県議〕
 まだ、少人数学級をやっていないところにはそういう声があるかもしれません。
 しかし、少人数学級をやったところでは長野県でも山形県でも「クラスが仲良くなって、友だちができてよかった」という声が多く出されています。これは3月のこの委員会で紹介したとおりです。全国で進む前向きの大勢の流れを無視して、自分に都合のいいことだけ見てなるべく否定しようというのはいかんですよ。そして、クラスを分けて授業だけ少人数にする少人数授業ではなく、生活全体を指導できる少人数学級を求める声は、県下の教育委員会からも出されているではありませんか。毎年2月、教職員の人事移動のまえに、県下八市教育長会が「人事異動に関する要望書」を県教育委員会に提出しています。今年は合併で市の数がかわったので長崎県都市教育長協議会と名称がかわりましたが、同じく「人事異動に関する要望書」を提出しています。この要望書に昨年から少人数学級に関する要望が加えられました。昨年二月、県下八市教育長会が県にだした「平成16年度人事異動に関する要望書」のその部分はどういう要望になっていますか、お示しください。

〔答弁 野田人事管理監〕平成16年度は「40人学級を下回る学級編成の早期実現(30人学級)を図ること」。平成17年度は「40人学級を下回る学級編成の早期実現を図ること」となっています。

〔質問 中田県議〕
 県下の市の教育長が30人学級をやってくれといっているじゃありませんか。私は会長の長崎市教育長に問い合わせましたが、これは、県下の教育長が集まった会議で、県への要望を出し合うなかで、昨年から加えようと決まったものだそうです。県下の教育長がそろって30人数学級をやろうと言っているのですから、これは県としてぜひこたえるべきではありませんか。課長は五島の子どもたちが嫌だというからと反論されますけれども、県下の教育長が求めていることはなぜ見ようとしないのですか。

 だいいち、少人数学級の教育効果については、2004年度の県下の研究指定校での実践の結果でも明らかになっているではありませんか。県下の小学校4校、中学校8校、いずれも一年生について27人にした少人数学級の実践ですが、アンケ−ト調査の結果はどうでしたか。生活指導面の改善成果についてお示しください。

〔答弁 野田人事管理監〕「生活指導面について」の成果としては、「明るく穏やかで落ち着きのある学級経営が可能になった」「児童生徒間のトラブルの早期発見・早期対応が可能になった」「生徒理解や生徒指導の充実が図れるようになった」「保護者との連携がより緊密にできるようになった」などとなっています。

〔質問 中田県議〕
 いずれも、あいつぐ事件の再発を防ぐために長崎の教育に一番求められることばかりではではありませんか。どうなんですか、課長。県下600の小中学校のなかで、12校でありますが、一年間27人の少人数学級をやってみたら「明るく穏やかで落ち着きのある学級経営が可能になった」。これはいままではできなかったんですよ。少人数授業ではできないんです。それができるようになった。「児童生徒間のトラブルの早期発見・早期対応が可能になった」というのは、いま長崎の教育に一番求められていることではありませんか。大久保小学校事件再発防止のために一番効果があるということが、県下の研究実践でハッキリでているではありませんか。どうして本委員会に報告もしないんですか。なぜそこを見ようとしないんですか。

〔答弁 宮野義務教育課長〕 たしかに平成16年度の実施校の成果として、人事管理監が報告したようなことが言葉としてあがっていますが、もう少し数値的なものも検証しなければならないと思いますので、もうしばらく時間をいただきたいと存じます。

〔質問 中田県議〕
 もうしばらく、もうしばらくといいますが、事件が起こってもう一年たって、重大事件が繰り返されて、もう待てないんです。

 少人数学級が、学力向上と同時に生徒の問題行動の防止にも効果がある、ということは、全国で取り組みがいちばん進んでいる福島県の調査でも明らかになっています。福島県が県の単独事業で少人数学級をはじめて4年になります。最初2002年度は小学1年と中学1年で30人学級、翌2003年度には小学2年まで30人学級にし、今年は、小学3年から6年までと中学2年3年を30人程度の学級にしました。今では小学校6年間、中学校3年間の全クラスが30人程度になっています。

 これによって、福島県では、生徒の暴力行為の発生件数が、はじめる前の2000年に全国平均の3分の1で、少ないほうから全国11位だったのが、少人数学級2年目の2003年には、全国の9分の1に減って全国1位に少なくなっています。いじめの件数も、2000年に全国平均の3分の1で少ないほうから全国5位だったのが、2003年には全国の17分の1に減って全国1位に少なくなっています。九州でも昨年から小学1年で30人学級を実施した大分県で、「いちじるしく不登校がへった」「欠席日数が減った」という結果がでています。こういう全国の状況を県は把握していますか。

〔答弁 野田人事管理監〕ご指摘のように成果の面もあがっておりますけれども、私ども成果とともに課題という面もしっかり認識しながら対応していきたいと思っています。課題の面ではクラスが小さくなりますので人間関係の固定化とか、体育大会で大きな集団の活動ができない問題をどうするか、というような問題などがあります。子どもたちには逆に多いほうがいいという意見もありますので、そういう事を、総合的に考えながら対応していかなければいかんと考えておるところでございます。

〔質問 中田県議〕
 それでは、なんで大久保小学校事件の対策の「一人ひとりの子どもに目が届く教育条件の整備」の第一に少人数学級をあげるんですか。あなたがたが対策としてあげたから、進めようといえばあれこれいってブレ−キをかける。こんなに対策として役に立つことが県内の研究でも明らかになっている、県下の市の教育長会議も求めている、九州でも、全国でも明らかになっているじゃありませんか。
 もちろん、新しいことをやるわけですから、課題もでてきます。それは一つひとつ解決しながら前向きに物事をすすめていっとるんですよ。それをいつまでも、すべてが明らかにならなければ手を付けずに先送りしていては、県教育委員会の怠慢といわざるを得ません。対策に掲げて、被害者のお父さんからも「これが必要なら声をあげてほしい」と求められとるんですよ。重大事件が続けて起こって知事が緊急アピ−ルを出すような状況であれば、今明らかにしたように問題行動の防止にも、学力向上にも役にたつとわかっていることであれば、予算はかかりましょうが、優先的に予算をまわして来年度から踏み切ることが絶対に必要です。
 本県の総務部長からいった佐賀県知事は今年からやってるんですよ。いつまでも「研究検討」という口実で、今いわれるように後ろ向きの姿勢で先送りしていたのでは県として少人数学級をしなかった数少ない県になります。それでは重大事件の再発防止をいう県教育委員会の責任がまっとうできないではありませんか。教育長、責任ある態度を示していただきたい。

〔答弁 立石教育長〕本県の30人以下学級の割合は小学校60%、中学校30%でございます。そういった本県の実態、離島へき地を沢山かかえている実態をもろもろ加味しながら、少人数学級の適正な導入の仕方というものを検討していきたいと考えているところでございまして、いま研究指定校の研究の成果もしっかりと検証しているところですので、しばらくお時間をいただいて検討していきたいと考えております。

〔質問 中田県議〕
 繰り返しいいますように、これは一年前に起こった佐世保大久保小学校事件の対策としてあなた方があげているものなんです。対策のなかの面談シ−トとか道徳教材とかは、すぐできましたけれども、私はそれでは足りないと思っています。現実に平戸の事件も起こりました。県の少人数学級の研究でも効果は明らかですから、来年度から県として実施に踏み切るべきです。

 文部科学省も、次の定数改善にむけて中央教育審議会の部会などで、国として少人数学級への検討をはじめました。文部科学省が「小学1年2年で35人」学級を考えているという報道もありました。それはぜひ国にやってもらいたいと思います。しかし、本県で重大事件をおこしたのは、小学6年、中学1年なのです。この学年が大事で他の県でも小学1年2年のつぎは中学1年で実施しています。国が小学1年2年をやるなら、県が中学1年、小学6年を実施する。国と県が力を合わせて少人数学級の対象学年を広げるべきです。そうしないと、これだけの事件を繰り返しおこしながら、長崎県は県としては少人数学級に取り組まなかった県として名をのこすことになります。そんなことにならないように本県でこそ少人数学級に取り組むべきではありませんか。強く求めて質問を終わります。