日本共産党の中田晋介でございます。党を代表して知事に質問いたします。
  
  第一に、諫早湾干拓事業について、佐賀地裁の仮処分決定を尊重し、事業の根本的転換をはかるよう求めます。佐賀地方裁判所は8月26日、諫早湾干拓事業の工事を差し止める仮処分決定を出しました。いらい3ヵ月、工事はストップしています。
 着工から15年、総事業費2490億円をつぎこむ大型公共事業が、周辺環境への被害を理由に工事が中断されたのは、我が国ではじめてという画期的な決定であります。佐賀地裁の仮処分決定は「有明海の漁業に極めて重大で深刻な被害が生じている」ことを認定した上で、「有明海の漁業被害の原因として、諫早湾干拓事業が寄与していることの因果関係の証明はある」としています。その証明として、第一にあげているのが、農林水産省が設置した「有明海ノリ不作等調査検討委員会」の見解であります。
 仮処分決定は、ノリ不作等検討委員会について、各分野を専門とする学術研究者及び長年有明海で漁業を営んできた漁業者代表が、国及び沿岸各県から提出された膨大な資料に基づき、多大な時間と労力を注いで分析し議論をして見解を示したものであって、その内容は極めて信頼に値すると位置づけています。その見解が「諫早湾干拓事業は重要な環境要因である流動および負荷を変化させ、諫早湾のみならず有明海全体の環境に影響を与えていると想定される」「このような干潟の喪失は、特に湾奥での環境悪化の進展と無関係ではないであろう」と指摘している事実をあげて、仮処分決定は「干拓事業が漁業被害に寄与していることについての因果関係の証拠はある」と認定しています。
 そのうえで、「漁民の損害を避けるために干拓事業の全体をくわしく再検討し、必要な修正を施さなければならない。その修正案をつくる間、工事を差し止める」という命令であります。国が設置した委員会の調査結果にもとづいての地裁の判断であり、これは誰が
考えても至極公正な決定であります。
 知事はよく「干拓による防災効果がでている」といいますが、だからといって、漁業被害を放置して工事を続行してよいはずはありません。いま有明海漁民は、漁業被害で深刻な事態に追い詰められています。昨年から今年にかけて、福岡のノリ漁民が一人、佐賀のタイラギ漁民が二人自殺し、家族を手に掛けての無理心中事件まで起こっています。求められているのは、干拓で漁業被害が出ないようにすることであり、必要な防災の対策も講じることであります。それは佐賀県のように海岸堤防と排水ポンプを整備すれば干拓によらなくても立派に出来ます。
 佐賀地裁の決定を尊重して事業の根本的な見直しと、有明海再生事業への転換をつよ
く求めて、知事の見解を質問いたします。

 第二に、乳幼児医療費助成の拡充について質問いたします。
この問題は、他県に比べて本県の施策が立ち遅れている分野として、わが党は従来からその改善を繰り返し要求し、助成対象を入院・通院とも就学前までとし、窓口負担をなくす
現物給付とするよう求めてきました。
 県が来年度の「重点施策推進プログラム」のなかで、少子化対策の一つとして「乳幼児医療費助成の拡充」をうちだしたことは、長く求めてきたものとして大歓迎であります。 拡充の内容は、今後市町村と協議してきめていくということでありますが、よりよい県民の子育てを支援する立場から、県には積極的なリーダーシップを発揮してもらいたい。いつも他県より遅れてうしろから付いていき、県民から求められてやっと追いつく、ともう他県は先をいっている、というような繰り返しはやめて、今度こそ他県に先駆ける気概
で取り組むべきであります。
 「重点施策推進プログラム」には、入院通院とも就学前までの助成を予定しているということでありますが、県としてつよくすすめて実現してもらいたい。何才まで助成するかは、事業主体である各市町村の判断によりますが、県としては実施した市町村には「就学前まで助成する」という制度にすべきと思いますがどうでしょうか。
 つぎに、現物給付についても、ぜひ実現していただきたい。本年5月の県下の市長会からの要望も、「助成の拡大」とあわせて「現物給付の導入」を求めています。その要望書では「いま行われている償還払い方式は、事後給付であって、制度本来の趣旨が生かされたものとはなっていないことから、より住民にとって利用しやすい方式である現物給付方式を導入すること」と求めています。この点、ぜひ応えるべきだと思いますが、知事の見
解をおたずねいたします。

 第三に、あいついだ児童生徒による殺害事件を二度と繰り返さないため、本県の教育が取るべき対策について質問いたします。
 児童生徒によるこのような恐るべき犯罪には、いま日本社会が陥っている深刻な道義的危機が反映しています。また、国連子どもの権利委員会から「極度に競争的な教育制度によるストレスのため、子どもが発達のゆがみにさらされている」と批判されたとおり、世界でも異常な日本の競争主義の教育、管理主義の教育が大きな原因になっています。まずこの点を反省し、根本から改める必要があることを指摘するとともに、事件が起こった県の教育行政として早急に取り組むべき対策について質問いたします。
 私はこの問題で小学校、中学校の先生方と話し合ってみました。みんな二度と繰り返してはならないと本当に真剣に考えています。
 いま対策のひとつとして「心をみつめる」教育週間の取り組みが要請され、その中で全学級の道徳の授業を地域に公開することが義務づけられています。主催が県教育委員会で、まさに全県一斉に上からの指示でおこなわれ、優秀な学校は表彰されたそうであります。しかし、学校現場では、通達どおり形を付けるのがやっとで、なかなか、子どもたちや地域の人々と心を深く通わせるところまでにはいたっていない、という話であります。
教育の主役は教員であり、その教師集団が力を合わせて問題解決にあたる姿勢こそ求められます。上から示されたモデルを忠実に実施するばかりでなく、その学校、その地域が持っている問題点と特徴にふさわしい対策を自主的に立てて取り組む、という方向こそ、いま必要ではありませんか。
 そして先生方から一番つよくだされたのは「仕事が忙しすぎる」と言うことでした。終日、授業と事務におわれて、子どもたちとゆっくり語り合い心を通わせる時間がとれないという悩みが深刻です。この点で注目されるのが、他県の少人数学級の教訓です。早くから少人数学級をすすめてきた山形県が、この3年間の成果について保護者、児童、校長、担任に聞いたアンケート結果を発表しました。児童の答えでいちばん多かったのが「友達が増えた」が89%、ついで「先生の指導が丁寧になった」が78%、そのため「学習が楽しくなった、学校がたのしくなった」が74%で注目されます。校長が教師を見て「児童理解が進んだ」が96%、「児童のつまずきへの対応ができる」が91%です。担任の先生は、児童とのかかわりでよくなった点は「子どもとの対話がふえた」が81%、「個別指導がすすんだ」が87%という結果です。         
 まさに今、長崎の教育に切実に求められている点が、年々改善されている状況が明らかになっています。子どもたちと教師が本当に心のかよいあう教育ができるように保障するため、本県でも少人数学級を進めるように求めて、質問いたします。

 第四に、賃金不払い残業いわゆるサ−ビス残業の根絶について質問いたします。
 九月二七日、厚生労働省は二○○三年度におこなった労働局の監督指導による「賃金不払い残業の是正結果」について発表しました。一年間に全国の労働局が調査し、賃金不払い残業を是正させた企業は千百八十四社、対象人員十九万五千人、支払わせた金額は二百三十九億円にのぼっています。これは労働局が是正させたものだけで、まさに氷山の一角であり、賃金の払われない残業の全体ははるかに多いと思われます。
 賃金不払い残業は、労働基準法違反で明確な違法行為です。これがなくなれば大きな雇用の増大が実現いたします。第一生命経済研究所の試算では「賃金不払い残業は労働者一人当たり年間二百時間を超えている。これを新規雇用にふりむければ百六十万人の雇用が創出できる」と推計されています。わが党は、この賃金不払い残業すなわちサ−ビス残業の解消をつよく求め、国会でも一貫してとりあげてきました。
 賃金不払い残業の是正は第一義的には長崎労働局、労働基準監督署の仕事です。同時に県下の労働者の労働条件を適正にし、その向上を図るのは県の重要な仕事でもあります。 ところが、撲滅の先頭に立つべき県庁の職場でサービス残業が行われているという重大な事実が明らかになっています。それは、県職員組合がおこなった職場アンケ−トによるもので、2003年度に「サ−ビス残業がある」と答えた人が23%、「時々ある」と答えた人が28%、あわせて51%、実に県庁の過半数の職員が「職場でサ−ビス残業がある」と答えています。これでは、県下の職場からサ−ビス残業を一掃する仕事を有効に進めることはできません。まず県庁の職場から違法なサ−ビス残業を一掃する取り組みが必要であります。県の対応を質問いたします。 

 最後に、本明川ダム計画について質問いたします。
 国土交通省長崎河川国道事務所は、十月二十日、本明川ダムの建設をもりこんだ本明川水系河川整備計画の原案を発表しました。市民の意見をきいて本年度中には本明川水系河川整備計画を正式決定する予定です。
 いま世界中で、巨額の費用を要し環境に大きな影響を及ぼすコンクリート・ダムが見直され「ダムに頼らない河川対策」が、世界の大きな流れになっています。
 国内でも、鳥取県の片山知事が二○○○年に中部ダムの建設計画について再検討し「治水と利水の両面からみて必要ない」と中止しました。つづいて、長野県の田中知事が二○○一年に「脱ダム宣言」を発表し「多額の費用を使い環境に多大な負担をしいるコンクリート・ダムは、今後できるだけつくらず、河川改修や造林事業など総合的な河川対策に力を入れる」という方針を打ち出しました。
 その後、専門家と県議会各派代表や自治体代表による検討委員会をつくって、2年間にわたる入念な検討の結果、8つのダム建設が中止され、現在、ダムにかわる河川整備がおこなわれています。          
 九州では熊本県が、川辺川ダムについて、利水訴訟で国側が敗訴して利水事業が白紙に戻ったため「ダムによらない利水計画」をつくって発表しました。ニュースをきいて驚きましたが「ダムによらない利水計画のほうが百億円も安くなる試算になった」ということであります。              
 これらの事例をみれば、かつてはダムをつくって当然とされてきた、洪水をふせぐ治水対策や、上水道や農業用水を得るための利水事業がダムを作らなくても可能であるということをハッキリと示しています。このような見直しが、本明川についてもできるはずであり、ぜひ必要だと考えます。      
 本明川ダムによる上水道計画をみると、計画範囲の2市6町で、過去、人口も給水量も減っているのに、今後大きく増える過大な計画になっており、厳密な見直しが必要です。 洪水を防ぐ治水対策も、裏山橋の基準点で毎秒260立方米を調節し水位を60センチメ−トル下げると言いますが、その位なら現在ある余裕高を考慮にいれながら、河川拡幅と川床掘削、周辺の森林造成などの総合的な治水対策をとればダムに頼らなくても可能なはずであります。徹底した見直しでダムに頼らない対策を求めます。

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【再質問】
 湾干拓事業について再質問いたします。
 知事、この問題では、ぜひ一度被害を受けている人の気持ちになって考えてほしい、と思います。干拓事業が始まってから、諫早湾で年間十億円の水揚げがあったタイラギが
全滅してとれなくなった。赤潮が頻発してアサリが死ぬ、魚がとれない。ノリが大凶作に見舞われ漁業ができない、暮らしがなりたたない、という、その訴えをきいてもらいたい。 佐賀地裁の仮処分決定がでてから10月1日、佐賀県議会は「仮処分決定を支持し、中・長期開門調査の早期実施をもとめる」という意見書を議決し、政府と国会に送っています。 全会一致です。
 その内容は「佐賀地裁が、漁業被害が諫早湾干拓事業によって引き起こされたことを認定し、工事差し止めを決定したことは、まさに画期的なことであり、本県議会は、同地裁の決定を高く評価する」として、干潟の再生・有明海の自然の再生と水産業振興にむけて、政府が政策を転換することを求めています。
 同じ内容の意見書が、佐賀市議会、大牟田市議会、荒尾市議会など、有明海沿岸の議会で、次々に議決されています。いずれも漁業被害で苦しむ漁民が住むところの議会の決議であります。これは国に対する決議であるとともに、事業推進をいう金子知事もきくべき決議ではありませんか。
 どんなに多くの漁民が苦しみの声を上げ、お隣の県や市の議会がなんと決議しようと聞く耳を持たないというのは正しくない。改めるべきであります。知事は、ほんとうに諫早湾干拓事業は漁業被害と無関係だと、腹の底からお考えでしょうか。おたずねいたします。

 さらに「それは、考え方の違いです」という知事答弁に再質問。
 これは、考え方の違いではありません。科学で証明された客観的な事実です。知事が見ようとしないだけではありませんか。
 11月20日長崎大学で「有明海再生の道を考えるシンポジウム」があり、18人の研究者による調査発表がありました。 地元長崎大学水産学部の西の首教授は、有明海で行った潮流観測で、堤防締め切りまえの1994年に比べ、いま、島原半島有明町沖合で潮の流れが24%から28%遅くなっていることを示し、これが水質・底質の悪化、赤潮の
頻発など環境異変の一因になっている、と報告されました。
 佐賀県の有明海水産振興センターの研究者からは、タイラギ漁場の海底土が、砂地だったのが、堤防締め切り後、広範囲にわたって粒子が細かい泥になったためタイラギが育たなくなったと報告されました。いずれも、まったく公正な学術研究の結果えられた客観的な事実であります。ぜひ知事にもきちんと見てもらいたい。
 

 「40人学級で切磋琢磨が必要」と少人数学級を否定する教育長に再質問。
 佐世保大久保小殺傷事件をくりかえさない対策として、県教育委員会から10月5日「緊急に取り組みたい施策」と「中・長期的な課題」が示されています。
 そして「教育だよりながさき」の11月号には、特集「子どもの心と向き合う教育システム・長崎モデルの構築」として「子ども一人ひとりに目が行き届く学校教育環境の整備」のため「少人数学級編成・複数担任制実施」をあげています。事件を機会に取り組むということではありませんか。ぜひ、実行してください。
 他県では、知事が「少人数学級」づくりの先頭に立っています。
 山形県の高橋和雄知事は「人生は一回しかない。手抜きしないで少人数教育の環境を整備する必要がある。子どもたちの教育のためには公共事業を節減しても実行したい」と語り、九州でも、熊本県の潮谷義子知事は昨年の予算議会で「小学校低学年における基礎学力と集団生活の基本的な習慣を身につけさせるため、義務教育のスタートである小学校1年生において、県下の全小学校を対象に35人学級編成を実施することとし、きめこまかな指導を推進して参ります。」とのべ、大分県の広瀬勝貞知事は「未来をになう子どもたちの豊かな才能を伸ばし、新しい発展の大分県づくりにつなげるため、知・徳・体のバランスのとれた生きる力を身に付けさせることが必要であります。このような観点から、小学校1年生を対象に30人学級を導入する」と打ち出しています。
 少人数学級を実施している県が36県であります。事件を繰り返した長崎県こそ早急に実施すべきであります。重ねてつよく要求いたします。

中田晋介県議の一般質問

2004年12月7日に行った長崎県議会での一般質問は、以下の通りです。

諌早湾干拓について

乳幼児医療費

学校教育

サービス残業の根絶

本明川ダム

再質問

知事答弁などもまもなく掲載します