10月5日経済労働委員会
県庁内サービス残業の根絶についての中田県議の質疑

〔質問・中田晋介県議〕
 賃金不払い残業いわゆるサ−ビス残業の是正について
質問いたします。つい最近9月27日、厚生労働省は、2003年度の「労働局の監督指導による賃金不払い残業の是正結果」について発表しました。2001年4月に賃金不払い残業是正の通達を出してから、三度目の是正結果の公表です。 それによりますと、2003年度は是正させた企業1184社、対象人員19万5千人、支払い金額は239億円にのぼっています。通達を出してからの3年間では、2200の企業の33万人に392億円を支払わせております。これは、労働局が是正させたものだけで、まさに氷山の一角であり、全体ははるかに多いと思われます。特に、最初の2年間が153億円だったのに、最近の2003年度は一年間で239億円と、年間是正額が3倍に増えているのは重大です。
 賃金不払い残業は、明確な労働基準法違反で明確な違法行為です。取り締まりにあたっている厚生労働省は「あってはならないもの」という立場を表明しています。また、これがなくなれば大きな雇用の増大が実現いたします。第一生命経済研究所の試算では「賃金不払い残業は労働者一人当たり年間200時間を超えている。これを新規雇用にふりむければ160万人の雇用が創出できる」と推計されています。わが党は、この賃金不払い残業すなわちサ−ビス残業の解消をつよく求め、国会でも一貫してとりあげてきました。
 ところが、重大なことに、県職員組合がおこなった職場アンケ−トで、2003年度に「県庁でサ−ビス残業がある」と答えた人が23%、「時々ある」と答えた人が28%、あわせて51%、県庁の過半数の職員が「職場でサ−ビス残業がある」と答えています。その前の年のおなじアンケ−トへの回答で、あるという回答が49%だったのに比べて、減るどころか増えているという重大な結果が組合機関紙で公表されています。そこで、商工労働部に質問いたします。このサ−ビス残業すなわち賃金不払い残業の是正は第一義的には長崎労働局、基準監督署の仕事です。しかし、県下の労働者の労働条件を適正にし、その向上を図るのは県の重要な仕事です。長崎労働局の本年度の「労働行政運営方針」をみますと、「労働基準行政」の年間重点施策が六つあげられていて、その二番目に「賃金不払い残業の撲滅」があります。そして、その実現の手段として「長崎県との連携」とかかげ、「長崎県幹部と労働施策全般にわたり、意見交換を行い相互の連携を強化してあたる」と書かれています。賃金不払い残業撲滅のために、県は労働局と連携してどのような取り組みをしていますか。

〔答弁・町田和正雇用労政課長〕
 ご指摘のとおりサ−ビス残業すなわち賃金不払い残業につきましては、労働局の労働基準部を中心に指導監督がなされております。全国の是正結果が発表されましたが、県下でも摘発があっていると聞いております。県としましては、労働局と一緒になりまして主に啓発活動をやっていこうと取り組んでおります。
 これまでは、企業に対する研修や労働講座、毎年秋に「労働環境フェア」をやって不払い残業の撲滅についてのPRをやっておりますし、11月がキャンペ−ン月間ですので労働局と一体となった啓発キャンペ−ンをやっていきます。

〔質問・中田議員〕
 厚生労働省は、この賃金不払い残業をなくすために、2001年4月に出した通達を、さらに具体化して三つの重要な対策の方針を打ち出しています。第一は、2001年に出した「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関する基準」で、略して「基準」といわれています。第二は、03年度に「賃金不払い残業総合対策要綱」を定め、第三に同じ年に賃金不払い残業の解消を図るために講ずべき措置等に関する指針」を出しております。

こういう「基準」と「要綱」と「指針」にくわしく定められている事項を、使用者と労働者が守れば、賃金不払い残業はなくなる、と思います。そこまで、厚生労働省の対策が進んで来ています。だから、こういう非常に大きな摘発と是正も可能になってきたと思います。労働問題の啓発、労働条件の向上は雇用労政課長の受け持つ仕事であります。この「基準」「要綱」「指針」を守ろうという取り組みは、県庁ではどのようになされているのでしょうか。県民ならびに使用者への指導はどうなされていますか。

〔答弁・雇用労政課長〕
 県の取り組みは、労働局の労働基準行政のように強制力がありませんので、啓発や労働相談等で、事業主を含めた指導をおこなっております。県庁内におきましても、当然「要綱」などにつきましては人事当局も把握しておりますので、これにもとづいて実施しているものでございます。

〔質問・中田議員〕
 しかし、県庁のなかで昨年度について、51%の職員が「サ−ビス残業がある」と答えています。実際に「基準」「要綱」「指針」が守られているか、と直接の責任者である総務部の人事課長に聞きました。
1、こういうアンケ−ト調査の結果が出ているが「県庁で不払い残業があると思うか、ないと思うか」という質問には、「あってはならない」という答えで、有無については回答を避けました。
2、「不払い残業の有無について調査したことがあるか」という質問には「ない」 という答えです。
3、「基準、要綱、指針にもとづく具体的な取り組みを何かしているか」という 質問には「とりたててない」
4、「基準、要綱、指針では、労働時間の把握は原則としてタイムカ−ドなど客観的な記録方法によるべきで、自己申告はやめよ」となっているが、県庁では「依然として自己申告によっている」
5、「基準、要綱、指針では、やむをえず自己申告によっている場合は実態調査をせよ、となっているが、県は実態調査をしたことがあるか」ときくと「したことはない」
6、「基準、要綱、指針では、賃金不払い残業を解消するため、労使で協議して取り組めとなっているが、協議はしているか」という質問に「ない」という答えです。
 不払い残業をなくそうという基準、要綱、指針を県の人事当局がひとつも守っていないということが明らかになりました。
7、では「長崎労働局の定期監督か申告監督を受けたことがあるか」とききましたら「これまで一度もない」という返事でした。県が労働局の監督を受けたら、こんなになんにも守らずに、不払い残業を放置していたら当然是正の対象になると思います。こんないい加減な取り組みだから、県庁のサ−ビス残業がなくならないのです。
 県民の労働条件の向上に責任を負う商工労働部から、総務部の人事当局に「基準、要綱、指針をまもって、まず県庁の職場からサ−ビス残業をなくそうじゃないか」という協議をすべきでありますが、部長どうですか。

〔答弁・中本豊治商工労働部長〕
 当然に、人事当局はこういった「要綱」なり「指針」なり「基準」なりをふまえて対処する立場にあります。われわれとしましてもやっていただけると理解しております。この件について、総務部長に何らかの形で、委員ご指摘の話は伝えたいと思います。

〔質問・中田議員〕
 よく協議して、いっしょに県庁の職場から不払い残業をなくしていただくよう強く求めておきます。