2003年12月議会での
中田晋介県議の一般質問
 日本共産党を代表して知事に質問いたします。
第一に、知事が自衛隊のイラク派兵に反対するよう求めて質問いたします。
イラクで日本人外交官二名が殺害され、まことに痛ましい取りかえしのつかない事態になりました。 米占領軍当局が繰り返しいっているように、今「イラク全土が戦争状態」で、米軍の大規模な掃討作戦や空爆がおこなわれています。どこでも攻撃やテロがおこなわれ、イラク特別措置法がいう非戦闘地域などはありません。このようなところに自衛隊を派兵することは、更に戦死者を出して悲劇の悪循環を生み出すことになり絶対に許されません。
 政府の自衛隊派兵計画にたいして、佐世保や大村の自衛隊員や家族の間に大きな不安が広がっています。佐世保の自衛隊員から、わが党の市会議員に「今度のイラク派遣は、アメリカが起こした戦争の後始末ではないか。そんなことに、なぜ命をかけなければならないのか納得できない」との訴えがありました。
 国民世論も派兵反対が多数です。12月1日の毎日新聞では、派遣反対が43%、イラク情勢の安定をまつべきが40%で、派遣反対と慎重派があわせて83%で、派遣賛成の9%を大きく上回っています。こうした国民の声を無視して自衛隊を送るべきではありません。
 もともとこの戦争は、ブッシュ大統領や小泉首相が「イラクが大量破壊兵器を隠し持っている、その危険から世界を守るための戦争だ」といってきましたが、米軍が必死で探してもそんな兵器は存在せず、この戦争にひとかけらの大義もないことが明かになっています。そのアメリカの無法な戦争につづく軍事占領を支援するために、自衛隊を送るのは、人道的な復興支援とは全く無縁な軍事行動であり国際貢献とはいえません。
 本当にイラクの復興を支援しようというのであれば、米英軍主導の占領支配をやめ国連中心の枠組みによる人道支援にきりかえること。そしてすみやかに主権をイラク国民に返還し、米英軍は撤退すること。こそ道理ある解決の道筋でありそのための努力を政府に要求すべきであります。そのうえで、日本は憲法に沿った非軍事的な支援を大いにおこなうべきであります。
県下から派遣された自衛隊員の戦死者を迎えることがないように、知事が、この危険なイラク派兵に反対するように求めます。知事の見解を質問いたします。

第二に、県が発注した公共事業の入札でおこなわれた談合によって
被った損害を、知事が早急に賠償請求をおこなうよう求めて質問いたします。
 入札における談合は、自由競争を妨害する市場経済における最も悪質なルール違反であります。
同時に高値による落札で発注者に損害を与える違法行為として、刑法、独占禁止法、建設業法で、懲役刑や罰金刑が課せられる犯罪行為であります。
 平成13年2月に施行された「公共工事の入札および契約の適正化の促進に関する法律」いわゆる「適正化法」ならびにこの法律に基づく閣議決定による「適正化指針」では、談合に対する厳正な対応として、企業が談合によって得た不当な利益に対して発注者が「損害賠償の請求」をするように求めています。
 これにそって本県では昨年四月以降、県が発注するすべての契約に「談合が発覚した場合、請負代金の10%の損害賠償を請求する」という「損害賠償の予約」という項目をもり込む契約内容の改正をおこないました。これで、談合があれば自動的に損害賠償の請求ができるようになっています。現在、ほとんどの県が、契約額の10%ないし20%を損害賠償として請求する「損害賠償の予約」を契約に盛り込むよう改定をおこなっています。
 しかし、それ以前の契約についても、入札で談合が行われれば、落札予定者がきめた高値による落札で、県が損害を被ったことは明らかであり、たとえ、契約に「損害賠償の予約」がなくても損害請求をすべきであります。各県とも、談合があきらかになった場合、「損害賠償の予約」がない契約についても損害賠償の請求に積極的にとりくんでいます。
 山形県は、談合による農業土木工事の契約429件について落札企業49社にたいし損害金5億2千万円を直接請求し、企業は払い込みを完了しております。神奈川県も、談合による河川改修工事で、落札企業1社にたいし、2438万円の損害賠償を直接請求し納付させています。大阪府は、府立高校体育館改築工事で、談合にかかわった入札参加企業10社に対して、1億4百万円を請求する損害賠償請求訴訟を、昨年3月に起こしています。
宮城県は、森林調査・測量業務にかかわる契約で、談合があきらかになった49件について、企業8社にたいし1億650万円を損害額として昨年11月に直接請求しました。これを企業側が拒否したため、本年3月に損害賠償請求の訴訟を起こしています。
 本県でも、土木部発注の県北の海洋土木工事と対馬の漁港防波堤工事で、大手ゼネコンなど25社が6年間にわたって談合を繰り返していたことが、昨年6月10日公正取引委員会の勧告によって明らかになりました。談合があったとされる入札は208件、契約額は291億円にのぼっています。この勧告は企業側がそれを応諾して課徴金も納め、企業が談合の事実を全面的に認めています。
 現在のように契約に「損害賠償の予約」があれば無条件で契約額の10%・29億円を請求できる状況です。このような大きな損害をとりかえし、一日も早く県民生活に役立てるべきであります。
 損害賠償の請求について知事の積極的な対応を求めて質問いたします。

第三に、諫早湾干拓事業を中断して、中・長期開門調査を行うよう求めて知事に質問いたします。 11月20日有明海ノリの初入札が行われましたが、昨年の45%で、この30年間で最低の出荷枚数になりました。本県南高における出荷枚数も平年の70%に低下しています。タイラギも諫早湾では死滅して11年連続の休漁を余儀なくされています。たまりかねた漁民は、亀井農林水産大臣の来崎に対し抗議行動を起こし「ノリやタイラギを返せ」と要求しました。
 諫早湾干拓工事の中止を求める「よみがえれ有明海訴訟」が佐賀地裁に提訴され、この一年間審理されてきました。訴えにくわわった原告は漁民165名、市民682名の合計847名にのぼっています。原告の一人、本県有明町の漁民橋本武さんは、40年間、有明海で漁船漁業を営んできた経験をふまえ、裁判で次のように証言しています。
 「以前は上げ潮下げ潮の早い潮を利用し、イカナゴ、イカ、エビ、タチ、グチ、マナガツオなどを、多い時にはひと網で1000キロ以上の漁獲をすることもありました。しかし、諫早湾干拓事業が始まった頃から潮の流れが弱まり、魚やカニが全くとれなくなってしまいました。海底にヘドロがたまり、網に真っ黒でドロドロのヘドロがつき汚れます。漁協が潜水夫を入れて調査した結果、漁場の海底が30センチから1メートルのヘドロで覆われていることが判明しました。そのヘドロは有明海独特の干潟の泥と違い、嫌な臭いがする今まで見たこともないものでした。私たちは諫早湾干拓工事から出る汚水がこのヘドロの原因と考えています。県や農水省の人に、漁場がヘドロで汚染されているのだから、それを分析してヘドロ発生の原因を調査するように求めましたが、まともな調査をしてくれません」と訴えています。
 裁判では、有明海異変の原因として「堤防締切りで潮流が弱くなった。広大な干潟がなくなり水質浄化の機能が失われた。そこへ干拓調整池から大量の汚濁水が放流され、汚濁物質を吸収していた浮泥が沈んでヘドロ化した。そのため赤潮や貧酸素水塊が多発した」と解明しています。これはだれが考えても納得できる科学的な解明であり、水門の開門調査を求めたノリ第三者委員会の見解とも一致するものであります。
 農水省や県があくまでも干拓工事の推進をいうのなら、これらをくつがえし「干拓事業と有明海異変は無関係だ」と証明する重大な責任があります。なかでもノリ第三者委員会が示した中・長期開門調査の実施は不可欠であります。工事を中断して中・長期開門調査を行うことを求めて知事に質問いたします。

 第四に、県立佐世保ろう学校の寄宿舎廃止と分校化を中止するように求めて質問いたします。
県教育委員会が佐世保市にある県立佐世保ろう学校を、2006年度に大村の県立ろう学校の分校にし、寄宿舎を廃止する計画を打ち出しました。同校には現在、幼稚部、小学部、中学部に21名が在籍し、寄宿舎では小学部3人、中学部5人が生活しています。
  県北のろう教育をになう唯一の教育施設の悪化であり、将来は同校の存続そのものが危うくされるとして、父母や市民の署名請願運動が起こりました。9月の佐世保市議会では「県の計画の見直しを求める請願」が、全会一致で採択されました。これにもとづいて、佐世保市議会からは、県にたいし「県立佐世保ろう学校の分校化・寄宿舎廃止計画の見直しを求める意見書」が提出され、「この計画が実施されると学校生活環境の悪化・二重生活・通学困難などの問題に直面します。
  さらに、近い将来、佐世保ろう学校そのものの存続も危ぶまれることになります。よって、県においては、子供たちの将来が現状より悪くなる『分校化・寄宿舎廃止』計画を再考するよう」に求めています。これに応えて、計画は撤回すべきであります。
  県教委は「生徒が減っていく施設に、今まで同様に税金を使う訳にはいかない」と効率的再編を理由にしているようでありますが、ろうあという障害を持つ子供たちの教育にかかわる問題を経済効率で論じるなど言語道断であります。この計画の目的は何か。年間いくら経費が減らせると見ているのか。計画の撤回を求めて質問いたします

第五に、西彼地域高規格道路について質問いたします。
 この道路は、長崎市から佐世保市までを西彼杵半島経由でつなぐ延長約70キロメートルの高規格道路で、現在の国道206号線に並行して、もう一本、一部有料・時速80キロの自動車専用道路をつくる計画であります。これによって現在1時間半の所要時間を1時間に短縮するというものです。 そのため、江上バイパスをつくり第二西海橋をかけ、長崎市内では浦上川の底をトンネルでくぐり、油木から滑石までを長いトンネルで抜けて佐世保に向かうというおおがかりな道路計画です。
いま国の道路建設公団の道路づくりが「財源はあるのか」「かけた費用ほどの効果はあるのか」と問題になっていますが、私は、この道路にも同じ検討が必要だと思います。
 ところが、長崎から佐世保までの70キロのうち事業費が明らかになっているのは13キロだけで、江上バイパスが316億円、小迎バイパスが240億円、長崎市内の大波止から梁川橋までが710億円で、これだけで1266億円にのぼります。残り57キロの建設費は不明であります。これを建設費がいちばん安い小迎バイパスの1キロ当たり40億円という数字で試算すると2280億円となり、全体建設費は3500億円となります。あの諫早湾干拓事業の1・4倍という巨額になります。
 このような大事業を、全体事業費の金額も不明なまますすめているのでしょうか。総事業費と経済効果や交通量の検討はどうなされているか質問いたします。
 以上、主質問といたします。よろしくお願いいたします。
12月9日本会議