2003年
6月県議会報告
六月県議会の概要
         「民主ながさき」2003年7月号
 改選後初の議会で、県政最大の課題である金権腐敗政治根絶のため、県革新懇から「国や県の公共事業受注企業からの政治献金の禁止をもとめる請願書」が、提出されました。三月県議会に提出したものが継続審査として棚上げされ、議会の改選で廃案にされたものです。汚職の再発を防止するためにいま一番必要なことであり、新しい県議会がきちんと応えるようつよく求めましたが、賛成は日本共産党だけ。自民、公明、民主、社民党は反対して不採択としました。これでは、本気で金権腐敗を根絶しようとする意思があるとは言えません。
  「長崎県地域別最低賃金制の引き上げを求める請願書」は、時給六百五円という全国最下位クラスで、生活保護基準以下の長崎の地域最低賃金の大幅引上げを求めるもので、「イラク特別措置法案に反対する請願」は、米軍のイラク占領支援のため憲法違反の自衛隊派兵を中止するよう求めるものでしたが、いずれも、自民、公明、民主党などの反対で不採択となり、切実な県民要求に背を向ける態度をとりました。
  中田晋介県議は、寄せられた生活相談にもとづいて「県営住宅を出る時、非常に高い修繕費を取られる」という問題をとりあげ改善を求めました。とくに高齢者所帯など所得の少ない入居者が退去する場合、高い修繕費負担を減額する制度をつくるようにもとめ、住宅課長は「早急に検討する」と約束しました。今後、改善されるまで追及していきます。   トップへ

市町村合併議案反対討論   
             03年7月11日県議会本会議

  第96号議案、第97号議案並びに第98号議案「市町の廃置分合について」の議案に反対の討論をおこないます。これは、壱岐4町が合併して壱岐市を、下五島1市5町が合併して五島市を、上五島5町が合併して新上五島町を、それぞれ設置しようとする議案であります。
  市町村の合併は、身近な役場も議会もなくなり、それまでの親密な地域の住民自治がなくなることであり、いわば、身近なふるさとを失うことにつながります。それだけに、合併でその町の将来がどうかわるのか、について正確な情報が、十分に住民に周知されたうえで、最後は住民投票によって、住民自身が決定することが不可欠だと考えます。
  合併で心配される問題はたくさんありますが、その一つとして、自治体職員が減少するということがあります。この点については、金子知事自身が2001年9月11日首相官邸で開かれた全国都道府県知事会議でつぎのように発言しています。
  「合併すると当然市町村の数が減りますから、市町村の職員が大幅に減少する事は、はっきりしています。合併する地域というのは離島を含めて、山村とかそういった地域が多いですから、市町村の役場が雇用の受け皿として大きな役割もあった。合併という事によって、今まで1000人の雇用があったのが、仮に3分の1になったとすると、700人の雇用減につながり、人口減につながっていく。それをどう穴埋めしていくかということを市町村に示していただきたい。合併はしたけれども、雇用の受け皿が減る。人口が減るということでは、一体何のために合併したのかということになります」とのべていますが、知事が求めた政府による穴埋め策は、いまだに示されていません。
  いずれの新市建設計画、新町建設計画をみても、職員を削減して人件費を大幅に削る計画で、これでは地域の雇用を大きく減らして人口減をまねきますし、支所の体制も維持できず、拡大した地域での行政サービスの低下は避けられません。
  また、それぞれの建設計画には財政計画が付けられていますが、合併特例でいまの地方交付税額が保証される10年間に限られ、それから年々削減されて財政が一番被害を受ける時期については、どの計画も示してなく、合併の将来を測るもっとも重要
な情報が欠如しています。さらに、三つの地域とも住民投票はおこなわれておりません。合併によって住民生活に重大な被害が予想されるなかで、住民自身による決定という民主的な手続きをかいており、この三地域での市町村合併に反対する立場から、3議案に反対いたします。   トップへ

 県教育長発言に関する質問  
             03年7月4日文教委員会  トップへ

【質問  中田県議】 
重大だと思います具体的な問題について教育長に質問いたします。
  さる5月27日付長崎新聞が「県立高校の統廃合について・2003年長崎の論点」という特集記事を組み、この中に木村教育長の発言があります。
  この特集は、現場の教師や父母、卒業生から出された「小規模校でなければできない教育があり、温かい教育は小規模校にこそ」という意見が見出しになっています。これに対して、木村教育長は「教育の場では生徒同士の切磋琢磨が大切で、切磋琢磨が能力を伸ばす。そのためには一学年4学級以上が必要。3学級以下の学校の統廃合は緊急の課題」とのべたうえで、小規模校を指して「競争になじめない生徒や不登校の生徒は全体から見れば少数だと思う。そういう生徒を温室のような学校に迎え入れて、生徒は育つか。そういう議論には乗りたくない。傷口をなめあうような雰囲気の学校であってはならない」という発言をしたと掲載されています。
  これは、小規模校に在籍する生徒や教職員の努力を否定し愚弄することにはなりませんか。いったいこの温室のような学校とか傷口をなめ合うような雰囲気とは何を指していっているんですか。
  この点について6月2日付の長崎新聞には、小規模校の一つである式見高校のPTA会長の投書がのりました。教育長の発言は「裏を返せば一学年3学級以下の小規模校を卒業した生徒や在学中の生徒は、切磋琢磨されていない、能力の伸びていない人間であるとのレッテルを張ることになる。彼らになんと失礼なレッテルをはるのだろうか」と批判しています。
 県下には、一学年3学級以下の小学校、中学校、高校がたくさんありますが、教育長はそんな学校は駄目だ。そこで学んだ生徒は駄目だ、と否定されるのですか。質問いたします。

【答弁  木村教育長】
 今の5月27日、長崎新聞のお話ですけれども、この件につきましては「高校改革を考える長崎県民の会」という所から、発言撤回という申し入れがありました。しかし、一方では文脈から私が訴えたいことをすくい取っていただいて、賛同といいますか、趣旨をくみ取っていただいた声も多くいただきました。私は学校というのは昨日のお話の中でも申し上げましたけれども、小規模校だから駄目だとか、大規模校でなければ駄目だとか一方的にいってる事ではありません。ただやっぱり、いま子供たちには自分でものを考え、自分で問題を解決し、そして自分で動いていく、まさに生きる力といいましょうか、それが求められているわけであります。
 そのためにもやっぱり、目標・目的をしっかり持った教育といいましょうか、学校で何を学ぶのか、何のために学ぶのかというモチベーションを高くして、学習活動を意識させていくことが、学校活動としては大変大事ではないか。そういうふうに考えているわけでございます。
  目標を立てるという事は、努力をうながしていくものでありますし、自分の資質をより高めていく動機付けになることであります。私は、三年間の学校生活を通して、大変だね、大変だね、とかそういう優しい言葉かけだとか、あるいは、同情的なおたがいの肩を組み合うような、そういうゆるい雰囲気のなかでばっかり生活していていいのか、と私は思っているわけでありまして、小規模校はそういう学校だと、断定、決め付け方をしていったわけではありませんけれども、新聞のほうが、今、中田議員から発言がありましたような、議論に乗りたくないとか、傷口を舐め合うような学校であってはならないとか、言葉が非常に強く出でいるのは私の不本意とする所でありまして、議論に乗りたくないというのも、そこに学んでいる子供たちが、例えばこの学校にきている子供たちは、不登校になっている子供たちがきて立ち直っている学校
だよとか、経済的に困っている子供たちがきている学校なんだよとかいう、その存続の理由になっているものが、在学している子供たちにどういう心理的なものを与えるのか。あるいは、これからその学校をめざそうという子供たちにどういう印象を与えるのか、そういう延長線で議論をするというものには乗りたくないという趣旨で申し上げたわけでありまして、私どもは学校を一歩でもまえに、一段でも高く目標を持たせたいと思っている、そういう学校活動をさせたいと思っているわけでありますから、そういう学校関係者の中からそういう言葉が出てくること自体が、私どもにとって非常に不本意でありますし、残念な事であって、そういう思いの一つ一つを申し上げたんですけれども、新聞のまとめ方として、傷口をなめ合うようなとか、議論に乗りたくないとか、温室のようなとか、なかなかその言葉だけ取り出して聞くと、ひじょうに耳につらいといいましょうか、そのような事になっているんだなあと思って、言葉を大事にしなければいけないという反省をしながら、私の思いはそういう思いなんだという事を、高校存続を求める「高校改革を考える長崎県民の会」の代表の方にも文書でもってお伝えをした所であります。

【中田県議】
 そういう本意でない、あるいはその言葉だけでは聞きづらい、あるいは反省するという発言なら、いさぎよく撤回したらどうですか。これは重要な特集で、長崎新聞編集委員の署名入りの記事なんですよ。いい加減な記事じゃないんです。そして議論はかみ合っているわけで、その中でこんな事をいって、自分でも聞きづら
い、不本意で反省があるというなら、いさぎよく撤回したらどうですか。
  自分で考える生きる力を持つという事は、それはなにも切磋琢磨ばっかりじゃないんですよ。競争ばっかりじゃないんです。少人数学級あるいは小規模校で、十分に行き届いたなかで指導し、行き届いた教育そしてまた仲間同士の励まし合い、助け合い、そういうものもいるんです。それが小規模校では大規模校に比べてうまくいって、こんないい例があるという議論を否定するために、教育長は先程の温室のような学校とか傷口をなめ合うような教育とかいって否定したわけですから、これは撤回すべきです。
  次に、この「競争になじめない生徒や不登校の生徒は全体から見れば少数だと思う。そういう生徒を温室のような学校に迎え入れて、生徒は育つか、傷口をなめ合うような教育でいいか」と、こう並んできているんですね。なにごとですか、
 これは。どのような生徒であろうともすべてを包んで育てるのがあなた方、県の教育の責任じゃないんですか。はじめから「なじめない子や不登校も出るだろうが、それは全体の中の少数だ」などという観点で教育にたずさわってもらっちゃ困るんです。そして一方では切磋琢磨の強調で、これは形を変えれば競争優先という事じゃないですか。
 ついてこれない子供は少数だろうから切り捨てる。こんな教育をやっちゃいけないと思います。
  私はこういう点からも発言の前段の部分も後段の部分も大問題だと思います。発言撤回すべきだと思いますが教育長の見解はどうですか。

【木村教育長】
 さきほども申し上げましたけれども、この文脈の中からですね、やはりそうあるべきだという声もずいぶんいただきました。むしろ撤回すべきという声は、高校改革を考える会の団体からのみでございました。少数というのは相対的な話で申し上げたんですけれども、小規模校でなければそういう子どもたちを受け入れられないというような事は決してありません。大規模校にだって、きちっとそういう子どもを受け入れて教育はできるわけで、教育というのは議員がいまおっしゃったように、優しさと厳しさを兼ね合わせながら、しっかり子供たちを育てていくというのが学校教育のあり方であろうと思います。他人に頼らない、自立型の人間が今求められている時であります。世の中は、何事におきましても競い合うということが、好むと好まざるとにかかわらず存在するわけでございます。その事を現実の問題としてしっかり認識させていく事が、学校教育の大事な部分だと思っております。
  切磋琢磨というのは、まさにそういう意味で大事な事ではないでしょうか。私はいま学校で何を学んだのかが問われている時でありますので、卒業する時にきちっと卒業できていく子どもを育てるための学校教育というものにしていくためには、それにふさわしい学習環境が大事だと思っております。そういう趣旨で申し上げたわけでありまして撤回するつもりもございませんので、ご理解いただきたいと思います。

【中田県議】
  ただいま教育長は、賛同の声もあるといわれましたが、それがどのくらいあるか分かりません。撤回を求める声が一つの団体だけのようにいっておりますが、6月4日発言の撤回を要求した要請書には、PTA会長、同窓会会長、長崎大学の教職員組合、登校拒否を考える親の会など多数が一緒になって、とても県の教育をまかせるべき人の発言だとは思えないということで、強く抗議をして撤回をもとめています。だれが考えても、ついてこれない子どもは少数じゃないか、などという発言はしてはならないと思います。撤回して、切磋琢磨だ、競争だというのではなく、おたがい子どたちも、教職員も、一緒になって励まし合い、ついてこれない子がたとえ少数でも、絶対においていかない教育を実行するように強く求めて質問を終わります。トップへ

県営住宅退去時の修繕補修費について 
              03年7月7日 土木委員会質問  トップへ

[質問・中田県議]
 県営住宅にかかわる退去補修費負担の問題について質問いたします。
  最近、賃貸住宅において、借りた人と貸した人の間で、入居者が退去する時の修繕補修、すなわち原状回復にかかわる費用を、貸し主と入居者の、どちらがどう負担するか、ということをめぐってトラブルが増えています。長崎県消費者センターへの不動産貸借をめぐる相談が、この3か月で71件で昨年の2倍以上に増えており、そのうち8割が敷金精算にかかわる相談、すなわち敷金から差し引かれる修繕補修費の問題です。
 新聞報道でも大きく取り上げられて、6月30日の朝日新聞は「3か月の入居で、畳やふすまの交換代を取られた」「損料という事で敷金が全く返還されない」という入居者の苦情があるのに、業者側は「損耗分の請求が慣習」という立場を取っている。この記事の見出しは「原則は家主負担なのに、国の指針とずれ。相談が急増」となっています。
 この国の指針というのは、この問題について平成10年3月に当時の建設省住宅局が示した「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」という基準のことであります。県下の住宅の貸し借りで、それとずれたことがおこなわれて相談が急増している、という状況であります。
  そこで、県は最近7月3日、建築課長名で県宅地建物取引業協会と不動産協会に対して「賃貸契約時に原状回復にかかる事項をきちんと示して説明すること。原状回復については、建設省が示した『原状回復をめぐるトラブルとガイドライン』を参考にすること」などを会員に周知をはかるよう求める文書を出しています。
  この文書をだす理由について「賃貸住宅の退去に際し、修繕補修などについて過大な経費の請求を受けているという苦情が、入居していたものから建築課にときどきよせられているので、こうした指導文書を出したい」となっています。
  そこで、質問いたしますが、不動産業界の賃貸借を指導監督している県建築課としては、退去時の原状回復について、そうした過大とおもわれる請求が見受けられるのか。県下では建設省が示した「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」とずれたことがなされているのか。建築課長に質問いたします。

[答弁・平野傳建築課長]
 県の宅建協会、全日本不動産協会長崎県本部の二つがございます。二団体に対して文書で指示を出しております。さきほど申されたとおりでございます。トラブルが最近非常に増えてきたということで、県のほうにもいろんなトラブルがあがって参りまして、調査しましたところ、昨年で27件ございました。ただそのなかで賃借の関係では2件でございます。  さきほどありました「ガイドライン」でございますが、これは平成10年の3月に出されておりまして、これにつきましては、講習会とかで業界に対してもいろいろ申し上げております。
 今回のトラブルについては、3日に課長名の文書を協会に持って行って、協会の方と協議をして参りました。そういう経過でございます。

[質問・中田県議]
 講習会などで業界にも「ガイドライン」を周知しているという事でございますが、この「ガイドライン」を見てみると、「民間賃貸住宅の退去時におけるトラブルの増加に対して、指針を求める声がつよいので、最近の裁判の判例あるいは取引の実態を考慮して、原状回復の費用負担のあり方について、妥当と考えられる基準をまとめた」ものとしています。これは、建設省住宅局と不動産適性取引推進機構が一体となって、つくった基準なんです。この「ガイドラインのポイント」として、その中心点を「物件が、通常の使用方法で使用されていれば、そのまま返還すればよい」というのが判例・学説の考え方であるから、その考え方に沿って基準をつくった、とのべています。具体的には「借りた人の通常の使用により生ずる損耗は、自然的な劣化損耗と通常の損耗だから、借りた人に原状回復の義務はなく、貸し主の負担」そのほかの「借りた人が故意に傷つけたり過失、注意義務違反など通常の使用を超えるような使用による損耗は、借りた人に原状回復の義務があり、借りた人の負担とする」ということが中心になっていて、結論的には、それぞれかべとか畳とか天井とか損耗の箇所が、どういう損耗の状況にあるかという事例別に、借りた人と貸した人の負担区分が、結論として別表にまとめられています。
   この「ガイドライン」の普及活用について求めた、日本共産党議員の衆議院建設委員会での「これでひとつトラブルをなくしてほしい」という質問に対し、建設省住宅局長は「各都道府県、業界団体などに配付しながら、あるいは公共団体が主催するセミナーなどを通じて普及啓発に努めているところでございます」と答弁しています。
 だから県の建築課としても講習会や業界との懇談協議をしていますが、賃貸住宅の原状回復のありかたは、このガイドラインを基準にすべきだという立場に建築課としてはたっているんですね。

[答弁・建築課長]
 はい、一般的な考え方としてはそうなっておりますが、賃貸借契約というのはいろんな形がございまして、一般的には宅建業界をとうさないで賃借人と大家さんがお互いに面々で契約する場合がございます。それともう一つは、仲介業者として宅建業者が入る場合、この二通りございまして、私どもの指導できるとこと申しますと、その宅建業者にたいする、重要物件の説明のとこに、そのへんにきちっと記載されているかどうか、というところを指導しているわけでございます。ほかにもいろんな民事の問題ございますので、その中身まで我々が全部はいっていくことは、いまのとこできませんので、宅建協会を指導しているところでございます。

質問・中田県議]
 ですから、個々の業者を県が指導するというのは難しいと思いますけど、おおづかみとしては社団法人長崎県宅地建物取引業協会、全日本不動産協会長崎県本部があり、それぞれ会員がいますから、そこにたいして建設省がつくった「ガイドライン」で対応するようにと、県としては講習会を開き、依頼文書を出し、協議をして指導している。
  では、そういう退去時の修繕補修費負担が、公営住宅、公団住宅、公社住宅ではどうなっているか、という問題がうまれます。私は、同じにすべきだと思うんですが、国がかかわる住都公団の公団住宅について、このガイドラインに沿ったものに改善せよという日本共産党議員の質問に対して、平成11年2月10日の衆議院建設委員会で、当時の関谷勝嗣建設大臣が「自然的な損傷などにおきましては公団負担とし、故意過失による損傷が原因であるならば借りている方に請求するということになっておるようでございます」と建設省の方針を答弁しています。
  また、住宅供給公社の賃貸住宅についても「担当者の全国会議を開いて、このガイドラインの考え方を示し、公社の原状回復の費用負担の現状をしらべて、その差を少しでも近付けて全体としてバランスの取れた運用になるよう指導していきたい」と答えています。これはガイドラインが平成10年にだされて、翌11年の質問ですから一挙にはいきませんが、この線で住宅供給公社の賃貸住宅の合わせていきたい、という答弁です。
  県営、市営、町営の公営住宅についてはどうなのか。平成11年11月18日の衆議院決算行政監視委員会で加藤卓二建設政務次官が答えています。「地方公共団体では、自然損耗部分を入居者の負担にしているところと事業者負担としているところとまちまちでございますので、その上でトラブルが起きていると思うのです。建設省としては、ガイドラインにそってぜひひとつそういうトラブルをなくしましょうということで、いまやっております。各公共団体、事業主になっているところにお話しするようにしたいと思います」と答弁しています。長崎県の県営住宅の運営も、このガイドラインにそった形で改善すべきだと思いますが、どのようにしているか、住宅課長に質問いたします。

[答弁・加藤邦彦住宅課長]
 公営住宅についても自然損耗分については、大家である県側が負担すべきではないかというご意見だと思います。はっきりしておきたいのは、このガイドラインは、さっき委員もいわれましたけれども、民間賃貸住宅の賃貸借契約についてのガイドラインでございまして、そのまま公営住宅に適用されるものではないんではないかと考えております。なぜ、民間の賃貸住宅で自然損耗分について貸し主側の責任でやらなければならないかという事につきましては、通常賃貸住宅市場のなかで決められた契約家賃の中に、原状回復にかかわる部分と損耗分の回復にかかる分についても賃料として大家が取っていることになりますので、そういった場合については当然原状回復にかかる分について大家が負担すべきだという考え方が成り立ちます。
  公営住宅の場合につきましては、応能応益家賃という事でございまして、入居者の能力に応じて負担いただこうということで、考え方が違いますので、いちがいに民間賃貸住宅の考え方を公営住宅に適用するのは、やや困難だと考えてございます。

[質問・中田県議]
 だから、さきほどわざわざ国会の建設大臣、建設政務次官、そういう方々の答弁を紹介したんですよ。公団住宅についてはガイドラインを実行する。国の管理下でありますからすぐする。公社住宅についても、担当者の全国会議を開いてこれに合わせるようにしていきたい。県営、市営の公営住宅についても、自然損耗を入居者の負担にしているところと、していないところがある。長崎県は自然損耗を入居者負担にしとるんですが、ガイドラインではこれはやめようとなっている。建設省としてはガイドラインにそってトラブルをなくしましょうと、やっている。各公共団体にも話をするようにしたい、となっとるわけですから、これは県としてもガイドラインをくんでやるべきです。課長はこれまで土木委員会の答弁で、これは民間賃貸の基準だとばかりいっておられますけれども、国会では、公団住宅も公社住宅も、地方公共団体が持つ公共住宅についても、この線でまとまってほしいと、これは判例にもとづき学説にもとづき合理的な考え方でつくられた指針ですからね。
  長崎県の場合どうやっているかという事で、原状回復の負担区分は「長崎県営住宅修繕要領」によっていますが、これをもらってみますと、昭和38年10月1日の設定となっていました。40年前につくられたもので、5年前につくられた建設省のガイドラインにそった改善はないようであります。
  ですからどういうことがおこるかというと、実際にこの問題でわたくしも何件か相談を受けましたが、退去時の修繕補修の負担が過重に思いましたし、ガイドラインにも沿っていません。
  たとえば、年金で一人暮らしで身体に障害を持った高齢の女性が、県営住宅を引っ越そうとした事例で、修繕補修費が20万円を超える請求で、引っ越しをあきらめかけた、引っ越したいんだけど引っ越せない、という相談がありました。
  その請求を見てみると、畳替え16枚で7万3800円、これは自然損耗ですよ。お年寄りの一人暮らしでほんとうにきれいにくらしてきたもので、ガイドラインでは家主の負担となっています。ふすまのはりかえ17枚で3万3000円、これも自然損耗ですよ。塗装代が4万8360円、長年暮らせば日の光や風が当たって塗装がはげるのは当たり前じゃありませんか。清掃代3万2000円の請求ですが、ガイドラインでは貸し主が負担すべき自然損耗にかかわるものが相当はいっています。これはガイドラインにそって改めるべきではありませんか。建設大臣までこれでやろうといっとる方向に改善すべきではありませんか。

[答弁・住宅課長]
 さきほど県がつくりました修繕の要領につきましてのお話がありましたが、そのなかでさだめておりますのは、県がやる部分、入居者がやる部分と分けて考えてございまして、県がやる分につきましては構造上の主要な部分とかは県がやると、消耗品的なもの例えば電球が切れたからといって、管理者のほうでかえる性格のものではないと考えられてございます。畳とかふすまにつきましては、人の肌が直接触れる部分で、いろんなものをこぼしたりとかございますので、そいったところについてはできる限り入居者のご負担でやっていただけないかという考え方にたってございます。極めて肌が触れるもので消耗品的なものを入居者のご負担でお願いする考え方でございます。ある高齢者の方が退去する時20万円という話がございましたが、ご参考までに平成14年度の退去者の修繕の負担額は、平均で13万1千円でございます。

質問・中田県議]
 私が聞いたのでは、17万円という人、この20万円を超える人、最高はいくらかと聞いたら30万円という話もありました。それをくわしく見ますとガイドラインでは、判例・学説、建設省の標準契約などの考え方からして、自然に損傷していくものについては入居者に負担させるのは酷だ、ということで結論として、畳の表がえとかふすまの張り替えとか、つぎの入居者を迎えるためのグレードアップについては家主が負担すべきだ、と民間を指導する基準ができているんですからね。それになぜ県がしたがわないのか。公団住宅でも公社住宅でもそれやろうといっとるのに。
  いまさら課長に、私からいうのは釈迦に説法だと思いますが、公営住宅のの目的は社会福祉なんですよ。公営住宅法第一条で「国および地方公共団体が協力して、住宅を整備し、住宅に困窮する低額所得者に対して低廉な家賃で賃貸し、国民生活の安定と社会福祉の増進に寄与する」と明示しています。だから建設費の半額は国が補助をするんです。だから入居者に一番負担を軽くしなければいかんのじゃないですか。低廉な家賃でと書いてある。家賃のなかには修繕費も入るんです。長崎県県営住宅条例第三条でも「住宅に困窮する低額所得者に低廉な家賃で入居させるため、県営住宅を設置する」とかかげています。できる限り安い負担で住宅を提供する社会福祉だ、というのであれば、この、原状回復の扱いについても、県が民間にさきがけて政府が示したガイドラインに沿って改善し、入居者の負担の軽減に努めるべきではないでしょうか。

[答弁・住宅課長]
 さきほど判例の話がございしたけれども、これは民間の家賃の決定の仕組みの中で導かれるものであるという事は申し上げておきたいと思います。それから公営住宅は、そもそも福祉的な施策ではないか、というお話は、おっしゃられるとおりでございます。低廉な家賃で入居していただいていますが、さらに病気などの特別の事情がある場合には、家賃を減免するという規定で、本当に支払能力のない方にたいしては減免をするという規定をもうけてございます。

[質問・中田県議]
 しかしですね、この県営住宅に入れる人は所得の上限が決まっとるんですよ。月額20万円ぐらいですよ。それを越すと駄目なんですね。だからそもそも入居者全員に低廉な家賃ではいってもらおうという制度です。そこが、民間でも取らないような、公団、公社住宅でも取らないようにしようという負担を、いちばん最後まで県が取ろうというのはよくない。これはぜひ今後検討して、県の建築課は、このガイドラインで民間賃貸の業界を指導する、住宅課も同じ立場にそろえて、入居者の負担を減らすことを検討されるよう強く求めておきます。
  最後に、いま「病気その他特別の事情があると認められる場合には、減額する制度がある」と課長がいわれましたが、そこなんですね。県営住宅については、公営住宅法にもとづいて家賃、敷金、収入超過者の割増し賃料について、知事が特別の事情があると認めるものについては減額または徴収を猶予する制度があります。こういう制度が公営住宅法にも県の県営住宅条例にもあります。また県営住宅に付属する駐車場の使用料についても、県営住宅条例で減額または徴収を猶予できることが定めてあります。
  ところが、この修繕補修費については、そのような制度がないんです。そのため、どんなに困窮している人でも、退去しようとすれば県の見積もりで全額請求されます。げんに、先程、紹介した年金で一人暮らしの高齢の女性は、夫がなくなって収入が減ってから県に申請して家賃は半額に減額してもらっているのに、この原状回復の修繕費は、消費税込みで20万1768円全額はらえ、といわれて払いきれない。引っ越しができない。私も相談を受けて、そんなとんでもない話があるだろうか。家賃を減額しているんなら、補修費も減額していいじゃないか、住宅課と交渉しましたが、してあげたくても、そういう制度が無いからできないといわれました。これはおかしい話です。
  極端な場合、生活保護で家賃が免除されている老人世帯が、病気で倒れて老人ホームにはいる時でも、20万円でも30万円でもかかっただけ補修費が請求されて、まけられないという。これは、早急に改善してもらいたい。病気そのほか特別の事情がある場合には、家賃や敷金、超過の賃料あるいは駐車場使用料まで減額できるんですから、同じように修繕補修費についても減額できるよう改善すべきではありませんか。そうしないと、所得超過者や高額所得者の割増賃料に減額の制度があって、所得の無くなったものの修繕補修費に減額の制度が無い、というのはあまりにも均衡を欠いています。入居時に敷金を減額してもらったが、退去時にその敷金から支払う修繕補修費について減額されないというおかしな話になります。この点は早急に減額の制度をつくるよう改善を求めますが、どうでしょうか。

[答弁・住宅課長]
 ただいまご指摘のとおり、生活に困窮されている方にたいして、高額な補修費を請求するのはたしかにいかがなものかという感じがいたしております。これはまあ運用上やっておりますけれども、入居期間が極めて短くて汚れていない場合、現場でみて修理が不要とやっておりますので、取扱上明確にするということと、いまおっしゃられました特に病気など特別の事情のある方にたいして、今後どういうことを考慮していくかということにつきましては、他県の例も参考にして検討してまいりたいと考えています。

[質問・中田県議]
 私のお願いは二つあるんです。ひとつは県営住宅の退去時の修繕補修費については、ぜひ、建設省住宅局がつくって、これでいくと建設大臣も政務次官も住宅局長もいっているこのガイドラインの線で、県の運用を改善してほしい、という点で、これは今後検討を求めるとして、ふたつめの修繕補修費についてだけ減額も徴収猶予の制度もない点は、いま運用上若干のてごころという話もあるんですが、実際は、私がもうしあげた例でも、減額したくてもできないというのが住宅課の現在の対応です。特別の事情があるものについては修繕補修費についても減額の制度を早急につくるようにお願いして質問を終わります。トップへ
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県営住宅撤去時の修繕費問題の質疑