第三者委員会の見解どおり堤防水門の開門調査を

[質問・中田議員]
 質問のために資料(後日掲載)を用意しましたので配付させていただきます。
 知事は「今年はノリがとれている。なぜとれたのかをまず検証すべきだ」として、農林水産省が提案してきた干拓堤防の水門を開けた調査に反対していますが、これは、有明海の現状についてあまりにも視野がせまい短絡的な考えであります。
  この点については、すでに昨年12月19日農林水産省のノリ不作等対策調査の第三者委員会が「諫早湾干拓地排水門の開門調査に関する見解」を発表した際、清水誠委員長が「見解をまとめるにあたって」というコメントのなかで次のように指摘しています。
「今期のノリ作は順調に始まったとみられるが、11月末から熊本沖で珪藻赤潮による色落ちの被害が発生、他県の漁場にも被害が生じた。さいわい昨年のような全域での大被害にはいたらなかった。今年のノリ生産が順調に推移することを期待するが、赤潮は毎年発生し、色落ちも規模はともかく毎年生じている。有明海の環境はそう容易には回復しないことを銘記し、用心を怠ることはできない」と警告しています。
  県は今年のノリのできひとつで、開門調査の必要がないほど有明海の漁場環境がよくなっていると考えているのですか。


[答弁・国広実諫早湾干拓担当参事監]
 私どもは、今年有明海でノリがとれたのは何によるものであるか、キチンと科学的に説明してくださいといっております。

[質問・中田議員]
 有明海の漁業被害はノリだけではありません。だから農水省の第三者委員会も「ノリ不作等対策調査検討委員会」と等がはいっています。諫早湾で毎年10億円とれていたタイラギがまったくとれなくなって9年になります。アサリも死滅をくりかえし年に2億6千万円の被害が出ました。
  お配りした資料は、左は農水省の海面漁業統計調査によって有明海4県の漁業生産量と生産額をグラフにしたものです。右の表は長崎大学が雲仙噴火にかかわる研究をまとめた「火山」という本にのっている島原市漁協の漁獲量のグラフです。いずれも、干拓堤防の着工と閉切り以降急激に減少して干拓事業の影響が歴然としています。漁民の皆さんは干拓が始まってから魚が取れなくなったといってきましたが、それがハッキリと表れているではありませんか。島原では普賢岳噴火でへったあと持ち直していた漁獲量が、堤防閉め切りでまた減っていく状況までわかります。
  このような広範な漁業被害の原因を明らかにし、対策をとるために必要とされている堤防水門の開門調査は当然おこなうべきではありませんか。


[答弁・国広参事監]
 このように定性的な形で堤防の着工、閉め切りという形で書かれていますが、このほかにもいろいろな問題が指摘されております。例えば筑後大堰ができましたし、ノリ養殖の酸処理もやられています。そのようないろいろな要因がありますから、これだけで諫早湾干拓の影響とは結論づけられないと思います。開門調査については県はいろいろな疑問を投げかけておりますから。そういう具体的なものがきちんと整理されない状況では同意できません。

[質問・中田議員]
 農水省の第三者委員会が出した「開門調査に関する見解」は「諫早湾干拓事業は重要な環境要因である流動及び負荷を変化させ、諫早湾のみならず有明海全体の環境に影響をあたえていると想定される」として具体的に次のように指摘しています。「第一に、干拓地の干潟がもつ水質浄化機能が堤防閉め切りによって失われた。
  第二に、流動の変化すなわち潮位差の減少、流速の減少が起こったのは堤防閉め切りが  主な原因である。
  第三に、赤潮の発生が、堤防閉め切り後、統計的に有意に増加している。統計上関係が  あるということです。
  第四に、堤防閉め切りで流動すなわち潮の流れが低下したことで、貧酸素水塊が生じた  可能性がある。
  第五に、潮の流れが遅くなったため、調整池から排出される浮泥が沈下して海底の底質  が変化した」。 さらに、こうした「干拓による貧酸素水塊や赤潮の発生、底質の変化が、タイラギやア  サリ死滅の原因となった可能性が大きい」とのべて、タイラギ死滅の原因をはじめて明確に指摘しています。
 この委員会は農水省が委嘱した専門家が、約10か月かけて国や各県、各研究機関の調査資料を全部検討して、これだけの点で、諫早湾干拓事業が有明海の環境悪化の原因になっていると明確に示しました。そのうえで堤防水門の開門調査が必要だといっています。県が開門調査に反対するのなら、これらの5点について、そうではないという根拠を示さなければなりません。県はまったく示しきらないじゃありませんか。 この「開門調査の見解」は、干拓事業が有明海の環境に影響をあたえているというこれだけの根拠を示し、その検証と対策確立のため開門調査が必要だとして「まず第一段階として2か月ていど、次の段階として半年程度、それらの結果をふまえて数年の開門調査がのぞまれる。開門はできるだけ長く、きるだけ大きいことがのぞましく、毎日の水位変動を大きくし、できる干潟面積を増やすことが望ましい」としています。
 国会で農水大臣は委員会の結論は尊重し、ただちに実行するとくりかえし表明しています。県も協力してただちに開門調査を行うようつよく要求いたします。
2002年3月14日県議会農林水産委員会
中田晋介議員の諫早湾干拓についての質問