西村県議の文教委員会での質疑
2001・9・27
1.指導力不足教員の問題について

(質問)西村委員 
  指導力不足教員の問題についてお尋ねします。
 国会でも大きな論議を呼びましたが、教育三法案の、私どもは改悪と考えますが、改正がされました。その中の一つが「地方教育行政の組織及び運営に関する法律」の一部を変えて、本人の同意がなくても、都道府県委員会が「分限免職に至るほどではないが、児童または生徒に対する指導が不適切」「研修等必要な措置が講じられたとしても効果が認められない」、この2つの要件を満たすと判断した場合に教諭の身分を免職して、引き続き別のところに転職させることができるというふうになったんですね。
 国会の論議の中で、例をあげて「不適切教員か」との質問がされています。「自信過剰、偏屈、愛情不足、これはどうか」の質問に「該当しません」と。「セクハラまがいの言動、体罰まがいの行為は」の質問には、「公務員としての適格性、服務規則にかかわる問題で、これは分限処分だとか懲戒免職の対象になります」と。「自己を語れず、夢や希望も語れない、こういう教員はどうか」といたっら「内心にとまている、あるいは内面にとまっている限り、そのこと自体が措置の対象にはできない」ということです。「体調を崩して休暇、休業をとっている」これも「対象になりません」というように議論がこもごもされているんですが、不適格教員については現行法で十分対応できる。不適切で指導力不足の教員については教育現場や父母や児童生徒の中で分かるわけですから、そういう人については指導や研修を必要に応じて行いながら、現場復帰をしてもらうことができる。だったら、なぜ、わざわざ法律をつくったのかという問題を含んでいると思いますが、文部科学省でも「それなら、どういうものが基準になるのか」との質問に「さまざまな場合が想定されるので、具体的な基準を示すことは困難だ」と、だから「その要件に該当するかどうかは各都道府県委員会の判断に委ねる」ということですから、判断の基準は長崎県と佐賀県、また熊本県などそれぞれの都道府県で判断するということになっている。そういう意味では、この問題は、教員を志し教員になった先生方が真面目に頑張っていても、現在の複雑な教育環境のなかでちょっとしたつまずきやプレッシャーのなかで自信喪失したりした先生を教育現場から排除してしいかねない。そういうことをはらんでいる非常に危険な法律ができたと思うんですよね。
 ですから、この法律の運用については、長崎県では適切に運用していただきたいということを申し添えたいのですが、どの様な基準をつくろうとしているのか。私は基準そのものはつくり必要がないと思いますがいかがですか。

(答弁)池田教職員課長
  まず、今、こちらで提言をいただいている部分につきましては、要するに再研修を行なうことで、子どもたちにとっていい先生に、そういうことで現場に戻していくという基本的な考え方で行なうということでございます。ただ、そういう研修を行なっても効果がない教員に対して、じゃあ分限処分をするとか、やめさせてしまうのかということではなくて、子どもに対しては指導する上で不安があるけれども、一般の行政事務行なうという点では能力があるというふうに判断された教員についてはやめさせずに、逆にそういう行政分野で能力を活用することで、本人のためになる制度ではないかというふうに考えております。ですから、その際の基本的な基準等につきましては、今後検討してまいりますけれども、その時に恣意的に運用をするということではなくて、やはり委員会等をつくることで客観的に判断をしていくという面では、運用に十分注意をしてまいりたいというふうに考えております。

(質問)西村委員 
  「『指導力不足教員』対策に関する提言」を読ませていただきました。非常に多面的に研究されて、教員がおかれている現状などもよく分析されていると思うところも非常にありました。
 その中で、「地域や家庭の教育力の低下が指摘され、その結果として学校に対する要求も相対的に複雑多様化してきており、このことが、教員に大きな心理的負担を与えているという見方もある」ということで、教員が自分の指導力に自信を自信を失うなどの要因に、社会的な背景を十分考慮しなければいけないと提言では言っています。この事をぜひ重く受けとめて頂きたい。また、4ページには「学校が組織として機能し、教員が孤立しないための校内の支援体制」が書かれていますが、独りぼっちの先生をつくらないことが大事だと思います。自分の教育現場のさまざまな問題や授業が成立しないなどの事例を自分の指導力不足のためにこうなっている、自分は教員としてダメなんだとたった一人で抱え込んで解決できず、そのことが指導力不足教員だと周りから見られるような状況も生まれているんですよね。だから、そういう先生が一人で解決するのではなく、教員集団のなかで問題を一緒に解決していく体制をいまつくっていくことが大事だと思うんですね。それが今崩れつつあると言われています。今後、再任用や、非常勤、臨時の先生などが増え、正規の先生が少なくなってきているなかではなおさらそういう問題は深刻になるのではないかと思います。ですから、やはり、教員集団の中で自信を取り戻させていくことに重点を置いた教育行政を行なっていただきたいのですが、配慮されているのでしょうか。

(答弁)池田教職員課長
 一番最初にも申し上げましたように、指導力に関し支援を要する教員等につきましては、これはもう基本的にこういう教員に限らず、やはり一般の教員がお互いに協力し合って、或いは校長のリーダーシップのもと、教頭、あるいは各主任等がそれぞれの役割を果たし、その中で連携をして、組織としての力をあげていくということが一番大切なことだと思います。そういう考え方につきましては、管理職の研修等の中でも、管理職員に対して話をしていますし、一般の教員についても、研修の機会を見つけてそういう話をさせていただいています。
 基本的にこういう教員を出さない、個人の責任だけにはせずに、やはりフォローしていくと言いますか、それはおおぜいという形で、職場内研修という形で先輩が指導する、あるいは管理職がサポートしてやるといったものが大切だと思いますので、そういう事はきちんと認識した上で、研修等の場面においても指導をしていきたいというふうに考えております。

(質問)西村委員 
 この提言では、かなり校長の管理職としての資質の向上、強力なリーダーシップということで、管理職の責任が非常に強調されているんですね。そこで、何といいますか、校長の気に入らない人が不適切な教員にされることがあってはならないと思うんですよね。あるといっているんではないですよ、あってはならないと心配していっているんですから。ですから、そういう事が起こらないようにする上で、校長や管理職の責任じゃなく、教職員全体、父母や子どもたちの評価など、そういうもの全体が判断の基準になることが大事ではないかと申し上げたいんですよ。是非、そういう運用をしていただきたいのですが、その点はどうなんですか。

(答弁)池田教職員課長 
 判断にあたりましては、恣意的なものが働かないようにきちんと委員会を、これは医療関係者とか教育関係者等も含め、または行政の内部の者を含めた委員会等を構成して、その中で判断をしてまいりますし、或いは具体的に事例については教育委員会の方からも出向いて、実際に現場を見る、そういったこともやっていきたいというふうに、そういう意味で公正に厳正に判断をしていきたいと考えております。

(質問)西村委員  
 さまざまな研修を試みても、指導力を取り戻せない、現場に戻る状況にならないという教員は免職して、転職になるんですよね。その時、先ほどの答弁が気になってるのですが、ここでは分限処分にはあたらない指導力不足の先生ということですよね。じゃあ、転職をというとき、定数の枠内でということなんですか。そうなると、定数のあきがない場合、どうなるんですか。身分そのものを奪われた上に、明日の糧まで奪われるという形になりかねないわけですから、これはもうその人の人生そのものにかかわる大事な問題だと思いますが、それはどうなんですか。

(答弁)池田教職員課長  
 基本的に、職務替えについては、免職をして、その中から選考して採用するということではなく、免職から採用までが一体のものという考え方を基本的に国はとっているようですし、私どももそういう認識をいたしております。
 その中で、先ほどの定数の話とか出ましたが、これは定数がないからやめさせるというようなことはありません。やはりその辺は運用といいますか、十分に考えながらやっていくということになろうかと思います。

(質問)西村委員 
 わかりました。ぜひ、不適切が不適格のレッテルに変えられて免職にされることのないよう、慎重にこの問題についての運用をしていただきたいと、もう一度希望を申し添えておきたいと思います。

2.30人学級の実施について

(質問)西村委員 
 先ほど再任用の論議で、再任用の希望が78人で、新規採用は300人ということですが、本来新規採用の先生を378人雇えたということなんですね。結局、定数内で再任用をすれば、だんだん新規採用が窮屈になって来てしまいます。
 そこで、今度法律が改正され、いま国の基準では40人規模の学級数ですが、都道府県が必要と認めたら、それを下回る学級編成をしても構わないということになったと思うんですが。それをうけて、新聞報道でもありましたが、山形県は全国に先駆けて県内全ての公立小・中学校で30人学級を県単独で実施する方向を示しました。高橋知事は、繰り返し学習して一定の力をつけさせるんだ、そして県内の雇用の場を増やすねらいもあると言っているんだそうです。また、秋田県や山形県でも今年から小学校低学年について既に実施していますが、長崎県でも思い切って、小学校についてとか、小・中両方とか教育について思い切った手だてをしてはと思いますが。
 国立教育研究所が7月に、研究結果を発表しています。それによると、少人数の方が非常に学習効果が上がるという結果がでていますよね。公立の小・中を対象に、算数、数学、理科の問題の正解がどれだけあるか、学習状況がどうかという調査ですが、20人以下で学んでいる子どもは、算数や理科の問題で正答の比率が非常に高い。また学級規模が小さいほど少ないほど「勉強の進み方が早くて困る」「先生の説明が分からない」という声はなく、「先生から声をかけられて黒板で発表できた」といような、非常に積極的な面が生かされているという報告ですが、いま、学力の危機といわれる中で、本当に教育効果を上げていく上では、少人数教育が大事だし、小学校低学年からそうしたクラス編成をする事が教育効果があるのではないかと思いますが、教育委員会のご認識をお尋ねします。

(答弁)池田教職員課長 
 公立学校の法で定められた学級数は、これは国の基準は40人で現行どおりでありますが、特例的な基準を定めることで各県でやれるということになります。ただ、その場合に国庫補助はあくまでも国庫の基準に基づく40人体制でおこなった場合の数しかまいりませんので、編成基準を30人とかとした場合には、そこで必要となる教員についてはすべて、交付税措置もございませんので、自主財源で手当てをしなければいけないということになります。
 山形県のお話が出てまいりましたが、私も新聞で「全小・中学校で30人学級」という見出しを見まして、非常にびっくりいたしました。これは一つは先ほどお話をした相当かかるんだろうというふうな印象を持っておりますので、その辺をどの様に捻出するのかなというふうな疑問がございましたが、その後、聞くところによりますと、すべての学年を一律に30人学級にするのではなくて、学校の状況等によって学習集団を30人以下にするというような少人数授業と、これは定数加配で行なうわけですが、そういうものも含めて検討しているいうことでございます。ちょっと新聞報道が違っているのかなという感じを受けております。
 それから、国立研究所の調査につきましては、 −中略− 40人規模から21人規模まで、差はほとんど見受けられないない、ただ、20人以下の県については比較的いい点数をとっているというような評価が出されているようでございます。ただ、そういう結論が出ているので、現在、文部科学省が進めている基礎学力の向上ときめ細かな指導実施するための基本教科、小学校で国語、算数、理科、あるいは中学校で英語、数学、理科等で20人程度の少人数指導を可能としております今回第7次定数改善計画の推進が、学力向上に望ましい態度形成をされるものというふうな形で結ばれております。
 本県で、もし小・中学校全学年で30人学級を実施した場合につきましては、おおよそ定数が1300人、財源的には110
億円の一般財源を県単でつぎ込むことになりますので、実質的にはかなり難しい事由であるというふうに認識をいたしています。
 現在、私どもの方では、国の方針に沿いまして、国から少人数等の授業を行なうための加配措置を受けておりまして、現在351人を採用しており、それぞれの学校で少人数授業やチーム・ティーチングなどでの少人数授業による基礎学力の向上を進めていきたいと考えています。                                      

(質問)西村委員  
 今、加配による少人数授業の話が有りましたが、その教育の効果の結果はどうなんですか。

(答弁)池田教職員課長
  − 略 − 1名教員を入れますので、効果は上がるものと、上がっているものというふうに認識しています。

(質問)西村委員 
 先ほど30人学級にしたら、110億円の予算が新たに必要といわれましたが、それは加配の先生は除いて計算されたんですか。

(答弁)池田教職員課長  
 110億という数字は、40人学級を30人学級にした場合必要となる教員数に基づき財源計算をしたもので、すでに加配の教員については、裏負担として一般財源が半分入っていますので、実負担はこれから減ることになります。

(答弁)西村委員  
 先ほど、今年度から始まった加配の先生による少人数授業の効果は十分上がっているはずとの答弁がありましたし、その結果は今後明らかになると思いますが、それを踏まえながらぜひ、今後知事にも求めていきたいと思いますが、山形県の知事は、「お金がかかるでしょう」との記者の質問に「橋の1、2本はかからないかもしれない」と答えておられます。−中略− いま、これほど学力の危機がいわれるなかで、長崎県もぜひ30人学級の実現を検討していただき、教育長から強く知事に求めていただきたいと思いますが。

(答弁)木村教育長
  本県の小学校、中学校の子どもの実態を申し上げますと、平均しますと小学校は25人くらい、中学校は31名ぐらいで1学級平均編成をしています。これは、平均で申し上げたものでありますが。
 今、350校余りの小学校、中学校に加配をして、習熟度別、あるいは少人数学級という形で授業を実施していますが、そのことは、それぞれに効果、期待すべきものがあったと思いますが、今後も私どもその加配措置を積極的に活用しながら、できるだけそういうきめ細かな授業ができる体制づくりという形で取り組んでまいりたいと思います。

(質問)西村委員  
 加配で既に平均して小規模の形で運営できているということであれば、あと、わずかな予算を注ぎ込めば、
30人学級が実現できるんじゃないかと思いますので、ぜひ頑張っていただきたい。