2001年6月県議会
西村貴恵子県議の一般質問
 日本共産党の西村きえ子でございます。 私は党と女性のみなさんを代表して質問をいたします。
 はじめに、県民の福祉とくらし、医療について、四点質問を致します。
 まず一点目は介護保険料、利用料が払えない人への減免制度の実施についておたずねいたします。
  私は昨年六月定例会の一般質問で、介護保険制度がスタートし、「利用料が高すぎてサービスを削ったり、介護サービスをあきらめるなど深刻な事態が起こっている」事実を示し、知事に利用料や十月からはじまる保険料の減免制度を国に要望するよう求めました。知事は「自分も同じ心配している。実態調査をし、情報を集めて吟味し、問題があれば強力に国に働きかける」ということを約束されました。
 昨年、県が最初に行った県内四十の保険者への「介護保険実態調査」では、保険料について一番多かったのは「低所得者・無収入者への免除措置等、個々の家庭の経済状況を考慮した保険料にしてほしい」ということを保険者全体の七〇%が求めていました。利用料負担でも一番多かったのは「介護保険で負担が増えた」という回答で、その次が「従来無料で受けられていたサービスが利用料負担のために受けられなくなるんじゃないか」という心配の声が七三%に上っていました。
 今年三月、県は「介護サービス利用者意識調査及び介護支援専門員実態調査」報告書をまとめました。それによると、在宅サービス利用者で「利用料の一割負担」が「適当」は28%に対し、「軽減してほしい」、「無くしてほしい」が49%と一・七倍にもなっています。施設サービス利用者で介護老人保険老施設や介護療養型施設の入所者は利用料を「軽くしてほしい」「無くしてほしい」が五四%、五五%と五割を超えています。
 介護支援専門員へのアンケートでも、「多く寄せられた利用者からの意見、苦情」では、「利用者負担」が一位で五三・二%、「保険料」が三位で四三・五%となっており、いずれの調査結果からも利用料や保険料が利用者にとって大きな負担になっていることを示しています。
 知事、この県民の声にどう答えられるのですか。減免制度が緊急に求められていると思いますが、知事のご答弁をお願いいたします。
 また、十月からの保険料の全額徴収は、こうした中、やめるべこと思いますが、県としても、国にそのことを求める気持ちはないかお尋ねします。
 二点目は国保加入者からの保険証取り上げの中止について質問いたします。
  健康保険証は県民の命の綱です。国民健康保険証を取り上げられ、病気になっても病院に行けず、命を失うような人を決して長崎県から出してはなりません。
 昨年四月に、「国民健康保険法」が改悪され、保険料を一年以上滞納した者から保険証を取り上げ、資格証明書の発行が義務づけられました。また、1年以内滞納でも、納付相談に来ない者や分割納入を実行しない者からも保険証を取り上げ、資格証明書の発行ができるようになりました。 
  県民の生活は長引く不況で本当に深刻にです。長崎県の昨年六月一日現在の国保税滞納は、四万五千九百七十九世帯で、国保加入世帯の十四・七%にも上っています。短期保険証発行は一万四千百九十五世帯です。これらの世帯の方々が、おそらく保険証取り上げの対象となります。それだけに、どうなるのかと大きな不安が広がっています。
 国保税を滞納されている方は、それでなくても肩身の狭い思いをしています。払いたくても払えず、かといって納税相談に出てくる勇気がない人たちが沢山おられます。人の命にかかわる大事な仕事をしている国保の担当はぜひこの事を理解する必要があると思います。
 国保加入者の状況を良く見極め、各市町村が、払いたくても払えない保険税滞納者から機械的に保険証を取り上げ、資格証明書を発行をする事がないよう、きめ細かな県の指導が求められていると思いますがいかがですか。
 
 三つ目は乳幼児・障害者・母子家庭の医療費助成についてお尋ねいたします。
  この四月から、県は乳幼児・障害者・母子家庭の医療費助成の一部負担を、それまでの1日五百三十円から八百円に、限度額月二千百二十円から三千二百円にと大幅に引き上げ、利用者負担増は合わせて三億五千万円に上っています。
 ある小児科の先生は、子どもが何人もいる家庭で、月に千六百円、一.五倍にも負担が増えている」「乳幼児は病気にかかりやすいが、この費用は削ろうにも削れない。母子家庭も増えており、影響は大きい」と自己負担の引き下げを求めておられます。
 また、若いお母さんは「三人の子どもがいるが、よく病気にかかる。夫がリストラにあって家計が苦しく、負担金引き上げで、食費を切り詰めて医療費に当てている。早く元に戻してほしい」と訴えています。
 知事が、「少子化対策に効果がある」として六歳未満児の入院までの医療費助成の拡大を行った矢先に、一部負担金の大幅引き上げは制度の逆行です。しかも、老人保険法に準拠していた七県のうち、引き上げた県は長崎県と奈良県だけであります。奈良県はゼロ才児は負担無しですから、長崎県が一番大きな引き上げをしたことになります。
 一部負担金を元に戻すことを求めます。また、利用者の切なる要望になっている窓口払いをなくし、現物給付を実現するよう求めます。
 四点目に、障害児をあずかる学童保育所へ、県の助成制度を創設し、市町村の障害児受入れに道を開いていただきたいと質問を準備いたしておりましたが、知事が昨日、「県の助成を行なう」とハッキリ答弁なさったことを、障害児をもつ身内の一人として大変うれしく思います。
 県下一四二カ所の学童保育所は、共働き家庭の児童の放課後の生活の場と安全を確保し、女性が安心して子供を産み、育てる上で、重要な役割を担っています。
 一九九八年四月に、学童保育所が法制化され、四月二十日の課長通知では、「障害児も入所の対象」としています。
 しかし、保育所や幼稚園のような障害児加算の財政的支援は何もありません。県学童保育連絡協議会の調べでは、障害児を受け入れている学童保育所は二十あり、施設環境の問題と指導員を増やせない理由で入所を断らざるをえない学童保育所はその倍近くあると言っています。
 ある指導員の先生が「同じ子どもなのに、障害があることで入所を断わらねばならないのは身を切られる思いです」と語っていました。
 時津町では昨年から障害があることで、学童保育所を利用できないということはあってはならないと、父母の要望にこたえ、町が独自に、障害児一人に対し、月三万七千円の障害児加算を実現し、喜ばれています。
 県の助成は国庫補助の対象にならない施設への補助ということでございましたが、一人でも預かる施設が対象となるのか、お尋ねいたします。
 また、今年度から、国が、障害児を受入れた学童保育所へ七十一万円を全国百ヵ所に助成するとした制度は、四人以上の障害児を預かるクラブに限定され、余りにも現実に合わない制度です。しかも、対象が二十人以上あずかっているクラブに限定しています。二十人以下の小規模な学童保育所でも補助の対象にするよう、障害児の立場に立った制度の改善をぜひ国に求めてほしいと思いますが、いかがでしょうか。

 第二に諫早湾干拓事業についてお尋ねします。
 県は諫早湾干拓事業について、「『有明海の再生』と『地域住民の生命・暮らしを守る』両立の道をめざします」と掲げています。
 しかし、知事が今、農林水産省に要望していることは「工事の即時再開、事業の計画どおりの推進」であり、「排水門の開放反対」であります。これでは、干拓事業の推進だけで、莫大な被害をだした有明海漁業への配慮も、有明海再生の手だても全く見えてまいりません。
 福岡県知事は、五月十三日「干拓工事中止、排水門の開放」を掲げた三県魚連主催の有明海漁民大会に鉢巻きをしめて参加し、漁民の要求の支持を表明しています。
 農林水産省の第三者委員会も、漁業被害の原因解明のため、工事中止と水門解放を提言し、農林水産省も水門解放の方法について、第三者委員会に一定の提案を出しました。
 知事も、真に「有明海の再生」を言うのであれば、「早急に必要な対策をとり水門を開ける」立場に立つべきと思いますが、お考えをお尋ねいたします。
 次に、被害を受けた漁民にたいし、熊本県では、一番ひどかった荒尾市で緊急就労事業が実施されています。わが党は、早くから、漁業で生計が立たない漁民や、干拓工事で働けなくなった人などに、就労対策を求めて来ましたが、県は、やっと今議会で、臨時雇用対策で対応することを明らかにしました。希望者全員に対応できる対策を求めますが、実施内容についてお尋ねいたします。

 第三に西海橋まわりの長崎── 佐世保直通バス路線の復活を求めて質問いたします。
 県営、長崎、西肥のバス三社が運行していた西海橋まわりの長崎── 佐世保直通バス路線8往復が、この四月から廃止され、西彼半島の住民は、公共交通の足をうばわれ、非常に困っています。
 特に通学とお年寄りの病院通いが大きな被害を受け、「佐世保の病院に行くのに二回も乗り換えないといけない」「長崎まで一時間かからなかったのが、一時間五十分もかかる」と大変な被害です。
 県民の足を確保するという観点から、ぜひ復活をするよう求めて、知事に質問いたします。
 
 第四に教科書採択についてお尋ねします。
 「侵略戦争」や「従軍慰安婦」を教えている中学の歴史・公民教科書が「自虐的」だといって攻撃し、日本のアジア諸国への侵略や植民地支配への反省はなく、「日本の南方進出はアジア諸国が独立を早めるきっかけとなった」と侵略戦争を美化した「新しい歴史教科書をつくる会」の教科書が検定に合格したことに、国内外から大きな批判が上がっています。
 私も市販されている問題の中学の歴史教科書と公民教科書を買って、実際読んでみて驚きました。
 「新しい歴史教科書」は実在しない「神武天皇」があたかも初代天皇であるかのように描き、国民主権を奪い、天皇に絶対的権力を与えていた大日本帝国憲法を称賛する声を紹介しています。とりわけ、この教科書は、アジア太平洋戦争を「大東亜戦争」と呼び、日本の侵略戦争を「アジア解放の戦争だった」と肯定し、美化しています。
 日本政府は、一九八二年の内閣官房長官談話、それをうけた教科書検定基準の近隣諸国条項などで、侵略と植民地支配の自覚と反省を、教科書の公式の基準とすることを内外に約束していますが、これに明らかに反する教科書です。
 日本共産党は、検定制度について、言論・表現の自由を侵すものと反対してきましたが、「つくる会」の歴史教科書を「検定合格」したことは。政府自らの検定基準に照らしても合理化できないことであり、「検定合格」の取り消しを政府に求めています。 韓国・中国をはじめ近隣諸国も、「教科書」について、第一に政府が世界に表明した態度に反すること、第二に、日韓共同宣言、日中共同宣言で取り決めた二国間の合意を一方的に踏みにじるものであると厳しい批判をし、修正を求めているのです。
 侵略戦争を美化する教科書で、子どもたちが勉強したらどうなるでしょう。何の疑問を持たず戦争に突き進む人間を育てた戦前の国定教科書の過ちを、再び繰り返すことになります。
 教育基本法は戦前の戦争賛美の教育への反省のもとに、「真理と平和を希求する人間の育成」をうたっています。この精神と根本的に相いれない「つくる会」の教科書は、長崎県の教育現場に持ち込むべきではありません。県教委は「検定合格」の取り消しを求める考えはないか、教育長の見解を求めます。
 また、県教委は今年四月に「教科書採択方法の改善について」の「通知」を市町村教育委員会宛に出し。教育委員会の採択権をことのほか強調し、教員による絞り込みをやめるよう指示しています。
 「これまでも、教員の声はなかなか生かされにくかったのに、ますます生かされにくくなった」という教員の声が沢山聞かれます。教員の声を教科書採択から締め出し、「つくる会」の教科書が採択されやすくなるのではないかと心配する声もたくさん上がっています。
 義務教育諸学校における教育の政治的中立の確保に関する臨時措置法の一条は「教育を党派的勢力の不当な影響力、又は支配から守り、もって義務教育の政治的中立を確保するとともに、此れに従事する教職員の自主性を擁護する」としています。
 なによりも教科書採択にあたっては、直接児童生徒に教科書を使って教える教育専門家である教員の意向が大事にされるべきではありませんか。
 教員の意見を十分生かす採択方法を求めますが、如何ですか。

 第五にサービス残業の根絶について質問いたします。厚生労働省は四月四日付けで,全国の都道府県労働局長宛に「労働時間の適正な把握のために使用者がとるべき措置に関する基準について」の通達を出しました。
 また、総務省は四月二十七日付で、全国の都道府県総務長と人事委員会事務局長宛に、職場に「通達」の周知徹底をはかるよう「通知」しました。 
 厚生労働省の通達は@使用者に労働時間を管理する責務があることを明示しAタイムカードなど使用者に労働時間の管理を具体的な方法で明示、Bサービス残業の原因ともなっている「自己申告制」への規制を具体的にするなど、「サービス残業“撤廃”通達」と言えるものです。
 「通知」では労働相談、集団指導、監督指導等あらゆる機会を通じて、使用者、労働者等に幅広く周知をはかることし、「集中的な周知活動をおこなうこと」が求められていますが、県内すべての職場に周知徹底する上で、まず県自らが県職員へ周知徹底をはかり、割り増し賃金の末払いや過重な長時間労働の問題が生じていないかなどの実態を把握し、必要な改善をおこなうことが求められていると思います。
 そこで、「通達」の職員への周知。徹底はどのように図られているのかお尋ねします。
 また、県職員の労働時間の管理はどうなっているのか。賃金不払いのサービス残業は起こっていないかお尋ねします。
 県職員の一九九九年の平均労働時間は県人事課の資料によると千八百九十四時間、平均残業が百四時間なっています。
 政府が一九九九年七月の閣議決定で、十年間の重要施策方針として「残業時間の削減による年間総労働時間千八百時間の定着・達成」を目標に掲げていますが、まず県庁から残業をなくし、労働時間の短縮を行ない、年間総労働時間1800時間を一日も早く達成すべきと思いますが如何ですか。