[諫早湾干拓問題]県議会農林水産委員会質問

◆水産部・有明海漁業被害について 
              2001.3.9 日本共産党県議 中田晋介
1.有明海のノリをはじめとする漁業被害と諫早湾干拓の関係について質問します。
 アサリの大量死で1億6千万円の減収になるなど、大きな被害を受けた小長井町漁業協同組合が、昨年8月30日県知事に会って対策を求めました。その時に提出されたこの要望書には「干拓着工以来、諫早湾海域の漁場環境は大きく変貌し、環境影響評価の予測を越えた状況となっております。平成3年のタイラギ貝異常へい死によるタイラギ潜水器漁業の7年連続休業、魚介類の激減、平成11年7月赤潮による天然魚の大量へい死、同年8月アサリ貝大量へい死、平成11年9月アサリ貝大量へい死、本年8月赤潮による天然魚の大量へい死、その後の小長井町全域にわたるアサリ貝大量へい死が発生しております。現在は事業着工以前の一割にも満たない水揚げ高となっており漁家存亡の危機に直面しております。潮受け堤防完成後、従来とは異なる赤潮の長期化、広域化により魚介類に与える影響は著しく漁業実態は極めて厳しい状況にあります。」として、赤潮災害対策、漁場調査、そして干拓地内外の水質改善対策、排水対策の早期拡充を求めています。
 ここで「潮受け堤防完成後、従来とは異なる赤潮の長期化、広域化により魚介類に与える影響は著しく漁業実態は極めて厳しい、現在は事業着工以前の一割にも満たない水揚げ高となっており漁家存亡の危機に直面している」というのは、まさに、干拓が原因で大変な被害をこうむっているという訴えですが、水産部としてはどのように受け止めていますか?

2.この中で注目されるのは「漁場環境は大きく変貌し、環境影響評価の予測を越えた状況になっております」という指摘であります。環境影響評価によって干拓工事にゴーサインが出され、それによって漁業の影響補償がされた、いわば事業の基本になるもので、その予測を越えているというのは重大です。 
 諫早湾干拓事業の環境影響評価では、漁業への影響をどのように予測していましたか?

.国が行った環境影響評価では、水生生物については「環境の変化は潮受け堤防や排水門の狭い範囲に限られるので、他の有明海に対してはほとんど影響を及ぼすことはないものと考えられる」とし、総合評価では「諫早湾奥部の消滅は、干潟域や諫早湾奥部に生息する生物相の生息域や産卵場などを一部消滅させるが、このことが有明海の自然環境に著しい影響を及ぼすものではなく、また、その影響は計画地の近傍に限られることから、本事業が諫早湾及びその周辺海域に及ぼす影響は許容し得るものであると考えられる」としていました。ですから、漁業権に対する影響補償もすくなくて、島原半島の南共79号の漁民の皆さんは一人わずか60万円から70万円ときいています。これからおこなわれる調査で、いま出ている漁業被害の原因が諫早湾干拓であることが明らかになり、環境影響評価の予測を超えているとなったら、当然、与えた被害の補償がいるのではありませんか?

4.実はこの点で、干拓工事による今の漁業被害をノリ被害を含めて正しく予測していた環境影響評価があります。
 それは「1979年の佐賀県アセス」といわれるもので、正式名称は「長崎南部地域総合開発にかかわる佐賀県有明海水産業への影響調査報告書」です。諫早湾干拓がおこなわれた場合、有明海の水産業にどのような影響がおよぶかということで、佐賀県がいわば被害を受ける立場からおこなった調査です。南総ですから閉め切り面積が1万ヘクタールで、現在の3550ヘクタールとは違いますが、国のアセスでは省略していた「潮流変化の水理実験」「ノリの栄養塩吸収に関する培養実験」「各種漁業の操業実態調査」「水質や魚卵、稚魚、プランクトンの採取による分布調査」などを3年にわたっておこなって行い、国の環境影響評価とは違って「有明海漁業に与える影響は大きい」という結論を出しています。
 いまになってみれば、事態は国が示したようにはならず、この佐賀県の調査が予測したようになっていると考えられる重要な調査ですが、県水産部はお持ちですか。皆さんお読みになったことはありますか?

.この調査で、ノリ養殖については「生産量を支配する要因が複雑にかかわり合っているため予測が困難で、さらに研究が必要」としながら、「ノリ養殖業にとって、潮位、流速、浮泥、栄養塩などの変化が大きく影響する」として「とくに潮位低下が起これば生産低下をおこし、同時にに浮泥による悪影響もおこる」と予測していますが、干拓堤防閉め切り後、流速が遅くなったことは観測されていますし、潮位の低下は多くの漁民からいわれています。
 また、貝類について「モガイ、アカガイ、アゲマキの養殖場には浮泥の堆積が進み、またよどみの海域が形成されると予想されることから赤潮発生の危険性もあり、養殖場としての価値が低下する。多良地先のアサリ養殖場は客土など積極的な漁場改良事業を繰り返しおこなわないと存続が困難となろう」と、今日のアサリ養殖、タイラギ漁場の状況を正しく予測しています。
 この点では、すでに1995年と96年に南高有明町漁協が諫早湾口部のタイラギ漁場の海底地質調査をおこなっています。グラブ浚渫船と潜水士によって五か所の海底をすくい上げてしらべたところ、海底にヘドロが30センチ、60センチ、1メートルあるいは2メートルと堆積していて、嗅ぐとにおいがするという状況になっていました。
 これにもとづく同漁協から南共79号権者会への要望書では「この場所は従来砂地で、タイラギの好漁場であった所です。このような状態をこのまま放置すれば、申すまでもなく海は死に稚魚の育たない環境となり、漁民の死活問題となります。魚が元のような育ちやすいきれいな海になるよう、早急な対策を講じてくださるよう、権者会のご尽力を切にお願い致します。」と要望しています。漁場には5年前すでにこういう影響が出ていたのですが、この調査には島原水産改良普及所の職員も随行しここに名前も書いてありますが、県としてはさらに全面的な調査なり、何らかの対策なりとられましたか?

  (こうした重要な調査が、水産部として重視されず対策も検討されないで放置されたというのでは、漁業を守ることはできず、まことに遺憾であります。干拓を進める政府や県農林部に対して、水産部は漁民の立場に立って漁民を守るために、真剣に取り組んでもらいたい)

.最後にこの佐賀の調査では「諫早湾の消滅が湾外漁業資源に与える影響」として「諫早湾は、漁業生物の再生産の場として重要な役割を果たしており、実際に漁業生産量も単位面積あたりとして比較すれば、佐賀有明海域の2倍の密度を示している。そして当湾内で再生産された資源は湾外海域へも供給されているのである。このような富度の高い海域が消滅することは湾外漁業資源に大きな影響をあたえることは明らかである。諫早湾で産卵、成育し、索餌場として利用している種類はすべて影響を受けるであろう」とのべています。
 有明海の水を浄化する干潟と、生物が育つ諫早湾の消滅が有明海の漁業被害の大きな原因になっているという、この調査結果は、漁民のみなさんの考えとも一致しています。3月6日、島原市内五つの漁業協同組合連名で島原振興局長に申し入れがされた要望書でも、「漁業被害に対する緊急の救済策、早急な有明海再生への早急な調査」とあわせて、「漁業への影響が少ない方法で堤防水門を開け干潟を再生してもらいたい」と求めています。県の考えはいかがですか?
 これだけ重大な漁業被害の原因として疑いがある以上、いったん工事を中止して、調査を行うべきであります。またこの調査の予測からみても、有明海を元に戻すには、水門を開けて潮を入れ、諫早湾と干潟を再生することが不可欠であり、県と国がその方向で取り組むようつよく求めて質問を終わります。


 ◆ 農林部・議案[諫早湾干拓事業推進費
   30億9889万5 千円について]

.この事業の「防災効果」がいわれ、3月6日夜の本会議でも 539名の死者を出した諫早大水害を引き合いにして「安全で安心できる諫早をつくるのは市民の悲願でそれに応えるのがこの干拓事業だから、工事中断に反対」という討論が行われましたが、そもそも、本明川の洪水対策と干拓は関係ありません。諫早市街地の氾濫対策については、干拓堤防による調整池はまったく役に立たないのではありませんか。
 その証拠に、堤防閉め切り後の一昨年7月23日の豪雨で本明川が氾濫寸前になり、諫早市民全体に避難勧告がだされる事態になり、浸水家屋も多数にのぼる被害を出しました。その後建設省は35億円をかけて川床の浚渫を行い、内水排除のため五台の移動ポンプを配置しました。この事実を見れば干拓調整池による市街地の防災というのは事実と違うのではありませんか。

.諫早大水害から5年後の1963年諫早市が発行したこの「諫早水害誌」に、本明川の改修計画と実施状況が建設省の本明川工事事務所長によって書かれています。大水害時の雨量、水量を参考に80年に一回おこる雨量として一日450ミリを想定し、それを流す断面を持つように川幅を広げる河川改修で対応する計画が実施されており、これが本明川の防災対策であって、そこには干拓調整池の役割などまったく出てきません。
 そして、「河口潮位の影響については、不等流計算により洪水面を追跡したところ、いずれの場合も大体2キロメートル付近で一定水位に収斂することがわかった」とのべられています。すなわちそれから上流の市街地では、川の水位に潮の影響は及ばない。ということが書かれています。この点、県がいう「干拓の防災効果」という中に、市街地での本明川氾濫対策は入っているのか、いないのか、おたずねいたします?

  (そうであれば、以後、諫早水害を引き合いに出して、あたかも市街地の氾濫防止に、干拓の防災効果があるかのような言い   方はやめてもらいたい。)

.つぎに、干拓地周辺の排水問題ですが、これも潮受け堤防と調整池が絶対必要ではありません。現に同じような低い土地をかかえて浸水を繰り返していた佐賀平野で、ポンプや水路、水門を整備して、潮受け堤防も調整池もなしで、浸水被害を根絶しているではありませんか。諫早でもやればできるのではありませんか?

.この漁業被害の一部でも干拓事業が原因だと被害額が算定されると、干拓事業についての費用が効果をうわまわり、土地改良法にもとづく事業推進の要件を欠く恐れがあります。
 諫早湾干拓は法にもとづく土地改良事業ですが、土地改良法第8条と同施行令第2条によって、「効果が費用をうわまわる」ことが事業の要件として義務付けられています。ところが、九州農政局の計算で着工時、効果が費用の1.03倍だったのが、度重なる事業費の増加で、今では1.01倍ともうすれすれの状況になっていました。
 それが今度、ノリで140億円、タイラギで3億5千万円、アサリで1億6千万円などという被害をだして、私は8割9割は干拓が原因と考えていますが、たとえその半分でも干拓に原因の責任があるということになれば、効果は減殺され、費用がはるかに大きくなって、事業の要件を欠き、続行は不可能となります。県はどのようにお考えですか?この点からみても、事業の要件が備わっていることがハッキリするまで事業を中断すべきではありませんか?

.最後に、干拓着工に際して、漁業補償について九州農政局と各県の漁業協同組合連合会や漁協が協定書を交わした際、確認書がつくられています。
 それには「諫早湾干拓事業に起因し、有明海水産業に予測し得なかった新たな被害または支障が万一生じた場合には、九州農政局は誠意をもって漁協と協議し解決するようつとめるものとする」と約束されています。本県の漁連や漁協も結んでいますか?
 これだけ大きな被害を受けた漁民の皆さんが、原因は干拓だと重大な疑いをもって「いったん工事を中止して、調査を」と求めているのですから、この確認書からしても工事をいったん中止せよという要請に応えるべきではありませんか?
 また、この漁業被害の原因が干拓にあることが明らかになったら、国は予測し得なかった新たな被害として漁業補償をすべきではありませんか?