「国営諌早湾干拓事業中断に反対する意見書」
中田晋介県議の反対討論
 3月6日、「諌早湾干拓事業の一時中断」を表明した農林水産大臣の発言に、県議会の自民党などが猛反発。県議会の日程を変更して、夜9時から本会議を開催して、「工事中断に反対する意見書」提出しました。
 この本会議での、中田晋介県議の反対討論の全文を紹介します。
 なお、意見書案については自民党と民主党が賛成討論を行い、採決で反対したのは日本共産党の2人だけでした。
 
 「国営諫早湾干拓事業工事中断に反対する意見書」に対する反対討論を行います。
 第一に、タイラギの死滅にはじまり、赤潮の頻発、アサリの大量死、ワカメの被害につぐノリの不作という有明海の漁業被害について、海で暮らしを立て、海を最もよく知っている漁民の皆さんは、諫早湾干拓が原因だとだれもが指摘しています 「以前はこんなことはなかった。干拓工事ガ始まってから海に異変が起こり、魚がとれなくなった。干拓地に近づくほど魚がいなくなる。干拓工事こそ、この漁業被害の原因だ」と肌身で感じているからこそ、あの千三百隻六千人の海上デモをはじめとする巨大な怒りと抗議のエネルギ−が生まれるのであります。
 今年のノリだけでも百四十億円をこえる被害をうけた漁民から、最大の原因だという疑いを持たれている以上、いったん工事を中断して真相を解明するのは至極当然であります。
 第二に、有明海をよみがえらせるためには、堤防内に潮を入れ、諫早湾の干潟の再生をはかることが不可欠であります。しかし、現地では内部堤防の工事が日々進められ、これが出来上がれば干潟の再生はできなくなります。
 これから進められる調査で、諫早湾干拓が有明海漁業被害の原因であり、もとの有明海に戻すためには、干潟の再生が必要だと分かったとき、内部堤防ができていては手遅れになります。一日も早く工事を中断し、必要となれば干潟を再生できる状況にしておくべきであります。
 第三に、防災については、諫早市街地の洪水対策については、干拓調整池の水位調節は全く役に立ちません。それは一昨年七月二十三日の豪雨で、本明川が氾濫寸前になり、諫早の全市民に避難勧告がだされ、多数の浸水被害を出した事実を見れば証明済みであります。
 干拓地周辺の浸水問題は、同じような低平地をかかえる佐賀平野で、排水ポンプと水路、水門を整備することによって、かつてはひどかった浸水被害を根絶している実績をみれば、干拓堤防による調整池がなくても十分防災対策がとれることを示しており、むしろ、干拓を進めるため、こうした浸水対策をなおざりにしてきた県や国の責任こそ問われなければなりません。高潮については、干拓先進地のオランダで行われているように、ふだんは水門を開けておいて気象条件に応じて開閉する方式をとれば十分に対応できます。
 いま、緊急に必要なことは、有明海の漁業被害の原因として、重大な疑いがある干拓工事を一時中断して、根本から見直すべきであるという立場から、この意見書に反対いたします。