アーバンルネッサンス開発用地の県民生活向け活用について
                        2000年9月28日県議会経済労働委員会 
                質問・中田晋介県議 答弁・古川 康商工労働部長

[質問 中田県議]長崎市に県が造成したアーバンルネッサンス2001開発用地の活用について質問いたします。
 この計画は、長崎港周辺の再開発で長崎の活性化をはかるというのが目的です。その中心は「大波止と出島地区に埋め立て地をつくって、大型の会議場兼展示場とふたつのホテルを誘致して、そこで国際、国内の会議や見本市などのイベントをおこない、訪れる人が年間100万人、その消費支出が290億円で、生産誘発効果が548億円になり、6000人の雇用を見込んで、県と市で年間27億円の税収を得る」というコンベンション・シティをつくる構想でした。しかし、似たような計画が全国各地でつくられ、国際会議場・イベント会場は千葉の幕張メッセや横浜の国立国際会議場をはじめ、神戸、京都、名古屋、福岡、宮崎、別府、浜松、仙台、新潟、広島、北九州とつくられて施設過剰の状態です。また、ホテルも長崎ではお客が増えるどころか、観光客が減って、今あるホテルさえ閉めなければならない状態で、とても進出できる状況ではなく、計画は完全に破綻しました。
 本来なら、そこで立ち止まって計画を見直し埋め立てを縮小するなり、中止するなりすべきでありますが、事業はどんどん進められました。埋め立て地ができあがったところで、さて、何に使おうかと検討するという、まさに公共事業先にありきで、始まったら絶対にやめないという姿が浮き彫りになっています。
 この事業は総事業費450億円、そのうち公共事業が385億円ですから県民負担も大変であります。そして、大波止地区については夢彩都が誘致され、浜の町をはじめ地元の商店街の経営を危うくしています。
 質問したいのは出島地区の埋め立て地についてですが、金子県政になって、当初の会議場とホテル誘致によるコンベンション施設づくりという計画をとりやめ、再検討がなされています。構想推進会議は昨年三月「臨海公園・運河・緑地」と「残り4・6ヘクタールの活用プランとして4つの案」が知事に報告されています。この用地造成事業は土木部の所管で、構想についての担当は企画部ですけれども、その活用による経済活性化、観光や物産店などの計画がいいのかどうか、という点では商工労働部としての検討が必要です。
 この四つの提案を見てみると、当初の計画とあまり変わっておりません。
 A案が「長崎ルネッサンスビレッジ・楽しく集う新観光施設」で観光の起爆剤にするとして、小劇場、工房群、スーベニアショップをつくる案ですが、こんなもので今どき観光客がくるでしょうかね。そして、3000人規模のコンベンションホールつまり会議場をつくろうというんです。
 B案が「長崎ポートアミューゼ・人を引きつける新しい新開地」ということで、マリンミュージアムという海の博物館などと、5000人規模の会議場ポートドームをつくろうという提案です。
 C案が「長崎ミュージアムパーク・複合コンベンションを軸にした200万人の交流拠点づくり」ということで、ここを「長崎の町全体に経済的血液を送り込む心臓部にしよう」という計画で、都市型水族館や海洋博物館、カルチャータウンなどと、4000人規模の会議と展示の多目的施設をつくろうという計画。
 D案は「博物館都市長崎・地域資源の活用による長崎の再生」をめざし、長崎ストーリーパーク、観光・歴史情報センターと1000人規模の会議施設をつくろうというものです。
 なんかいうとることも、つくるものも、はじめに戻って、既に破綻した当初の案とほとんど変わらないものになっています。
 これらの案の経済的な現実性について、商工労働部として、経済活性化の面、観光の面などから検討されていますか。

[答弁 古川商工労働部長]A案からD案までの四つの案について、今後、推進会議企画委員会などの場をつうじて、どういうふうにしていくか決めていくわけでございますが、その際には商工労働部としての意見が反映されていくものと思います。現時点で具体的に検討はいたしておりません。

[質問 中田県議]なんの検討もしていないというのは、おかしいんじゃないですか。庁外の方で構成されたアーバン構想推進会議に知事が計画変更の案づくりを諮問し検討されて、昨年三月構想推進会議から、四つの案が知事に報告されたんだから、今度は知事の方で、企画部としてどうか、土木部としてどうか、商工労働部としてどうか、と検討して県としての案をまとめる段階じゃないんですか。

[答弁 古川商工労働部長]知事は、県として提案を受け取っていることはそのとおりでございます。しかし、ある期日までに、商工労働部として検討し案をまとめよというような指示はされていないということでございます。

[質問 中田県議]では、昨年の三月に構想推進会議から報告がなされてから、一年半、検討もされずに放置されてきたのですか。私は、こういう4案が報告されたら、当然、県全体としても、商工労働部としても検討すべきだと思います。この4・6ヘクタールの土地で、どういう経済活性化のプランをたてるのか、200万人が集う拠点づくりとか、新観光施設づくりとかいうのですから、それが可能かどうか、商工労働部としてきちんと検討すべきだと思います。450億円もかけてつくった土地が使い道も決まらないままというのは困りますし、また、大波止の夢彩都のように商業施設などをつくられてはたまりません。どうして検討しないんですか。

[答弁 古川商工労働部長]県庁としては検討をつづけております。そういうなかで、話がより具体的になっていくなかで、私どもの方にもいろんな問い掛けがなされるだろうと思っておりますし、こうした案について、観光の問題などずいぶん踏み込んだお話もあっておりますので、わたくしどもも検討はしていかなければならないと思っております。ただ現時点では、商工労働部として検討はしていないということでございます。

[質問 中田県議]私はことの流れとして、県にも商工労働部にも責任ある対応をしてもらいたいのであります。毎年十億円を超える予算が注ぎ込まれる事業について、いつまでも行く末が決まらず、商工労働部としては検討もしていないというのではいけないと思います。今示されている4つの案は、小型のテーマパークみたいなものや、会議施設というのでは、だめになった当初計画とほとんどかわらず、とても経済活性化の役に立つとは思えません。私はこの際、県民の財産としてせっかくできた土地ですから、県民生活に役立てる方向で思い切って転換をはかるべきだと提案いたします。
 例えば、近くにある長崎市の市民病院が、古くなり、手狭になって移転新築が必要になっています。神戸ポートピアアイランドの例では、造成地の目抜きの場所に、大きな神戸市民病院が立派につくられています。長崎でも広い敷地につくって暮らしに活かしてはどうでしょうか。また、老人福祉施設も不足しています。介護保険が始まって半年になりますが、今、長崎市内では特別養護老人ホームが足りないためホームに入れずに待っているお年寄りが400人以上います。市の話では全員入るには三年かかりそうです。県下全体では1000人以上のお年寄りが待っています。そんな時に、緑に囲まれ海に向かって環境のよい、この場所に、特別養護老人ホームを中心に、お年寄りのための介護、医療、福祉の大型総合施設をつくれば、交通の便もよく、離島からの人も利用できます。そうすれば景気変動に左右されないたくさんの安定した雇用も生み出せます。公共事業もこういった県民生活向けに思い切って転換をはかり、その中で安定した福祉型の雇用を創り出していくべきです。
 この事業について商工労働部として、経済的な面での検討がなされていないということですから、今後、いま提案した方向での土地の活用をはかられるよう強く求めておきます。