2002年8月10日(土)「しんぶん赤旗」

主張

原水爆禁止世界大会

新しい核廃絶の巨大な流れ


 原水爆禁止二〇〇二年世界大会は、広島、長崎でのすべての日程を終え、幕を閉じました。これには、非同盟諸国や新アジェンダ連合などの七カ国の元首からのメッセージが寄せられ、海外からはマレーシア、エジプト、バングラデシュ、南アフリカ政府代表を含む二十八カ国、国際・地域組織代表ら六十八人が参加しました。

核兵器廃絶の緊急性

 世界には三万発もの核兵器が存在しています。人類と地球を守るために、核兵器をなくせ、と半世紀におよぶ努力が尽くされ、核兵器廃絶の声は、広島、長崎から、世界に広がりました。そして、アメリカなど核保有国も含めて「核兵器廃絶の明確な約束」が合意された――この大きな流れを、国際会議では、多くの代表が指摘しました。同時に、アメリカが核不拡散条約(NPT)再検討会議や国連でのたび重なる国際的合意をふみにじり、核先制使用などの危険な核政策を展開していることに、強い危ぐと批判が共通して出され、核兵器廃絶の緊急性が強調されたのがことしの大きな特徴でした。

 それだけに、いっそう世論と運動を強めるとともに、「運動と核兵器廃絶に取り組む政府との協力を発展させる」(主催者あいさつ)ことが大きなテーマになりました。各国首脳からのメッセージでは、世界大会が核兵器廃絶へむけて「道義的な力」を提供していると高く評価され、政府とNGOは「共通の事業における不可欠のパートナー」(マレーシア軍縮大使)として、討論と交流を活発におこないました。

 こうした熱心な討論が集約され、満場一致で採択された国際会議宣言は、今日の情勢のもとで核兵器廃絶をめざす諸国民の運動の政治的方向を示しています。宣言は「核兵器廃絶の世界的な合意をつくりだしてきた」と同時に、アメリカの新しい核政策をきびしく批判し、「全世界の政府と人々から非難と憂慮の声があがっている」と指摘しています。

 原水爆禁止二〇〇二年世界大会とは別に、連合の集会などさまざまの集いがもたれましたが、「新たな緊張を生み、核兵器廃絶と世界平和の流れに逆行するもの」(連合集会アピール)など、共通して、アメリカの核政策への危ぐと批判が強く表明されました。

 宣言が、「核兵器廃絶は、広島・長崎をくりかえさず、世界平和と人類の生存のために、ますます緊急の課題となっている」と強調し、核保有国に「核兵器先制攻撃政策を放棄し、不使用を宣言せよ」「核兵器廃絶の約束を実行せよ」と要求するとともに、これを実現していくため「諸国民の世論と運動を広げよう」「核兵器廃絶を求める諸国政府との協力を広げよう」とよびかけているのは世界の核兵器廃絶をねがうすべての人びとへの力強いメッセージです。

 小泉首相は六、九日と平和記念式典に参加し、「全面的核軍縮に至る国連決議案を提出した」などと自画自賛しましたが、非同盟諸国が提案した期限を切った核兵器廃絶決議に、アメリカに追随して賛成していないのが、実際の姿です。首相は式典でも、アメリカの新しい核政策についてまったく言及しませんでした。

両市長と首相の違い

 これに反して「人類を絶滅させる権限をあなた(米大統領)に与えていない」(広島市長)、「(アメリカの)独断的な行動を断じて許すことはできない」(長崎市長)などと、きびしく批判した両市長の発言との違いが際立ちました。世界大会に参加した各国政府代表の核兵器廃絶を求める真剣なメッセージや発言に接しただけに、被爆国首相の姿勢が、国際的に破たんしていることを印象づけました。

 このことは、日本国民の運動をいっそう発展させることが、世界の反核・平和運動を発展させるうえでも、国際的責務となっていることを示しています。